表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/118

ツンデレ

 体を傾けたおかげで心臓が爆散することはなかったが、右の肺がごっそりやられたらしい。呼吸がろくにできず、気管から鮮血まじりの痰がとめどなくあふれてきた。僕は立っていられなくなり、走った勢いのまま地面に転がる。

「やったぜ!」

 佐伯が勝ち誇った顔でガッツポーズなんてしている。

はい、死亡フラグどうも。

 僕は転がった勢いのままドルヒを佐伯の喉元めがけて投げつけた。

 もう数歩の距離まで近づいていたこと、佐伯が油断しきってくれていたおかげで佐伯の喉元に吸い込まれるように刺さり、そのまま頭の後ろまで突き抜けた。

神様、悪魔様、佐伯を殺させてくれてありがとうございます。

 生命維持を司る脳幹を串刺しにされ、佐伯はそのまま息絶えた。 

 逆に僕の肉体は一瞬で急回復する。ごっそりと持って行かれた肺も、日原の攻撃で切り裂かれた頭も手も足も、すべて傷がふさがっている。

 村人と違ってレベルが高い分、傷の回復もそれ相応のものがあるらしい。

「佐伯っ! テメエ!」

 日原が何か言いながら攻撃を放ってくるが、カルトマヘンによってレベルが急上昇した僕にはそよ風程度のものだ。風の刃を喰らっても傷一つ付かない。

 驚愕したっぽい顔をしているが、説明する気もない。

「うるさいよ。すぐに同じところに送ってあげるから。いや……『すぐに』じゃないか」

 僕は日原の腹に蹴りを入れる。内臓が破裂したらしいのが手ごたえ、いや足ごたえでなんとなくわかった。

 それから顔面をズタズタにする。目をえぐって、耳を削ぎ落し、歯を一本一本歯茎からくりぬいて行く。

 初めは悲鳴がうるさかったけど作業に没頭すると気にならなくなった。

 顔のパーツが全部なくなったころ、やっと日原も息絶えた。同時に膨大な経験値が手に入る。 

「ねえ日原…… 生きたまま喰われるって、こんな感じだったよ? とっても苦しくて、死にたいと思ってもなかなか死ねないんだ」

 日原の死を確認しほっと一息つくと、ドルヒが話しかけてくる。

『相棒、無理したな』

「ドルヒ、心配掛けたね」

 少し怒っている感じがしたので、僕は素直に謝った。

『まったくだ。初めに村人を殺した時と同じやり方だが、今回ばかりはさすがに肝を冷やしたぞ。ちゃんと作戦を伝えておけ、相棒』

 あれ? 心配してたって否定しない…… と思うと、ドルヒは慌てたように言い直した。

『い、いや。吾輩は心配などしておらんかった。貴様が死んでもまた他の契約者を探せばよいだけであるしな。とにかく心配などしておらぬ、勘違いしてくれるな』

 なんだかツンデレっぽい台詞を声優みたいな声で言われたから、不覚にもときめいてしまった。

「それより今日二人殺したから、かなりレベルが上がったよ。これなら岩崎か剱田を殺せるかな」

『不可能ではない。だが勝機は薄い。策を要するであろうな』

 日原を瞬殺できるくらいにレベルが上がったのに。それだけ剱田と岩崎が強いのか。

「そうだね…… でも今日は疲れたよ。とりあえず休もう」

 衣服が返り血でだいぶ汚れたので、取り換える必要もあるし体にも生臭さがこびりついている。

 僕は近場の川で体を洗い、血で汚れた衣服は火を起こして焼き捨てた。

 川魚を掴みとり、塩をふって焼いて野草と一緒に食べる。香ばしくて、塩加減が絶妙で美味しい。血をかなり失ったせいもあるのだろうが、魚の肉を、血を通して命が僕の体に流れ込んでくるような感覚さえあった。 

 ドルヒが血と脂でだいぶ汚れてしまったので川の水で洗い、布で丁寧に汚れと水気をぬぐう。村人から奪っていた研石で研ぎ直した。

 桜井、佐伯、日原と三人を殺したのでレベルが上がり、さらにドルヒが変化していた。

 柄に宝石のようなものがはめ込まれ、刀身に小さな溝や波打つような複雑なカーブがついて美術品のような短剣になった。装飾美だけでなく、敵の攻撃をからめ捕るのにも使えそうで機能美にも優れた一品になった感じだ。

『相棒…… ここまで吾輩のレベルをあげてくれた人間は初めてであるぞ。感無量だ』

 ドルヒもまんざらじゃない様子だ。

 いつものように枯れ葉と枝で寝床を用意すると、魔物が闊歩する森の中で横になった。佐伯と日原の死体に魔物が群がってくるのを聞きながら、復讐を半分以上果たした達成感で僕は心地よい眠りについた。


 日の光で目を覚まし、僕は気持ちを切り替える。まだ三人残っているのだ。

 川の水で顔を洗い、ドルヒをしっかりと腰に差して気持ちを新たにする。朝食は昨日の残りの魚と野草だ。

 腹ごしらえをした後、ドルヒとこれからのことを相談する。

「岩崎や剱田にはまだ苦戦するって言ってたけど…… レベリングしておいた方がいいかな」

『いや、もう相棒のレベルではこれ以上人間を狩っても大して上がらん。残る三人を一人ずつ殺す方がいいだろう』

「わかった。次は岩崎がいいかな?」

『ああ。デーゲンはハイレンとつるんでおるからな。回復役が側にいると殺すのが骨だ。もしくはハイレンを早めに殺すかだ。ハイレンの方が戦闘力は劣る』

 清美の悪魔の名を聞いて一瞬心が揺れたけど、動揺は押し殺した。

「どっちにしても情報収集がいるね。またヒロイーゼさんに聞いてみよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