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魔法の世界 青年期編

「あー、やらかしたー……」



 俺は真っ暗な部屋でがっくりと肩を落とした。っていうか、何も見えないんですけど。トイレとかどうすんの? これ。



 まだ俺中学生だよ? どうして牢屋なんかに入れられなきゃならないのさ……いやまぁ、理由は分かってるんだけど。

 要は俺が強くなり過ぎたってだけの話なんだよな、これが。



 小学生の時に殺しちゃった奴の件が全ての引き金なんだけど……まぁさ、あの気弱そうな少年、俺が助けた子ね。あの子がちょっと言っちゃならん事を言っちゃった訳よ。

 多分怖かったんだろうね。俺の秘密を見せつけられて。たった一人で秘密を抱えて生きていくのは難しいんだろうさ。そんな訳で、あの子俺の《ルシファー》を大暴露しちまったんだよ。



 もちろんそんなデタラメな魔法、誰も信じなかったさ。最初は、ね。少なくとも、小学生の頃は大丈夫だった。でも問題は噂が完全に浸透していた、中学の初日。

 中学生は好奇心旺盛って言うけど、やり過ぎは良く無い。俺はそう思う。なんだけど、噂を聞きつけたどこかのバカが、まさかの中学初日、しかも入学式中に殴り掛かって来やがったんだ。俺は魔法の成績が良かったんで推薦入学だったため、その時は一年生代表的な感じで前に立たされてたんだ。

 中学にもなると、それなりに他の奴らもバカに出来ない位強い。その上、その中学は魔法の名門校だ。一年生とは言えかなり強烈な魔法を使って来やがった。



 ……なんてのは言い訳だ。あの時反応出来なかった俺が悪いのは分かってる。浮かれてたんだな、俺は。

 要は、俺は全校生徒の前で殺人をやらかしたって事だ。正当防衛なんかじゃない。あれは完全に俺のミスだった。



 もちろん俺は逃げ出した。このままじゃマズイ事なんて直ぐに分かったし、俺が牢屋行きなのは一目瞭然だ。だから、全力で逃げ出した。

 今思えば、俺は少し時間が欲しかったのかもしれない。後悔する時間を。



 だけどまぁそんな言い訳が通用する訳も無く、俺を追って来たのは三人の魔術師だった。

 ただの魔術師、だなんてナメてはいけない。なんとこいつら、三人とも筆頭魔導士候補だったんだ。



 もちろんまだ天才であり秀才でない俺が勝てる訳も無く、俺の《ルシファー》を突破出来る唯一の魔法、召還魔法でボコボコにされた。それはもうボッコボコだ。俺なんか手も足も出なかった。



 結果、今の状態。国から危険人物指定を受けた俺は、こうして暗闇の牢屋の中だ。



「《コメルティア》……やっぱ駄目か……本当に困ったなぁ……」



 どうやらこの牢屋内は特殊な結界が張られているらしく、俺が作り出した最大の破壊系魔法である《コメルティア》も使用出来ない。完全にお手上げという状況……はぁ。



「もうどうすればいいんだよ! 何をして償えって言うんだ! 俺をこんな真っ暗闇な世界に閉じ込めて、それが償いか! 俺はまだこの世界を見ていない! 聴いていない! 臭っていない! 味わっていない! 感じていないのに! こんな所でぐずぐずしてられないんだよ————!!」



 俺の溜め込んで来た怒りが爆発する。三人殺したのは俺のせいか? あぁ、そうだ。俺のせいだ。だけど、何が出来た? 何も出来なかったんだ! 後からあれが出来たこれが出来たって後悔しても遅い! あの時、俺はそうする以外の道を選べなかった! 



「俺は人殺しなんかじゃない! ただ自分の身を守った結果が相手の死だったんだ! 仕方無いじゃないか!」



 くそっ! くそっ! くそっ! こんなつまらない人生の終わり方をしてたまるか! 俺は何度だって転生出来るけど、それでもその世界での人生は一度っきりだ! 本当に人生は一度しか無い! 俺はその事を誰よりも知っている!



「うわあァァァァ!!!!」



 まるで狂ったかのように、魔法をデタラメに連射しようと頭でイメージする。しかしそのどれもが不発。



「はぁ......はぁ......」



 途端、久し振りに感じる脳の疲労感。これは魔法を使いすぎた時に起こるものなので、どうやら魔法は使えていない訳では無く、使っているが効果は出ないという感じのようだ。

 それが分かったからといってどうなる訳でも無いのだが。



「誰か、俺を......女神様......」



 今も何処かで俺を見ているであろう女神様に、俺は祈りを捧げる。彼女は別に世界に影響を及ぼす力は持っていなかったはずだが、もしかしたら彼女なら......


 ◇ ◇ ◇


 俺の祈りは届く事無く、その内三年の月日が流れた。



 本当に住めば都とは良く言ったもので、俺も随分この暗闇の生活に慣れてしまった。

 別に手足が拘束されている訳では無いし、牢屋内は俺が身体中を伸ばして寝転がっても余裕がある位広いし、結界のおかげなのか虫は湧かないし体が汚れないから風呂に入る必要も無いし......食事も案外上手いし......あれ、これ光が入らない事さえ無ければ凄い良い物件なんじゃ...…?



