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救世主達の恋愛事情

「安久津京と笹森舞子がいなくなったぁ!?」

 ルイは驚きと怒りで顎がはずれそうになるほど大きく口を開けた。

 本来ならば日が昇り始める時間帯。ダークスモッグによってそれも敵わないが、長老から緊急召集された。

 ルイは遠足に行く前日の子供よろしくなかなか寝付けなかったので、睡眠不足と戦いながら長老の屋敷に向かった。決してダーク星人と戦うのが楽しみなわけではなく、緊張によるものだということは捕捉しておこう。

 すでにリョウカ、ジオ、セイガの三人も揃っており、囲炉裏を囲んでいた。そして青ざめた表情の長老から、救世主の二人がいなくなったという情報を聞いたのだった。

 そんな状況で、セイガは何故か楽しそうにほくそ笑む。

「まさか駆け落ちだったりして」

「ありえない!」

「ありえないわ」

 ジオとリョウカが一刀両断する。セイガは「二人とも怖いよ」と言いながらもまだ楽しそうである。

 そんな冗談を言っている場合ではないのだ。ルイは彼を一瞬睨み付けてから、長老に視線を向ける。

「どうすんですか! せっかく皆を納得させたのに、救世主達がいなくなったら暴動が起こりますよ!」

 長老は青い顔で「わかっておる」と頭を抱える。

 尚も言葉を続けようとすると、肩に手を置かれた。

「ルイ、落ち着きなさい。長老のせいではないのだから。まずは彼らがどこに行ったのかだけれど……」

 リョウカはそう言ってジオに目配せする。彼は神妙な顔で首を横に振った。

「……悪いが、舞子さま達の力は感じられない。今、婆ちゃんも救世主様の力を探しているんだが、どうしてか見つけられないんだ」

「つまり、力を隠してるのか隠されてるのか、どっちかってことだよな。駆け落ちの可能性も否定できないね」

「あんたは何を期待してるわけ!?」

 ニヤつくセイガに目一杯突っ込みを入れてやる。

「普通に考えれば、ダーク星人が原因だと思います」

 しかしそのやり取りをまったく無視してジオは長老に言った。

「……そうだな。とにかく、誰か京殿と舞子殿を見掛けた者がいないか探すことから……」

「それはマズイですって! 行方不明なのもろバレじゃないですか!」

 強く止めると、長老は唸りながらまたまた頭を抱えてしまう。

 その時、ジオが背後の壁にある木製の格子窓を振り返った。

「誰だ!?」

 叫んでそのまま素早く屋敷を出ていく。

 外に人がいたのか。

 それを見たセイガは目を細めて「まさか……」と呟いた。

「何、心当たりあるわけ!?」

 詰め寄るが、腕組みをして難しい顔で考え事をしているようで無言のままだ。

 ふと顔を上げたと思ったら「僕も行ってくるよ」と席を立ち、屋敷の外へと出ていく。

「リョ、リョーちゃん、どうする?」

 困ってリョウカに意見を求めると、彼女はゆっくりと立ち上がった。

「わたし達も行きましょう。恐らく、窓から覗いていた人物が鍵を握ってるんでしょうから」

 どうせ他に手立てもない。ルイも頷いて立ち上がる。

「長老はここで待機なさっていて下さいな。京様と舞子さんが戻ってくる可能性もありますし」

「……あいわかった」

 長老が静かに了承したのを確認して、二人はジオ達の後を追いかける。

 外へと出ると、遠くにいるセイガの後ろ姿を発見する。町外れの森へと続く道の入り口にいた。

 そのすぐ向かい側にはジオもおり、見覚えのある金髪の女と対峙していた。

