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救世主の欺瞞

 ルイは同世代で集った、とあるチームのリーダーとして慕われていた。要は不良集団の一つである。

 別になりたくてなったわけでもないのだが、学校などで親しかった友人達と接している内に自然とそういう位置付けにされてしまったのだ。

 嫌なわけでもなかったので、大人しくその地位を受け入れているが、決してその仲間を手下とか子分なんて思ったことはない。気のいい友人として皆と付き合っているつもりだ。

 だからなのか、他のチームからは少しバカにされている節がある。ルイのチームは他に比べれば少人数で構成されており、 八名しかいないのも要因の一つだろう。ルイ以外はパワーも強くない為、喧嘩も弱い。

 そんなこんなで、周りのチームとはあまり接点を持たないようにしていたのだが――

「ルイ~! おれスッゲー悔しいよ!」

 ルイのチームの一人、マルクは地団駄を踏みながら拳をブンブンと振り回す。

「何度も聞いたっつーの。あんたはとにかく家で安静にしてそのケガを治せ!」

 マルクの脇腹を軽く小突いてやると、大げさに痛がってしゃがみ込んだ。

 彼はルイの一つ後輩で、少々生意気なクルクル天然パーマの少年だ。普段は明るくて笑ってばかりいる奴なのだが、今回の件は相当腹に据えかねたらしい。

 無理もない。ルイが救世主探しでシロ星を離れていた間、ジオのチームのボウとちょっとした衝突があったらしく、ボコボコにやられ負けたらしいのだ。

 顔や体に残る無数の青タンが痛々しい。本来なら家ではなく病院に入院してもいいぐらいのケガらしいのだが、マルクはジッとしているのが性に合わないと言って、ルイ達の溜まり場となっている人気のないこの倉庫にやって来たのだった。

 今はチームの全員がこの場に集まっていた。

「……福武さんに話はつけてきたの?」

 チームの一人、同い年のクールな少女サナは、長い黒髪を掻き上げて言った。

 ルイは「うっ」と呻く。

 ジオに落とし前をつけろと言ってはみたものの、手下じゃないとサラリとかわされ、救世主を連れ戻すとか何とかで、それどころではなくなってしまったのだ。

「あ~、また仕事が入ったみたいだから、これからこれから」

 一応チームリーダーとしてのプライドから、ヘラヘラ笑って何とか誤魔化す。

「目が泳いでるけど」

「……そ、そう?」

 ジト目で見られ、サッと視線を逸らす。

 ――あたしの迫真の演技を見破るとはさすがサナ。

「ルイ姉も、あの孤高気取りの福武ジオには敵わないってわけか~」

 金髪ポニーテールの後輩――チェッタはわざとらしく肩を落とす。

「……そうじゃないっつの」

 否定しつつも、内心苦手であることを認めている自分がいた。安久津京もそうなのだが、ジオも同じく、ルイにとって苦手な不良のタイプである。京とは少し違うのだが、斜に構えてることには変わりない。

 まあ不良なんて世間に対して斜に構えてる者ばかりなのだが、何というか少し変わっているのだ。とりあえず取っ付きにくいのである。現にジオは周りから怖がられている。

 彼とは同じトップクラスと呼ばれてはいるものの、お互いチームリーダーでもある為、何となく距離を置いてしまっているのもある。だから会話するにしても少し刺々しい態度になってしまうのだ。

 それに人のことは言えないが、ジオはチームリーダーとしての自覚がまるでない。一番良くないのは彼の手下共ではあるのだが。ジオのもとには何故か根っからの下衆(げす)が多く集まる。しかしジオは基本、彼らのすることに関与しない。手下とも仲間とも認めてもいない。

 その態度が彼らを増長させるのだ。今回の件に関しても、ボウはジオの名を盾に、弱いもの苛めが最近激しくなっていることが原因だった。それを止めようとしてマルクが負傷したわけである。

「ルイ~! おれの仇とってくれよ~!」

 マルクがまたも騒ぎ出す。

 確かに、このままボウを野放しにするのは頂けない。ルイであれば、ボウをこらしめることは簡単だ。しかしボウは相当根に持つタイプなので、以前ちょこっとだけ痛い目に合わせた際、仲間にも手を出そうとしてきたことがある。幸いというべきか長老に見つかり、お互いに干されるという形に落ち着いたのだが。

