表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

救世主の約束事

 京達は舞子達と合流する為、宇宙船へと戻った。

 途中チョロチョロと現れるダーク星人を倒しながら、マルク以外の人質も探したのだが、見つからず。

 しかし宇宙船に辿り着けば、舞子達と人質だったであろう数十人の姿を発見した。

「よお、上々の出来じゃねえか」

『ふん、当然だ』

 京は舞子に向けてそう放つと、初代救世主から憮然としたような返答がきた。

「おいおい、オレを認めてくれたんじゃねえのかよ。これから一緒に戦うんだから、もう少し愛想よくできねえのか」

『馬鹿を言え。認めたわけではない。やむなく受け入れただけだ』

 ――拒否してたことは肯定するのか。

 呆れていると、舞子がおずおずとこちらを見上げてきた。

「だ、大丈夫だよ。初代さんは安久津くんのこと、少しは見直してる……と、思う」

 それはフォローになっているのか。大体何をどう見直したのか、その説明では何一つ納得できない。

 傍らでは、ルイ達が人質だったシロ星人と感動の再会を果たしているようだった。

  どうやら怪我をしている者も数人いるようだが、どれも致命傷には至っていないらしい。マルクにしても気を失ったままだが問題はない。そのくらいは必要な犠牲である。

 ぼうっと眺めていると、ジオがこちらを睨み付けながら近付いてきた。

「この後のことだが、本当に任せて大丈夫なんだな?」

 動力源の破壊のこと、というよりは舞子のことなのだろうなと考える。

「安心しろよ、お前の崇拝するお姫様はちゃんと守ってやるから。まあ初代もついてるし……」

「舞子さまを守るのは当然のことだ」

 言葉を途中で遮られる。

「動力源を破壊してお前も戻ってこられるのか?」

 意外な質問だった。

「まさかオレの心配してんのか」

「……残された舞子さまが心配なだけだ」

 ムスッとした表情で視線を逸らされる。

 まあどんな理由でも構わない。相当嫌われているのだという自覚はある。もしかしたら、これがジオなりの心配の仕方なのかもしれないが。

「努力してやるよ」

 とりあえず肯定的に返事をする。

 正直、ダーク星人を倒した後のことは何も考えていない。そもそも初代救世主が京の中から出ていった時点で、一人死ぬつもりでダーク星を破壊しようとしていたのだ。他に大した未練もない。

 だが結局、初代救世主は舞子に宿り、一緒に戦うことになった。

 生きられるというのなら、今後も人生を楽しむつもりではある。キセキ星での無味乾燥な人生と比べて、他の星々の何と面白い人生か。キセキ星人として生まれた身としては、まだまだ人間というものに興味があるのだ。