「あれって、ミーアじゃない?」

「……みたいね」

 リョウカは呆れたような口調で同意した。

 ミーアはセイガに熱を上げている女の一人だ。リョウカとは反りが合わないらしく仲が悪かった気がする。かくいうルイも苦手なタイプなのであまり面識もない。

 走り寄って行くと、ジオとミーアの言い合いが聞こえてきた。

「隠してることがあるなら言え!」

「だ、だから、アタシは何も知らない! 隠してもないわ!」

 とても無関係とは思えないくらいの動揺っぷりである。

 セイガは無言で二人の様子を傍観しているようだった。

「ミーア、まさかあなたが犯人だっただなんて残念だわ」

 リョウカはわざとらしく肩を落としながら声を掛けた。

 ミーアは血の気が引いたように「リョ、リョウカ……」と名前を呼ぶ。

「ち、違う! アタシは……!」

 カマをかけられてることにも気付かず、否定し続ける彼女。何に対して犯人扱いされているのか疑問を抱かない当たり、彼女が黒なのは明らかなのだが、味方が一切いない状況というのも少し哀れに感じてきた。

「まあまあ、弁解くらい聞いてあげてもいいんじゃない?」

 ルイが思わず助け船を出してやると、ミーアは瞳を潤ませて「ルイ~!」と泣き叫びながら抱き付いてきた。

 ――ほぼほぼ話したこともないのに抱き付かれた!?

「き、気付いたら体が勝手に動いてたのよ! まさか救世主様達を宇宙に放り出しちゃうなんて……!」

 力一杯抱き締められて苦しいと思う間もないまま、びっくり仰天の事実を暴露される。

 ――う、宇宙に放り出した!?

 ミーアの肩を掴んで体をグイッと離し、ルイは「どういうこと!?」と問い質す。

「わ、わからない! あの子にセイガを取られたくないって考えてたらいつの間にか、あんな状況になってて……! でもアタシは笑ってて、自分でも信じられなくて……!」

 涙を流しながら首を振る彼女の説明は不明瞭だ。

 困っていると、リョウカが近付いてきてミーアの背中をそっと擦ってあげた。そして冷たい視線をセイガに向ける。

「あなたが手を汚すほどの価値なんてないわよ、この男に」

「……あー、そこで僕に矛先を向けるのか」

 セイガはやれやれといった様子で手近の木に凭れ掛かった。

「おい、責めるのは後でいい! それより舞子さまは……」

「僕も舞子ちゃんのことで頭が一杯なんだよね。もしかして、これが恋ってやつなのかなー」

 ミーアに再び説明を求めようとしたジオの動きがピタリと止まったかと思うと、楽しそうに笑うセイガの胸ぐらに突然掴みかかった。

「お前、ふざけんなよ! 舞子さままでお前の道楽に巻き込むな!」

 自分のチームのメンバーがボコられても知らんぷりのジオが他人の為に怒っている。何故そんなに舞子に入れ込んでいるのだろうか。

 自分でもわからないが、何故か少しだけ複雑な気持ちになっていると、リョウカと目が合った。

「……ねえ、ルイ。前々から思っていたのだけど、あなたもしかしてジオのこと気になってるの?」

「何言ってんのリョーちゃん!?」

「ええ!? あの無愛想な男のどこがいいの!?」

 小声で言ってくれたから、睨み合っているセイガとジオには聞こえなかったようだが、側にいるミーアにはバッチリ聞かれてしまった。というか無愛想って。

「いやいやそっくりそのままお返しするけど、ミーアだって、あの浮気男のどこがいいわけ!?」

「え……カッコいいじゃない! 優しいし!」

 ――何か浅い! 思い詰めてた割に好きな理由が浅い!!

