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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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シュプレンゲン(sprengen)とヴィント(wind)

「桜井の奴、どこ行きやがった」

 日原と佐伯は二人で町を歩いていた。あっちをきょろきょろ、せわしなく見まわしたり周辺の人に桜井らしき人間を見なかったか聞き込みをしている。

 絶対に見つけられるはずもないのに。

 そのうち苛々が溜まってきたのか、クラフトで周囲の出店にあたり散らし始めた。店の商品がはじけ飛び、荷馬車が切り裂かれて積み荷が散乱する。かなり威力を押さえているはずだがそれでも一般人には恐怖でしかない。

 それを見ていた町人たちが我先に逃げていくので、日原と佐伯の周りには誰ひとりいなくなってしまった。

「クソが!」

 佐伯は地団太を踏み始めたが、日原がそれを諌める。

「落ちつけよ。どうせすぐには見つかりっこねえ」

「そうだけどよ、それにしてもどこに行きやがった?」

「俺らにいびられるのが怖くて逃げたんじゃね?」

「散々脅しただろうが。『逃げても絶対に見つけて、素っ裸にして写メして動画に流してやる』ってな」

 この世界でスマホが使えないだろうが、いじめられている方にしてみれば脅されているというだけで心を蝕んでいく。

「自殺したんじゃね? 町の外にあった泥沼の中に身投げしたとか」

「最期まで迷惑なやつだ。あいつが死ねばそのとばっちりが俺らに行くのによ。俺らの盾になれてむしろ喜ぶべきだったろうが」

「ちげえねえ」

 二人は周囲に誰もいなくなった状況で高笑いし始めた。



「ドルヒ……」

 僕は念のためぼろ布で顔を隠して様子をうかがっていた路地裏で、思わずうめいた。

『ああ、吾輩も相棒とおそらく同じことを考えている。聞くに堪えん会話だ。さっさと殺してしまえ。まずはどっちから殺す?』

 確か、佐伯の能力は武器である樫の棒を相手に向けることで相手を内部から爆散させる。日原は手につけている指輪で風の刃を作り出す能力だ。

 佐伯の能力は一度に多人数を相手にするには向かないけど、敵を内部から破壊できるので殺傷力が高い。日原は不可視の風の刃というだけあって回避が難しい。

「佐伯から殺すよ。アウトレンジから棒を向けられていたらやばいから。日原なら僕との間に遮蔽物があればそれを破壊していくことで気がつくはず」


僕は隠れていた物陰から慎重に様子をうかがった。

二人は樫の棒や指輪を適当な石ころや道に落ちた商品に向け、それを破壊することで嗜虐的な笑みを浮かべ、下品極まりない不快な声で嘲笑う。

 見ているだけで吐き気がするような光景だ。早めに殺してしまおう。

 だけどまだ早い。二手に分かれたときか、片方でも完全に無防備になった時を狙わないと。

佐伯が道の端に歩く方向を変え、無人となった露店の柱に寄りかかった。すぐ近くに日原はいない。棒も別の柱に立てかけてある。

今だ!

そう思った瞬間、脳が壊れるような感触がするほどの集中をしているのが自分でもわかった。全身の筋肉が連動し、脳のリミッターが一時的に外されて普段出せない瞬発力が出る。

僕は物陰からドルヒを構え、矢のように飛び出す。

 狙うのは佐伯の喉。串刺しにして頸動脈を断ち切るか、気管に血を詰まらせて窒息死させる。

 こちらを振り向いた佐伯と目があった。

 でもこの一撃で殺す。絶対に。

「っ!」

 だが佐伯は咄嗟に体を開いて僕のナイフをかわす。結果、佐伯の皮膚をわずかに掠めただけにとどまった。

 なんだ、桜井とは比べ物にならないくらいに速い!

 僕は瓦礫を蹴って家の屋根に跳び乗り、町の外へ逃げた。二人を同時に相手にするのは無理だ。

 顔は見られていないから、次の機会をうかがおう。

 狙われた佐伯が後を追いかけてくるが、僕の方が単純な移動速度は速い。これなら逃げ切れるだろう。

だが後ろを振り向くと、佐伯と日原の距離が開いていっているのが見えた。日原の方が攻撃が多彩な分、速度が大分遅いらしい。

 奇襲攻撃には失敗したけれど不幸中の幸いだ。勝手に二手に分かれてくれた。

 僕は逃げるスピードを少しだけ緩めて佐伯がギリギリで追える速度にする。

 町の外まで引き付けて、佐伯を殺そう。


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