 だからこそ、本音を言えばジオに任せたい。が、どういうわけか、ジオは救世主にうつつを抜かしているように見えた。

 というよりも、〈笹森舞子〉に。

 様付けで呼んでいるのには驚いたものだ。今まで見てきたジオの人格からはあり得ないことだとルイは思った。

 そして、それが何故だか腹が立って仕方がない。

「……マルク。悪いけど、とりあえず仇討つのはダーク星人のことが終わってからにしよう」

 思い切り頬を膨らませて不満気な顔をするマルク。

 そんな顔をされても、今はボウよりもダーク星人のほうが厄介な相手であり、何とかしなければならない対象だ。

 サナは「確かに今はそっちが優先か」と無表情ながらも同意してくれた。

「そういや~さ、結局、モノホンの救世主はわかったん?」

 チェッタはルイの顔を覗き込んだ。チームの皆も注目する。

 一瞬ルイは悩む。サナなら理解できると思うが、他のチェッタやマルク達では説明したところで、理解できない気がする。基本的に勉強できないおバカ集団なのだ。

「結果だけ言えば、あたし達が連れて来た安久津京にシロ星を任せることになった」

 端的に説明すると、チェッタは「へえ~」とまったく興味なさげに相槌を打った。他の皆も反応が薄い。

「物凄く説明を省かれた気がするんだけど」

 唯一、サナだけが的確なことを言った。

「ややこしいんだ。察してよ」

 彼女は何か言いたそうだったが、それ以上は追及してこなかった。とりあえず諦めてくれたようだ。

「ってことで、今日は解散ね。ごめん、マルク」

「……ルイの裏切り者ぉ~」

 めちゃめちゃ恨みがましい視線を向けられる。

 が、今は下手に問題を起こしてややこしい事態になるのは避けたい。ルイはヒラヒラと手を振って「あとは任せた!」とサナ達を残して倉庫を出た。

「さてと、あたしの仕事をしないとね」

 一度伸びをしてからルイは精神を集中する。

 ――いる。

 安久津京の気配だ。この星に来てから彼は気配を消すことをやめた。寧ろわざと力を露呈しているようだった。ダーク星人への威嚇のつもりなのかもしれない。

 そして相変わらずシロ星をウロウロしているらしい。皆はまるでヒーローのように彼を扱うのでいい気になっているに違いない。

 ルイはスカートを靡かせ走った。もちろん目的地は京のいるところである。

 シロ星は小さく、人口は少ない。日本の半分にも満たないかもしれない。町がいくつかあり、ルイ達のいるこの町は地球で言う首都のような場所だ。名前もそのまま〈シュト〉と名付けられている。

 パワーの訓練をする学校もこの星で一番優秀なのである。その為、親元を離れてこの町の学校に通う者は多い。ルイやリョウカも例外ではない。

 ルイはほぼ十年この町に住んでおり、裏道や近道についてとても詳しかった。喧嘩沙汰が起きた時に逃げるルートを確保する必要性もあったからである。

 人気のない建物の裏道など狭い通路を走り抜けると、視界が開けた。町外れにある河原に出たのだった。

 サラサラと流れる川を眺めていた茶髪の少年が、こちらを振り返る。

「よお、ストーカー」

「ただの監視だっつーの」

 バカにしたような笑みを見て、ルイは反論する。

 長老の指示だ。ジオ達が笹森舞子を連れ戻すまで、彼の監視を頼まれたのである。

「オレはまだ信用されてねぇわけだ」

 信用されていると思うほうがおかしい。

 ジオの話によれば、京は救世主の力を強引に自分の中に閉じ込めている状態なのだし、彼を敵だと認識しても間違いではない気がする。とはいえ、ジオの話も信用できるのかは謎だ。

 ルイとしては全てが寝耳に水で、もはや判断は不能である。しかしオババ様は信用に足る人物であると長年の付き合いでわかる。だから少なくとも京よりは、彼女の孫であるジオを信じられる。