 そんな答えでもジオはどこか安心したように「よろしく頼む」とぼそりと呟いて踵を返し、舞子のもとに向かった。

 しかしさすがは初代の子孫。不遜な態度がそっくりだと京は感心する。

「京様。必ず戻ってきて下さいね」

「頑張ってね。僕らの命、君達二人に預けたから」

 リョウカとセイガは落ち着いたもので、いつもと変わらない様子だった。頷いてやると、彼らはシロ星人達を宇宙船へと誘導し始める。

 不意に服の袖が引っ張られた。

 振り向けばいつの間にかルイが背後に立っていたようだ。

「……あんたを救世主として認めるつもりはないけど、シロ星を救うにはあんたの力も必要だってことは認める」

 しかめっ面で言うものだから思わず苦笑する。

「へえ、何が言いたい?」

 ルイは少しだけ言いよどむと、やがて吹っ切れたようにふんぞり返った。

「とにかく! 死なれたら後味が悪いから、ちゃんと帰って来い!」

 相変わらず面白い女だと、京は吹き出した。一応励ましの言葉として受け取っておくことにする。

 しかし笑われたのが気に入らなかったのか、ルイは文句を言い始めたのだが、京は軽く流してジオと話している舞子のもとへと向かう。

「ここまでしかお供できないのが、心苦しいですが……」

「き、気にしないで。今までのことだけで十分に感謝してるし……」

「ですが、やっぱり……」

 不毛な会話が延々と続いているようだった。舞子が押しに負けてジオが着いてくることになると面倒なので、仕方なく間に入る。

「少しは信用しろよ、笹森を」

 そう言うと、意外なところから助け船が入った。

『……今回ばかりは我も同意だ。ジオ、あとは全て我々に任せればよい』

 さすがに初代救世主の言うことは逆らうわけにもいかないのだろう。ジオは覚悟を決めたように大袈裟に一礼し、「ご武運を」と残して宇宙船へと引き下がった。

 ルイもその様子を見て不本意そうではあったが退散したようだ。

 その時、むさ苦しい男が一人、勢いよく舞子の前に現れた。

「救世主様! さっきは助けてくれてありがとうございました! ジブン、色々と失礼なことばっか言っちまったんスけど、本心じゃなかったっていうか……!」

「あらよっと」

「へっ?……って、どほおう!?」

 京はボウの腹を目掛けて勢いよく蹴り飛ばした。

 彼は景気よく吹っ飛ばされ、遠くにいるジオの見事な顔面パンチによって受け止められたのだった。

「え、えーっと……」

 困惑する舞子に、「何となくムカついたから蹴り飛ばしちまった」と説明する。

『我はスッキリした。舞子への暴言、忘れはせん』

「そりゃよかった。お前は?」

 舞子にも返事を強要すると、彼女は目を泳がせながら「あ、ありがとう」と苦笑いを浮かべた。

 京はその返事に満足しながら宇宙船のほうに再び視線を戻すと、シロ星人達は全員一礼してルイとジオの宇宙船へそれぞれ乗り込んでいった。

 残ったのは、京と舞子だけとなった。

「さて、行くか」

「う、うん!」

 ダーク星の要となる一番大きな負の感情を宿した動力源。

 五百年前には破壊することができなかったが、今度こそは――

 宇宙船がエンジンを噴かし始めるのを背後で感じながら、二人は最後の動力源へと歩を進めた。

 黄色い球体以外の光は一切ない殺風景な真っ黒い星。

 五百年前と何ら変わりのない星は、まるで時を忘れたかのようである。

 キセキ星も、この星と大した差はなかったかもしれない。厳しい規律の中、個性を出すことを一切よしとしない生活は苦痛でしかなかった。力はあれど、使うことなど許されない。例えそれが人助けでもだ。宝の持ち腐れである。

 誰でも全て均一の家、食べ物、洋服。何の為に生きているのかもわからなくなるほど空っぽな生活は、ダーク星の殺風景な景色と何ら変わりないだろう。

 いつしか京は、キセキ星から飛び出したいと願うようになった。

 しかし周りは敵だらけ。打つ手はない。彼らに反抗的な態度を取るしか意思表示できない京だったが、ある時、一人の男が自分もキセキ星を出たいのだと打ち明けてきた。二人いれば、何か策を講じることができるかもしれない。二人はそうして意気投合し、同志となった。

 お互いキセキ星を出る機会を伺っていたのだが、そこでシロ星からの救援信号をキャッチする。

 もちろんキセキ星人は動かない。京はもう耐えられなかった。キセキ星人への反抗心から、シロ星を救おうと強行手段に踏み切ることにした。

 そして救世主が京に語り掛けてきたのだ。『我と共にシロ星を救ってくれ』と――

「まさカ、もうここまで辿り着くとはナ」

 過去を思い出していた途中で、いきなり不愉快なダーク星人の声が響いた。

 辺りを見回すと、ダーク星人がわらわらと現れる。

 その数は軽く百体は超えていそうなほどに密集している。

「す、すごい数……!」

 舞子は青ざめる。

 動力源を二つ破壊したというのに、まだこんなに勢力が残っていたとは京としても意外であった。

 果たしてこれだけの量を倒すことができるだろうか。

 はっきり言って、最後の動力源に関しては規模がまったく把握できていない。例えここを突破したとしても、まだ相手の余力があった場合、再びダーク星人を量産されてしまう。そうなればこちらの体力がもたず、確実に負けてしまうだろう。

