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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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通じない


 僕は城外の森の奥深くまで佐伯を誘いこんだ。桜井がレ―ムで泥沼にしてしまった場所は移動しづらいので避けておく。泥沼でも移動できるけど速度は大分落ちた。やはりクロスレンジタイプの僕としてはフットワークを存分に使える場所が良い。

 ここまでくれば、いいかな。

 日原の姿が完全に見えなくなったし、森の中だから探すのも大変なはず。

 僕は速度を緩めて佐伯と対峙する。

「何もんだテメエ」

 僕も佐伯も、大分長い距離を走ってきたためか大分息が切れている。特に口元を覆うぼろ布のせいか呼吸が苦しい。

 顔を見られるリスクはあるけれど。

 ここで決めるためには、仕方がない。僕は意を決してぼろ布を取り去った。持ってるのも邪魔なのでその場に捨てる。

僕の顔を見た佐伯は一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに忌々しげに顔をゆがめた。

「久しぶりだね、佐伯」

「貴様…… 村上か。生きていやがったのか」

「待てよ? お前が生きてるって言うことはコカトリスが襲ってくるっていうことか? でもお前程度が逃げられたんだからな、どうせ大した奴じゃなかったんだろうよ」

 とことん自分に都合のいい解釈だな……

 コカトリスがまだ他にいたら、生きたまま喰わせてやろうか。

「そんなことより桜井がどこに行ったか知らねえか」

「ああ、剱田たちのストレス解消のはけ口になってるから桜井がいないとぶつけられないんだったね」

 歪んでいた顔を更に歪めた、というよりひしゃげたような表情になった。

「コケにしやがって。何のつもりだ、よええ癖に」

 佐伯は棒を持ちあげて先を僕に向けた。佐伯の身の丈ほどもある、江戸時代の棒術に使われそうなシンプルで飾り気のない棒。あの先が向けられた相手を破裂させるクラフト、シュプレンゲン。

佐伯は眉間にしわを寄せながら僕を見下しきっている。その顔をぐちゃぐちゃに切り刻んでやったらどんなに気持ちがいいだろうか。

 僕は返事を返さずに佐伯にひとっ飛びで接近し、ドルヒを振るう。

 狙うのは顔面、目の上あたり。

 そこを切ればかすっただけでも血が大量に出るから眼つぶしになる。目が見えなくなった佐伯を嬲って殺してやろうかと思ったのだが、佐伯は体を捻って僕の攻撃をかわした。

 やばいな……

 桜井と違って僕とスピードに大差がない。僕の方が一歩上だけど、あっちはアウトレンジの攻撃がある。日原もいるから、早めにケリをつける必要があるし。

「何しに来たって、殺しに来たに決まってるじゃない」

「桜井もテメエが殺したのか?」

「答える義理はないよ」

「とことんムカつく奴だな…… まあいい。てめえに俺の力を見せてやるよ。喰らったらどうなったか確かめることもできないからな」

 佐伯は森の中の適当な木に棒の先端を向けて、叫んだ。

「シュプレンゲン!」

 佐伯がそう唱えると、棒の先端から何かが発射されるわけでも、光るわけでもないのに森の木が粉々に吹き飛んだ。

 木の破片が四方八方に吹き飛んで、黒い木の皮に黄土色の木片が付着した。同時に残存していた木の上部分が支えを失い、倒れて森を振動させた。

 まずいな…… 光の塊とかが飛んでくるならかわしようもあるけど、町中とか隠れる場所があるところで暗殺みたいに使われたら確実に死ぬか重傷だ。

「これが俺の能力だ! すげえだろう羨ましいだろう!」

 なに言ってんだ、こいつは。

とりあえずこいつが一番キレそうな台詞を投下してやるか。

「それで剱田や岩崎に勝てたの?」

 佐伯のこめかみに青筋が立った。

「ぶっ殺す!」

 ああ、やっぱり剱田たちには通用しなかったんだ。

『あの二人は別格であるからな』


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