「上っ面に騙されて哀れね」

「何よ! リョウカだって金持ちとばっかり付き合ってたじゃない!?」

「さて、そんなことよりルイ。ジオのこと、どう思ってるの?」

 話を戻され言葉が詰まる。ミーアも不満気ながらも気になるのかルイを見つめてきた。

 どう思っているかって? だから苦手なのである。

 お互いここが地元なので昔から知っているが、ミーアの言う通り確かに無愛想な奴だったので、プライベートで話したことなどほぼない。 いつの間にか二人ともチームリーダーになってしまって、メンバー間での争いも絶えなくなってしまったし、ジオは一切喧嘩を止めようともしてくれなかった。

 しかし、時たま人の核心を突いてくるのだ。

 チーム同士の争いで、ルイのチームがバカにされた時も『人の言うことなんか気にするな』と声を掛けてきたり、ある時はルイが気付くより先に、他のチームからの嫌がらせを止めてくれたりもした。喧嘩は止めないクセに、である。

 マルクが誘拐されたことについても『お前の責任じゃない』と言われ、少し心が軽くなってしまったのだ。

 いい奴かと言えば疑問が残るが、そんなに悪い奴ではないとは思う。ただ苦手なだけ。ただそれだけなのだから、

 ――ぜっっっっったいに好きじゃないっ!!

 ルイが全否定しようとしたその時、

「随分と楽しそうじゃねえか。何の修羅場だ?」

 この状況の原因となった渦中の人物が二人、姿を現した。

 安久津京と笹森舞子――

「な、何で生きてるの!?」

 誰よりも驚いたのは、犯人であるミーアだった。

「よお。お前がオレ達を宇宙に放ってくれやがった女か」

 見下すような視線を向ける京。舞子は彼の後ろに隠れるようにおどおどしながらこちらの様子を伺っている。

「無事だと信じておりましたわ、お二人とも」

 ニコリと微笑んだリョウカは手際よくミーアの首根っこを捕まえて京へと差し出した。

 慌て出すミーアを京は品定めするかのようにジロジロと眺め回して「いい女だが趣味じゃねえな」と言い放ち、舞子を前に押し出す。

 舞子は驚きながらも変な間を置いて一人「わかりました」と頷くと、「し、失礼します」と言ってミーアの頭に両手を置いた。

 するとミーアは尻餅をついた。

「あ……な、何か気分が楽に……?」

「だ、大丈夫ですか? どうやらダーク星人に心を支配されてたそうで、今浄化した……みたいです」

 ――ミーアは操られていた?

 だから二人を宇宙に放り出したというのか。そして今、舞子の力でダーク星人の力をやっつけたと?