『どうする?』

「まともに相手なんざできねえよ。動力源はこの先だ。無理矢理にでも突破するしかねえ」

『ほう、どうするつもりだ』

「オレが赤き剣を盾にしつつ、向こう側まで走り抜ける。お前らは後ろからついてこい」

 初代は『わかった』と返事をし、舞子は不安そうに「は、はい……」と返事をした。

 とにかくやるしかない。

 京は左手に赤き剣を生み出し、目の前に掲げる。

 剣に力を込めると強く発光して前方に赤い光の壁ができた。

 これに触れれば、死ぬことはないだろうが重い火傷を負わせることはできるだろう。

 この光の壁では前方しか守れないのが難点だが、動力源を破壊する為に、力はできうる限り残さなければならない。

「横と背後と上空から攻められたら、テキトーに蹴散らせよ」

 舞子は「ええ!?」と驚くが、もう時間はない。

「ワレワレに勝てると思うナ」

 ダーク星人は一斉にこちらに向かってくる。

「行くぞ!」

 今度は返事を待たずに、京は駆け出した。

 うじゃうじゃといるダーク星人の群れの中に飛び込み、無理矢理前へと押し進む。

 光の壁に触れたダーク星人は次々に呻き声を上げて地面に倒れていく。

 数が数だけに、今まで戦ってきたダーク星人よりも単体の力は弱いようだと気付く。これならイケるかもしれない。

「無駄なことヲ!」

 しかし危惧した通り、ダーク星人の何体かが上空に飛び上がった。ここで止まれば彼らの餌食である。

「笹森! 上は頼んだ! ただし止まるなよ!」

「そ、そんな無茶な……!」

  無茶でも何でもそうするしか方法がない。

『舞子、青き剣を上空に掲げ、奴らを阻め!』

「うぅ、は、はい!」

 不服そうな態度ばりばりではあるが、舞子は走りながら青き剣を右手に生み出し、上空に掲げる。

 青い光の壁が京と舞子の頭上に広がり、舞い降りてきたダーク星人が触れると、バチバチッと音をたてて、遠くに弾け飛んでいった。

 どうにか防げたようだが、まだまだ目の前には大量のダーク星人が敷き詰められたように待ち構えている。

「あ、安久津くん!」

 突然、舞子が京の名前を叫んだ。

 それと同時に、真横から殺気を感じる。

「チッ!」

 京は舌打ちする。ダーク星人が京に向かって拳を繰り出してきたのだ。

 ここで避ければ足が止まる。そうすれば袋叩きに合う可能性も否めない。が、まともに喰らうのも腹立たしい。

 少しばかり力を出すしかないと、京は断腸の思いで剣に力を込める。

 しかしその瞬間、どこかから強力な風がブワッと吹き荒れ、京と舞子の周りにいるダーク星人達が一斉に吹き飛んだ。

 バタリバタリと倒れゆくダーク星人を見て、京は僅かに眉をピクリと動かす。

「お二人とも、ご無事でして!?」

「え!?」

 聞き覚えのある女の声が響き、驚きの声を上げる舞子と共に背後を振り返ると、扇子を手にしたリョウカの姿を捉えた。

 シロ星に戻ったのではなかったのか。そう疑問に思っていると、

「やっぱ、あんたらだけじゃ頼りないと思ってたんだよね!」

 生意気な女の声も響き、ダーク星人の何体かが、呻き声を上げている。

 その方向を見れば、先程の風によって油断したダーク星人をルイが拳や足蹴りを繰り出し、鮮やかに倒していた。

「リョウカ、もう一度風を起こせ!」

「あなたに言われずともやるつもりだったわ!」

 今度はセイガが現れ、リョウカに何やら促すと、彼女は扇子を一振りする。すると再び突風が吹き荒れた。

 恐らくパワーを扇子に込めてこの風を出しているのだろう。

 起き上がりそうになっていたダーク星人の体が揺れ、その隙を狙い、セイガは上体を低くしてステッキを刀のように素早く横に振った。するとダーク星人はまるで居合斬りでもされたかのように、次々と倒れてゆく。