「そういや、あのジオって奴、救世主の子孫か?」

「……何でわかんの?」

「オレのこと敵視してやがったから、救世主の状態を少なからず知ってるんだと踏んでた。子孫ならそれは可能だ。奴が誰かに聞いたって可能性も考えたが――あのオレを見る目、何となく救世主に似てる気がしてな」

 京はまるで自嘲するように薄ら笑った。

 つまりは――認めるのか。自分が救世主の力を独り占めしていることを。

「っていうか、救世主を見たことあるの?」

 京がキセキ星人だった時も、救世主はすでにパワーのみの存在だったはずだ。

「残像みたいなもんだけどな」

「ざ、残像?」

「本人はとっくの昔に死んでるから救世主そのものじゃないが、救世主のパワーが記憶している姿が映し出されてたんだろうよ」

「……そういえば、声が聞こえたって言ってたけど、その残像は喋れるの?」

「ああ、喋れる。人格があるからほとんど本人と変わらねえかもな。だが、オレ達みたいな人間とは違う。他人に宿らないと存在も認識されない、ただの哀れな〈パワー〉だ」

 冷たく言い切った。

 しかし、よくよく考えると救世主はすごい。シロ星を守る為に、己の力を何百年も何千年も存在させてきたのだから。

 それほどまでに、シロ星を気に入っていたのだろうか。

 不意に目の前の男の目的――いや、今現在の行動の理由が気に掛かった。

 単にダーク星人を完全に打ち負かすことができず悔しかったから。そんな復讐のような気持ちだけで動いているのか。

「……ねえ、あんたはシロ星を守りたくて転生してきた、ってわけじゃあないんだよね? 本当に復讐したくて今まで生きてきたの?」

 意外な質問だったのか、京は少し目を見開いた。

 しかしすぐに厭らしい笑みへと変わる。

「なんだ、オレに興味が湧いてきたのか?」

「興味じゃなくてただの疑問! 救世主には負けるけど、あんただって五百年も転生してきたんでしょ? よくわかんないけどさ、それって結構大変なことじゃないの?」

 京は曇った空を見上げた。

「まあ……短くはなかったな」

 集中してないと聞き逃しそうなほど静かに、彼はぽつりと漏らした。

 本当にあの安久津京か。そう疑いたくなるくらい、何だかしおらしい態度だった。

「でも、悠々自適に生きてきたしな。なかなか面白い人生を過ごしてきたぜ」

「――あたしはごめんだね。自分が何なのかわからなくなりそうだし。……ま、ダーク星人によっぽどの恨みがあるなら話は別だけど」

 論点がズレそうだったので後半の部分を少し語気を強めて言うと、京はククッと笑った。

「ちょっとした約束があるんだよ」

「……約束ぅ?」

 胡散臭い。ものすごく胡散臭い。大体最初は、自分の為に力は使うとか言っていなかっただろうか。

「一体、誰とのさ?」

「そんな妬くなよ。女じゃねえから安心しろ」

「見当違いも甚だしいからね!?」

 京は何が楽しいのかカラカラと笑う。

 しかし急にピタリと笑いを止めると、町の方角に視線を向けた。

「……ダーク星人」

 小さな呟きに聞き返そうとすると、京はすぐさまルイを横切って町へと走り出した。

「ちょ、待ってよ!」

 ルイも京の背中を追う。

 ――は、速いっつーの!

 運動神経には自信のあったルイだが、京を見失わないようにするだけで精一杯だ。

 追い付くどころか徐々に引き離されそうになったところで、ようやく京が足を止めた。

 町に辿り着くと、そこには大勢の町民が集まっていた。

 その奥には――四体のダーク星人。

 ルイはまさかと驚き、冷や汗が流れた。

 そしてその内の一体が肩に抱えたクルクル天然パーマの少年に目が留まる。

「マ、マルク!?」

 項垂れ、気を失っているようだ。

「お前の知り合いか?」

 京がこちらを振り返る。あまりの急展開に、ルイは言葉を発せずブンブンと首を縦に振った。

「あの調子のいい筋肉男も捕まってるな」

 言われて気付く。もう一体のダーク星人はボウを担いでいる。

 その時、背後から名前を叫ぶように呼ばれた。

 声の主は深刻そうな顔のサナだった。チェッタもいる。

「ごめん、ルイ。ちょっと目を離した隙にマルクが……」

「一体、何があってあんなことにっ?」

 チェッタは「マルクがバカなんだぁ~!」と泣きわめいた。

 ルイは慌てて彼女を宥め、サナに視線を送る。

「マルクの奴、思ってたよりも相当ボウのこと恨んでたみたいで、一人で仕返しに行ったんだよ。私らも追いかけたんだけど、そしたらさ、そこに運悪くダーク星人が現れて……」