「だってさ、ジオ。原因はダーク星人みたいだ。昨日からミーアの様子がおかしいとは思ってたんだけど」

 舞子達のやり取りを見てセイガは呆然としたままのジオの腕を払う。ハッとしたジオはすぐに舞子へと駆け出した。

「ま、舞子さま! ご無事でしたか!」

「し、心配掛けて、ごめんなさい……」

「ジオとオババ様がお二人の気配を察知できなかったらしいのですが、それもダーク星人の仕業でしょうか?」

 リョウカの問いに、京は「だろうな」と溜め息をつきながら頷いた。

 しかしそれより何より聞きたいことがある。

「っていうか、宇宙に放り出されたって本当!?」

「ああ」と事も無げに再度頷かれる。

 普通は死ぬだろう。

「あ、安久津くんと初代救世主さんの力で、何とか地球に着いたんです……」

「それで、どうやってシロ星に戻ってきたんですか?」

 確かに、彼らが宇宙船を持っているはずもない。

 ジオの問いに彼女は困ったように首を傾げた。

「あの、前にジオくんとセイガさんと行った学校の近くの廃ビルの中にね、でっかい魔方陣みたいなのがあって……そこに立ったらいつの間にか、シロ星に……」

「オレの力だ。相当パワーを消費するからあんま使いたくないが、一瞬で行き来できるんだぜ。すげえだろ?」

 自慢気な京に素直に感心した。本当にすごい。そんなのシロ星の技術力でもできまい。

「……舞子さま、安久津に何かされませんでしたか?」

 真剣に聞いてくるジオに、舞子は焦ったように首をブンブンと横に振った。

「お前……水を差すようなこと言うなよ。寧ろ感謝してもらいたいのはこっちなんだぜ? 笹森が嵌められそうになったのを助けてやったんだから。なあ、笹森」

 同意を求められ、舞子は今度は首をブンブンと縦に振る。

「あら、では二人きりで宇宙旅行をしてきたのですね? ふふ、妬けますわ」

 妖艶な笑みを浮かべてリョウカは目を細めた。京もニヤリと笑って舞子の肩に手を回す。

「そうだな、情熱的に抱き締め合った仲だしな?」

 舞子は頬をひきつらせて青ざめる。

 可哀想に、完全に遊ばれている。

 が、ジオは本気にしたようだ。

「安久津! お前まさか無理矢理……!」

『フッ、お前は本当に舞子のことを想っているのだな』

 京に掴みかかろうとした瞬間、聞き覚えのない女の声が頭に響いてきた。

「何だよ、初代。他人にも声を聞かせられたのかよ」

『あえてする必要がなかっただけだ。しかし、我も皆と話がしたくなった』

 ――しょ、初代ってまさか、救世主!?

「まあ光栄ですわ、初代救世主様のお声が聞けるだなんて。男性でなくて残念ですけれど」

「本当本当。まさか女性だったとは。いやー、僕としては嬉しい限りです」

「あんたら失礼でしょーが!?」

 リョウカとセイガに盛大に突っ込むルイ。

『ハハハ、面白いなお前達は』

「つ、つまらない人間ですみません……」

「あんたは卑屈すぎ!?」

 思わず舞子にも突っ込むが、思えば彼女との初会話がこれってどうなんだ。

「ほ、本当に初代救世主様で……?」

『ああ、そうだ。我が子孫、ジオよ』

 呆然としているジオに、初代救世主ははっきりと答えた。

『舞子、聞いてくれ。ジオは子孫の中でも特に、我とのシンクロ率が高かったようでな、気持ちを理解し合うことができたのだ』

「え……」

 話を振られるとは思ってなかったのだろう。舞子はびくりと反応する。

『力が目覚めていないとはいえ、舞子の成長は我も見守っていた。だから、お前が悲しい時、嬉しい時、我も同じ気持ちになっていた』

「それで二人とも気持ちがシンクロして……」

 何やらジオは納得している。

『ジオもそれを感じ取って心配してくれたのだろう? 地球まで舞子の様子を何度か見に来てくれたな』

「なななななっ!?」

 先程のミーアに劣らず、半端ない動揺っぷりである。

「オババ様の話によれば、アースコープで舞子ちゃんの様子も毎日のように覗いてたみたいだしね」

 セイガはからかうようにジオの背中をバシバシと叩いた。

『ああ、それも我にはわかっていた。舞子は気付きもしなかっただろうがな』

 初代救世主の声はどこか楽しそうである。

 舞子は顔を真っ赤にして反応に困っているようだった。

 そりゃそうだろう。自分に対してのストーカー行為を暴露されても対処に困る。

 それにしても、今の話だと随分と前からジオは舞子に入れ込んでいたということになる。ストーカーまでするほどに。

 ルイは何となくイラッとしていると、リョウカと目が合ってしまう。

 何となく気まずくなるが、彼女は優しく微笑むだけですぐ視線を外した。

「ジオがストーカー気質だということもわかったところで、もう一つ解決したいことがあるのだけれど」

「お、おれのことは解決してない……!」

 ジオはむせながらも抗議し、舞子に向き直る。

「ま、舞子さま! 気持ち悪いと思われても仕方ないと思ってます! でも、おれは……舞子さまの悲しい気持ちばかりが流れ込んでくるもんだから、ほっとけなくて……! 初めて笑顔を見た時は、おれも幸せな気持ちになったし……!」