「な、何で、皆ここに……!?」

 舞子は驚いているが、京の命令に背いて助けに来たことは明白だ。

 しかしせっかくできたこのチャンス。命令に背いた仕置きは後でたっぷりするとして、逃すわけにはいかない。

 舞子の手首を掴み取り、強引に向こう側へと走り出す。

「わわっ!?」

 足をもたつかせる舞子には構わず突き進むが、まだまだ先には多くのダーク星人が控えており、道を阻んでいる。

 その時、いくつもの緑色の光の輪が現れ、目の前のダーク星人達へと向かっていった。

 光の輪がダーク星人に触れると、瞬時にその体に巻き付いて拘束する。

「舞子さま! 今の内に早く!」

 ジオだ。背後に現れ、彼が何やら勢いよく手を振ると、緑の輪はダーク星人を締め付け弾け散った。

 呻き声が響く中、京は舞子の腕を掴んだまま、開けた道を前へと進む。

「ようやく抜けたな」

 ダーク星人の軍勢を何とか潜り抜け、やはり暗闇ではあるが、動力源へと向かう道が見えた。

 背後を振り返ると、ルイ達はダーク星人と未だ応戦したままでいる。

 彼らの実力は高い。今までのダーク星人より単体の力は弱いとは言え、ここまで戦えるとは思っていなかった。まだまだ彼らには隠し技もありそうだ。

 しかし、この量のダーク星人を葬れるほどのパワーはないだろう。

「あ、安久津くん! 皆を助けないと……!」

『舞子、落ち着け。それではジオ達の思いが無駄になる』

「だ、だけど、まさかこのまま放っていくんですか!?」

 ――そうすりゃいい。

 少し前の京ならば、そう即答していたのだろう。

 ダーク星人を封印することしかできなかった己の不甲斐なさに苛つき、自暴自棄になって力を集めていた時とは違う。また今回の転生で力が半減し、一人でダーク星を破壊しようと考えもしたが、ルイやリョウカ達を見て、それもつまらないような気がした。

 人というのは面白い。キセキ星人にはない様々な感情を持ち、人は人に影響され、強くもなるし弱くもなる。

 どうせなら彼らにマイナスな影響を与えるより、プラスの影響を与えたほうが楽しくなりそうな気がした。

 だから、初代救世主の言う通り、彼らの思いを無駄にする形にはなってしまうが、わざわざ舞子と初代救世主を連れてここまで来たのだ。別に後悔しているわけではないが、京はこれまで数え切れないほど多くの血を流してきている。これ以上無駄な犠牲者を出すつもりはない。

「やっぱ、ここはオレが――」

 京は覚悟を決めて足を踏み出すが、違和感に気付きすぐ足を止める。

 その瞬間、辺り一面が目映いばかりの光に覆われた。

「ちょ、何事!?」

 遠くでルイの声が響く中、京は眉をひそめてその光を見つめた。

「まさか――」

 懐かしくも苦々しい気持ちにさせる気配に、京の胸がざわめく。


「――待たせたな、グレン」


 突如、穏やかな青年の声が耳元で聞こえ、それと同時にその正体を確信した。

「――カルムか」

 そう呼び掛ければ、「ああ、そうだよ」と微笑むような声が返ってくる。

 すると光が弱まり、ダーク星人とルイ達の姿が再び見えてくる。そのダーク星人の大群がいる中心に、光の根源があるようだった。

「ひ、人……?」

 舞子の掠れた声に、京は何とも微妙な気持ちになる。

 見覚えのない青年が、光輝きながら立っていた。ダーク星人達は無表情のまま動かない。いや、動けないのかもしれない。

 地面まで垂れ下がった金色の髪の青年はただ一点、微笑みながら京に視線を向けていた。

「……お前、本当にカルムか?」

「美しすぎるって?」

「気持ち悪いくらいにナヨナヨしい」

「……相変わらず辛辣だね、グレンは」

 カルムの姿は遠くにあるが声だけは耳元に響いており、もしかしたら自分にしか聞こえていないのだろうかと思ったのだが、『確かに昔はもっと地味な男だったな』という初代救世主の言葉に、どうやら他の者にも聞こえているらしいことがわかる。

