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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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癒しの聖母

店が終わり、後片付けが済んだ後ヒロイーゼさんの部屋で詳しい話を聞くことにした。

「まずはあの二人のここ最近の様子ですね」

 ヒロイーゼさんは人づての情報だというのに、自分で見てきたかのように分かりやすく、臨場感たっぷりに話してくれた。

「まずはあの修道女のほうですが」

 清美も剱田・岩崎たちとつるんでいたせいであまりよく思われていないらしいが、根が優しいせいかハイレンで病気の人や怪我人を無償で癒して回っているらしい。その力と見た目も相まって「癒しの聖母」の通り名で呼ばれているそうで、彼女を慕う人たちも数多く存在するそうだ。

僕が清美を殺せばそういう人たちが治療されなくなるな。見知らない人間がどうなろうと知ったことじゃないけど、少しは気になる。

『気にするな、相棒』

 僕の思いを杞憂と言わんばかりにドルヒは続けた。

『タダと聞けばほとんどの人間は大した怪我や病気でもないのに医者にかかりたがるものだ。三割負担という格安で診てもらえる相棒のいた国でも、寝ていればよくなる程度の風邪で医者に行くような阿呆ばかりであったろう』

「でも大怪我した人とかは?」

『たわけ。ハイレンの持ち主がいれば重傷を負わせても問題ないと思われるからますます怪我人が増えるに決まっているだろうが。多少怪我をさせても、というように国家や企業のプログラムが組まれるのだ』

 そういえば軍医がいると重傷を負っても何度も戦線に復帰させられるって聞いたことがあるな。手○治○の漫画に出てきた。

でも傷を癒すという力がなぜ悪魔の力なんだろう?

 僕のカルトマヘン、岩崎のフェルゼンをはじめとして他の悪魔の力は全て破壊する力だ。

なのに清美のハイレンだけは癒しの力。

「リーダー格である、あの甲胄男ですが趣味のように魔物狩りに行っていたそうです。その功績で軍や政治家ともコネができつつあるそうで、最近は修道女とともに彼らの屋敷で寝泊まりしているそうです。住んでいた宿もすでに引き払ったと。最近は魔物狩りに出かけていないそうですが」

 権力がバックについているのか。そうなると厄介だな。それに日本では教師受けが良くて、こっちでは政治家受けがいいのか。まさに勝ち組、リア充ってやつだ。

 自分が不利になったら一番弱い人間を犠牲にして逃げるようなゲスがそんな待遇を受けていることに腹が立つというよりも、自分との違いを見せつけられているようで自分自身に腹が立った。

「その屋敷はどこに?」

 早速殺しに行こう。

最後の復讐だ。

「すみません…… その屋敷の所在までは掴めませんでした。政治家の機密事項となると、一民間人には手にあまります」

 肝心なところで役に立たないですね。

そう口に出しそうになったのをすんでの所で堪えた。

 彼女はよくやってくれている。日原や佐伯の情報を聞き出してくれたのも彼女だ。僕一人じゃここまでの復讐はおぼつかなかった。それを一回くらい失敗したからと言って罵るなら、僕が大嫌いなクラスメイトと何も変わりない。

「わかりました。なら、もう少し時を待ちます。あいつは気が短い。きっと焦って何か行動を起こすはずです」

 そろそろ遅くなったので、出よう。僕はウイッグを外し、化粧を落としてスカートと下着をはきかえる。

 この瞬間に、僕は人として失った大切な何かを取り戻せる気がする。

 姿見を見るとすっかり男子の顔になった僕がいた。

「それじゃ、失礼します」

 僕は誰にも見られていないことを確認して、部屋を出た。

ヒロイーゼさんの店を出て、町の外に出るために城門に近付くと、今日は町の城門がいつも以上にあわただしかった。馬に乗った使者がひっきりなしに城門を駆け、鎧を着こんだ兵士や彼らの武器や食料と言った輜重を乗せた荷馬車が城門を出ていく。

「何があったんだろう?」

『戦だな』

 ドルヒが呟いた。

『王の即位の閲兵式にしては悲壮な顔をした兵隊の数や輜重の数が多すぎる。にやけた顔をしているのは品薄になって値が釣り上がった食料や武具を売りさばく商人くらいだ』

「なんで急に戦争なんて……」

『この国の政治事情には疎いから、なんとも云えんが…… 人は戦を好む。それで得をする人間が多いからな。土地が広がる王、手柄を立てる兵、戦いたいだけの戦闘狂、金儲けできる商人、落ち武者狩りでひと山当てる農民。おそらくそう言った利害関係が一致したのだろう』

 ちょうど僕が城門を出るときに、この国の王が正式に隣国に宣戦を布告したという噂が耳に入ってきた。


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