 そこでジオは言葉を詰まらせて俯いた。こんなに真っ赤な顔のジオは初めて見る。

 舞子もまた真っ赤な顔でワンピースの裾をギュッと掴んだ。

「き、気持ち悪いなんて、思ってないよ! こ、こっちこそ、悲しい気持ちを伝えてばかりでごめんなさい……。そ、それと……」

 何か決意したように、舞子はジオを見る。

「し、心配してくれて、ありがとう……!」

 ジオは驚いたように顔を上げた。

「ま、舞子さま……!」

 ――なんだこの状況。っつーか、かゆい。会話がかゆい。

 一応空気は読んで、心の中だけで突っ込んでおく。

 リョウカは苦笑した。

「解決したみたいね。じゃあ放っておきっぱなしだったミーアのことだけれど……」

 すっかり忘れていた。

 静かだったミーアに視線を戻すと、彼女は何故かまた泣き出した。

「う、うらやましい! あんなに想われてるなんてぇ!」

(ひが)みかい」

 まあ今のミーアには気の毒な光景かもしれない。

「ミーアとセイガも、しっかり話をつけるべきだと思うのよ。中途半端な状態だからダーク星人につけこまれるんだわ」

 リョウカの言う通りである。

「セイガ! あんたのせいでもあるんだから、ちゃんとミーアの気持ちに応えてやってよ!」

「や、やだ! 聞きたくない!」

 せっかく決着をつけさせてやろうとしてるのに、ミーアは完全に腰が引けている。

 しかしセイガはこちらに近付いてきた。

 珍しく真剣な表情だ。

「俺も責任は感じてるよ」

 無意識なのか、一人称が変わっている。

「ミーア」

 呼び掛けられ、彼女は肩を震わせる。

「ごめん、君のことは好きになれない。――これからも、ずっと」

「っ!」

 ミーアは俯く。

「……わかってた。セイガはいつも、誰に対しても、そうだもんね」

「……ああ、そうだね」

 気まずい沈黙。

 しかし彼女は袖口で涙をゴシゴシと振り払って顔を上げた。

「……今まで、ありがとう。あと、救世主のお二人も、迷惑掛けて、ごめんなさい」

 彼女は一礼し「帰ります」とだけ告げてその場を去ってゆく。

「……いいの? あなたのこと、それなりに理解してくれてそうだったのに」

 リョウカはどこか不服そうだったが、セイガはいつもの詐欺まがいの爽やかな笑顔を浮かべた。

「ミーアにはもっと相応しい男が見つかるさ」

『……青春だな』

 青春なのか。セイガが最低だということしかわからなかったが、初代救世主の言葉に、どこかしんみりとした雰囲気に浸る。


「あんたら何やってんですか」


 しかし突如、雰囲気ぶち壊しの冷めた声が響く。

 振り向けば、ルイのチームメンバーの一人、サナが佇んでいた。

「サナ! え~っと、な、何でここにいんの?」

 ルイは慌てながら問い掛ける。

「いや、ルイ達を見送ろうかと長老の家に行ったら、あの人すんごい死相が出てるし。探しに来たら、恋愛イベントと失恋イベント発生してるし」

 長老のこともすっかり忘れていた。

 救世主が戻ったことを早く報告しなければ長老が可哀想だ。最近の心労でぶっ倒れること間違いなしである。

「ふあ~あ。まあ面白いモンも見れたし、面倒臭えけどダーク星に行くか」

「楽しんでたんかい! ってか面倒とか言うな!」

 あくびしながら軽い調子で答える京に突っ込む。

「や、やっぱり、本当に行くんだね……」

「まだ覚悟決めてなかったんかい!?」

 尻込みする舞子にも突っ込んでやる。

「……ねえ、本当に任せていいんだよね?」

 サナの心配はごもっとも。

 しかしルイは彼女にこう言ってやるしかなかった。

「こんな救世主達だけどさ――み、皆には黙っといてくんない?」

「………………」

 その時のサナの冷たい視線を、ルイは一生忘れることができなかったという。

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