「あ、安久津くん、もしかしてその人は……!」

 舞子は何やら感付いたらしい。京は頷く。

「……ああ、キセキ星人だ。五百年前にオレと一緒に戦った、な」

 ――見た目はまるで別人だけどな。

「キ、キセキ星人~!?」

「まあ、本当に存在してらっしゃったのね」

「キセキ星人にも性別はあるのかな。残念だけどあの人は女性じゃないよね」

「信じられない……。でも、あの力は――」

 しかし反応したのは舞子ではなく、いつの間に集まったのか、京の後ろに控えているルイ達四人であった。

「間に合ってよかったよ。彼らが駆け付けてくれなければ、グレン。君は力を使ってしまうところだったろう」

 すでに人質は連れ出した。自分の命に未練はないので、そうなったらそうなったで諦めはつくというものだ。

「おい、カルム。お前、あれからずっと転生し続けてたのか?」

「ああ。お前が救世主として力を蓄えるのなら、僕はキセキ星を改革し、いつかグレンの手助けができるようにしようと思ったんだ」

 本来なら、ダーク星人の動きを止めている今の行動もキセキ星では完全に御法度のはずだ。

「お前、今の地位は?」

「幹部にまで上り詰めたさ」

「五百年生きてんならトップくらいなっとけよ」

「ひどいなあ。上には上がいる。わかるだろう? それにね、キセキ星人が他星に干渉することは非常に危険なことだということもよくよく学んだよ。例えトップになったとしても、僕ができるのはダーク星人を足止めすることだけだ」

 彼の言う通り、キセキ星人の力で他星に影響を与えると、必ず何か犠牲が支払われる。それは世界の均衡を保つ為と言われていることも京は知っていた。しかしどこまでがセーフでアウトなのか、その境界は曖昧だ。

 だが、そのせいで京はダーク星人を倒すことができなかったことは事実である。

「ダーク星人に止めを刺すのは、やはりシロ星の救世主に託さないとね」

  京は鼻で笑う。

「当然だ。お前なんかに任せるかよ。ここの奴らを足止めするだけで十分過ぎる働きだ」

「相変わらずで安心したよ。グレンのおかげでキセキ星は他星と離れて完全に孤立してしまったが、君が転生を繰り返していることは知っていた。あの一件で罰せられはしたけれど、僕もやられたままでいるつもりはなかった。結果、今の地位を手に入れられたんだ。お互い、自分の意志を貫くという約束だったからな」

 遠い昔の約束――

 カルムをキセキ星に残しておきながら、ダーク星人を葬ることもできなかった。とても後味の悪い結果となってしまい、それがこの五百年、京をただ縛り続けていた。どんなことをしてでも、ダーク星人をこの手で葬るまでは生きることをやめるわけにはいかなかったのだ。

「それに、キセキ星を孤立させたのは僕の為だろう? 他星と関われば、また自分の不甲斐なさを痛感させられるから」

「……勝手に解釈してろ」

 仏頂面で返せば、カルムはフッと笑う。

「――さあ、グレン。ここは任せて、先に進め」

「……わかった」

 京は頷いてからルイ達へ一瞬視線を向け、もう一度カルムに向き直る。

「ちなみに、もう一つ頼んでもいいか?」と問い掛ける。

「何だい?」

「そこの四人をシロ星に送り返してくれ。宇宙船はどうせ人質に貸しちまってるから帰る手段ねえみたいだし」

「さすが京様。全てお見通しですわね」

 やはり人質だけ先に帰してしまったのだろう。

 感服するリョウカに、慌て出すジオ。

「ま、待ってくれ! ここまで来たら最後まで……!」

「同じやり取りをさせんな。さっさと帰れ」

 京はぴしゃりと言い放ち、ジオは顔をしかめつつも、場の空気を読んで素直に引いた。

「大事な旧友の頼みだ。彼らのことは僕が責任を持ってシロ星へ送ろう。――それでいいんだな、グレン?」

 カルムは爽やかに微笑む。

 京は頷き、踵を返す。舞子が慌ててついてくる気配を感じたが、不意に思い立ってその場に立ち止まる。

 背中を向けたまま、小さな声でカルムの名を呼んだ。恐らく本人に声は届いているはずだ。

 少しだけ間を空けて、暗闇を見上げた。

「――サンキュー、な」

 カルムにだけ聞こえるようにぽつりと一言呟き、京は止めていた足をまた踏み出す。

 ルイ達の何やら応援だか罵声だかわからないような言葉を背中に受ける中、「僕のほうこそ、約束を覚えていてくれてありがとう」と嬉しそうなカルムの声が耳元に響いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