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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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109/118

提案

 朝日を照らし返す刀身に実直なデザインの柄。村上君の短剣も相当な業物だけど、彼のもそれと同等の力を感じる。

「一個師団を瞬く間に壊滅させるなど、初めて見たぞ。それにその動き…… 人間ではないな」

 こいつ、悪魔とクラフトの存在を知っているのかな?

「そうかもね」

 情報を漏らす気はないので曖昧に答えておく。

「陛下からお預かりした兵をここまで…… 貴様はこの国に所属する傭兵か何かか」

「別に。殺したのも私用だ」

「私用でここまでの命を奪えるのか!」

 うーん。現代日本から来た学生よりも人殺しが職業の軍人の方がまともな思考回路っていうのも皮肉なものだ。

「そうだ。目的のために人を殺す。貴様と何も変わりあるまい」

「これ以上のやり取りは無用か」

 将官は馬を降り、走って私に向かってきた。馬を無駄死にさせないだけまともだと言えるだろう。



 将官は強かった。悪魔になって、相当レベルアップした私の動きについてきている。

 私が目にもとまらぬ速さで動いているのに、彼は必要最小限の動きで捌き、かわし、流す。力も速度も私が圧倒しているのに勝負がなかなかつかない。

 私が上段回し蹴りをするとわずかに身を沈めて空を切らせる。腹に掌打を放てば剣を私の前腕にそえて突きの軌道を反らしつつ身をかわす。そして身を沈めた動きを、身をかわした動きをそのまま利用して剣を振る力に替える。

 攻防一体とはこいつのためにあるような言葉だろう。

「貴様…… クラフトを使っていないのに、どうして吾輩の動きについてこれる?」

 その男はふっと笑って言った。

「愛する妻と娘のためなら、どんな修業にでも耐えてきた」

「そうか」

 本当に家族が大切なのだろう。彼の言葉の節々から愛情が伝わってくる。

 腹が立つな。私の親は私が学校でどんなにいじめられても、家で会話が少なくなっても、元気がなくなっても関心が無かった。仕事が忙しいとかじゃなく、そもそも他人に対して関心が薄いタイプだった。

 こいつ、憎たらしい。妬ましい。

 私が持ってないものを持っているこいつが、憎い。

 私は地面をけって後方に大きく跳び、距離を取った。

「終わりかね」

 私は激しく息を切らせている。一方将官は息が切れるどころか汗一つかいていない。

「最後に聞かせろ。悪魔についてどこまで知っている」

「悪魔か……」

 将官はわずかに考え込むようなそぶりを見せたが、隙はない。

「私の妻と娘を呪ったが、同時に病を治してくれた。だから悪魔のために働いている。私の軍に悪魔の力を得た三人の娘が来たが、欲望を利用して配下にすることができた。それくらいか」

 どうやら何らかの代償と共にこいつとこいつの家族に力と知恵を与えたらしい。あいつが考えそうなことだ。クラフトを使っていないように見えるのは身体や精神強化などの受動型の能力である可能性が高いな。しぐれの力がきいていなかったのも、そのせいか。

「そうか」

 私は腹を決め、構えを取り直した。

「一つ提案なのだが」

 将官は剣を鞘に納めた。なんだ? 居合の構えか? でもあの直剣では居合はできないはず。


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