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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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女装

「楽にしてもらっていいですよー」

 ヒロイーゼさんに連れてこられたのは酒場の二階にあるヒロイーゼさんの私室だった。姿見にやや大きめの箪笥、机に小さめの本棚、部屋の隅にベッドとシンプルなつくりだった。

 部屋からは芳香剤を使っているわけでもないのにえらく甘い匂いがする。

 これが噂に聞く女の子の香りと言うやつなんだろう。

「何をするつもりなんだろう?」

 僕は腰のドルヒに小声でたずねる。

『とりあえず色気のあることではなさそうだな。吾輩は女だから雰囲気でわかる』

 ドルヒの台詞に、別に残念な気持ちになったわけじゃないからね! 勘違いしないでよねっ!

『さりとて相棒の不利になるようなことをするとは思えん。相棒にしてもらいたいことがあるからな。だが怪しい動きを見せたならすぐに殺せ』

「わかった」

 僕は小声でドルヒに返事を返すと、ヒロイーゼさんの方を注意深く観察した。

 ヒロイーゼさんは化粧道具一式を持って、姿見の前に僕を手招きしている。

『相棒…… さすがにこれは想定外だったな』

「はじめてあなたを見た時から思ってたんです! 素質があるって!」

 一時間後。姿見の前には僕のはずなのに僕じゃない、女の子が座っていた。

「よくお似合いですよ」

 カツラだかウイッグだかをかぶせられ、唇には薄いルージュを塗られ、頬には軽く紅をさされた後になぜかスカート、しかもミニ。足元がスースーします。

「私のイメージどおりです! 地味で貧相で華奢ですからね!」

 ヒロイーゼさんにまでドルヒと同じことを言われて、正直僕のライフポイントはゼロに近くなった。

「というより、すね毛もなくてつるつるですし、ほとんどお手入れしてなくてこの顔の肌の艶って…… 反則ですよ、ほんとこれ」

 ヒロイーゼさんは僕の顔を撫でながらしきりにコメントしている。

 というか、当たってる、当たってるから!

 姿見の前で僕にぴったりくっついてるから、色んな柔らかいところがふにふに押しつけられてるんです。

「なに赤くなってるんです?」

 ヒロイーゼさんはきょとんとした顔で僕の女顔を見つめている。まさか、気がついていないというお約束の展開だろうか。

「女同士なのに」

 


「ごめんなさい、ほんとごめんなさい!」

 ヒロイーゼさんは両手を顔の前で合わせてぺこぺこと謝罪している。

「まるで別人になったので、つい…… でもこれなら絶対に気がつかれませんよ!」

「そのことはもういいです……」

 僕はスカートの中身が丸見えになるのもかまわず椅子に体操座りして膝を抱えていた。なるほど。長髪を垂らして俯き、スカートの中身が丸見えの僕は確かに哀愁を誘う女の子にしか見えてない。

万が一の事態に備えて下着すら履き替えている。

ちなみに中身は飾り気のない白。スカートの中が見えるのがいい。本気でくる。鏡の中

の自分に色気を感じる僕が怖い。

 女装学園潜入ものの主人公の気持ちがわかった気がする……

 でもこれなら、清美にもばれないだろう。その点だけはヒロイーゼさんに感謝だ。

「で、僕を女装させてこれからどうするんですか……?」

 声に覇気がない。ちなみにドルヒはさっきからずっと笑いっぱなしだ。

「あの人たちが酒場に来るまで時間がありますし、私とデートしましょう」

「デート? 信用していない相手と?」

「信用してないからデートするんですよ。お互いをよく知るためです。とりあえず酒場で使う物品が色々足りなくなってきているので、荷物持ちお願いします」

 デートって…… そんなことしてる暇ないんだけどな。

 時間をおけばおくほどばれるリスクが高まるし、この町から離れる可能性も出てくる。一刻も早く始末したい。

『相棒、この女の話に乗れ』

 ドルヒの提案が僕は意外だった。

「なんで? この前はスピーディーにいけって言ってたのに」

『奴らの場所を特定せんことには話にならんし、そのためには町を歩き回って情報収集するのも必要だ。相棒はこの町の地理にまだ疎い。それに休息も大事だ。相棒は今焦りすぎている』

『そう言う時には何をやってもうまくはいかないものだ。気分を切り替えてこい』


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