「待て待て、牢屋をいい物件と思うとか、随分俺も腐って来てるぞ。トイレとか真っ暗闇の中部屋の端っこの穴でやんなきゃいけないのに…………やばいな、早く脱出する方法を考えないと……」



 しかし、今までの囚人生活の中で一度たりとも脱出する機会が訪れた事は無い。強いて言えば食事が運ばれて来た時と面会の時位だろうか……しかし、食事は魔法で部屋の中に送られるシステムなのだけれどその間に俺の魔法が成功した事はないし、面会も最初は父様や母様との面会があったが、ここ一年はめっきり来なくなった。何かあったのだろうか……



「その時だった!…………みたいな事、ある訳無いよな……」



 その時だった。



 なんと最後の面会以来一年間光の差し込まなかったこの部屋に、希望の光が差し込んだのだ!



「あ……とう、さま……?」



 しばらく使用していなかった目の機能が悲鳴を上げ、激しい痛みをもたらしながらも仕事を果たす。そう、逆光の中で見えた者のシルエットは、父様のものだったのだ。



「無事か?」



「あ、はい」



 長らく使っていなかった為忘れかけていた敬語を使いながら、俺は目が痛むのも気にせず父様を見上げる。見ると父様は顔が随分やつれていて、猫背に白髪、目の下にあるクマなどで昔の堂々とした感じを全く感じさせない風貌だった。



 それでも流石は俺の父様。こんな酷い有様でも俺を助けに来てくれるなんて……



「……そうか、それは残念だ」



「え? 父様……今、なんて?」



「残念だ、と言ったんだ。いいか、俺は今からお前を……」



 なんだ、なんだよ。そんなに怖い目で俺を見て。やめてくれ。嫌だ。聞きたく無い。



「——処刑する」


 ◇ ◇ ◇


「父様!? 父様!? やめて下さい! 父様!」



「お前が犯した罪を償うため、一年前母さんは死んだ! 国の命令で、そうするしか無かった! 全てお前のせいだ! だから俺はお前を殺す。安心しろ、お前を殺した後、俺も直ぐに逝くさ……家族みんなで、死のう」



 父様は正気だった。目が死んでいない。狂気に陥っていない! つまり、悩んで悩み抜いた末に出した結論がこういう事だっていうのか! 嫌だ!



「皆、聞いてくれ! 俺はこれより、俺の息子の処刑を開始する! 刮目しろ!」



「「「オオォォォォ!!」」」



 俺は手足を特殊な鎖で縛られ、頭に取れない変な帽子を被らさせられて四つん這いになっていた。おそらくどちらも魔法の発動を妨害するものだろう。俺の意思では魔法を発動する事が出来なくなっていた。



 周りには沢山の観客。大罪人という事にされた俺が処刑されるのを心待ちにしている狂人だらけだ。



 そして目の前には俺の父であり、魔法の師匠である父様が、息子であり、弟子である俺を殺すべく構えていた。



「お前はいい魔術師になると思っていたのだけどな……俺の思い違いだったよ」



「父様! お願いです! こんな事はやめて下さい!」



「今からお前に見せるのは、俺の魔法の中で最も強力なものだ。最強の攻防一体反射魔法、《ウリエル》……最後にそれを学習しながら、死ね」



 駄目だ、話を聞いていない! 違うんだ父様! このままその魔法を使えば、俺の《ルシファー》が……!



「《ウリエル》!! ウオォォォォ!!!!」



「止まれよ、俺の《ルシファー》ァァァァ!!!!」



 父様の発動した《ウリエル》。それはおそらく自分の攻撃を自分に浴びせ、それを反射する事で相手を殺す魔法なのだろう。実際、父様は一度獄炎に包まれた。

 しかし問題は俺の《ルシファー》だ。これは《ウリエル》と同じく、反射魔法の一つ。違いは発動に俺の意思が関係無い事と、俺のものは相手の心臓のみを破壊する点だ。

 そして大抵の上位に位置する反射魔法は、反射する際にエネルギーを限界まで増幅して返す。しかし俺の《ルシファー》は例外。極少量のエネルギーのみで相手の心臓を破壊するのだ。



 つまり、もしも俺の《ルシファー》が発動して父様の《ウリエル》を反射してしまった場合、限界を超えてしまったエネルギーを《ウリエル》は反射出来ず、《ウリエル》をぶち壊し、父様の心臓を破壊した後は余りあるエネルギーを暴走させてしまうのだ。

 そうなった場合、どうなるか俺にも想像が付かない。

 ただ一つ言える事、それは俺の安全が絶対に保証されているという事だ。《ウリエル》を反射してしまえば、《ルシファー》はどんな魔法すらも跳ね返せる究極の魔法となってしまう。

 そうなれば、分散してしまったエネルギーで《ルシファー》が破壊される事は絶対にないのだから。



 だから頼む! 例え俺の命が消えてもいい。だけど、俺以外の人間を巻き込むのは止めろ、《ルシファー》!!



「止まれェェェェ!!!!」



 父様を包んでいた獄炎が、一気にその色を白く染めながら俺に襲いかかる。しかし、熱さは感じない。という事は…………



「ウワァァァァ!!!!」


 ◇ ◇ ◇


 まっさらな荒地に俺は居た。聞こえるのは風の音だけ。まるでさっきまでの事が夢だったのでは無いかと思えるほどに、ここは静かだった。



 しかし、目の前には黒焦げた何かの死体が一つある。



「父様……」



 あの大爆発の中、焦げた死体だけでも残っているだなんて……きっと父様の《ウリエル》は仕事を果たしたのだろう。壊れて尚、主の体を守り抜くという仕事を。



「俺は……」



 全てを失った。この世界での人生も、全て。



 ならばせめて。



「こんな世界……ぶっ壊してやる……!!」

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