 ああなったというわけか。

 視線を戻すと、皆がざわざわと騒ぎ出す。ダーク星人四体はマルクとボウを担いだまま、宙へと浮いたのだ。

「ワレワレは、この二人を人質とすル」

 ボウは意識があるらしく、「離せー!」などと騒ぎ立てているが、ダーク星人はビクともしない。

「おいおい、話が違うんじゃねえか?」

 皆の視線が声を発した京に向いた。

「ダークスモッグがシロ星を覆うまでに時間を与えるって言ったんだろ?」

「……状況は変わるものダ」

 四体いる中のどれが喋っているのかわからないが、相変わらず無機質に答えた。

 京は鼻で笑い、赤く輝く剣を手のひらから生み出した。

「どんだけビビってんだよ。今ここで勝負つけたっていいんだぜ」

「……聞いていなかったのカ? ワレワレに手を下せば、人質が死ぬゾ」

「オレは構わねえけどな」

「何言ってんの!?」

「見捨てないで下さいぃー!」

 すかさず突っ込むルイとボウ。しかし京は一切反応しない。どころか、剣を構えて今にも斬り掛かりそうな勢いだ。

「本気カ……?」

 僅かにダーク星人に動揺の色が浮かんだ……ような気がする。

「待たれよ!!」

 京が飛び出そうとした瞬間、怒りにも似た男の声が大きく響き渡った。

 ――長老だ。

 集まっていた町民の中にいたのだろう、彼は厳しい顔つきで佇んでいた。

「京殿。ここはどうか――穏便に」

 どこか追いすがるような言葉に、京は動きを止めた。

 二人は睨み合うように視線を交わす。

 周りはそれを見守るようにしんと静まり返っていた。

 長いようで短い時間が経った後、程なくして京の手から赤い剣は消える。

「人質は……こいつらだけじゃねえぞ」

 低く呟かれた言葉に、長老は眉をひそめた。

「どういう……ことですかな?」

「相変わらず恐ろしい男ダ。確かに、前にダーク星を襲ってきたシロ星人も、まだワレワレの手中にあル」

 答えたのは京ではなく、ダーク星人だ。すると周りは歓喜の声を上げる者や嗚咽を漏らす者達で一気にざわついた。

 ダーク星に乗り込み行方知れずとなっていたシロ星人達。

 ――生きてたんだ。

 ルイも少なからず安堵する。

 だが人質である以上、いつ殺されるかわかったものではない。

 京はぼりぼりと茶髪頭を掻いた。

「恐ろしいのはそっちだろ。切り札いくつ持ってやがるんだ」

 ダーク星人はただ痙攣した。

「せいぜい絶望するがいイ。……この二人は、借り行くゾ」

 いつの間にか上空に黒い宇宙船が浮かんでいた。

 四体は吸い込まれるようにその宇宙船へと飛び立つ。

「ぎゃー! ジオさん! 助けてくれー!」

「マ、マルク!!」

 ボウが何やら叫んでいるが、もちろん取り合わずにマルクの名だけを呼ぶルイ。

 手を伸ばすが、届くはずもない。

 思わず長老を見るのだが、目を瞑り、重苦しく首を横に振るだけだった。

 四体が宇宙船に乗り込み終わると、あっという間に空から消えてしまった。

 ――何で、マルクが!?

 ルイは拳を握り締め、京に向き直る。

「安久津京! あんたシロ星を救ってくれるんでしょ!? 人質も助けてくれるんだよね!?」

 その言葉で、皆の期待の視線が彼に向けられる。

 しかし京は、ポッケに手を突っ込んで「はあ?」とまるで予想外なことを言われたかのように、わざとらしく目を丸くした。

 そしてすぐにいつもの厭らしい笑みへと戻る。

「おいおい、勘違いするなよ。あくまでもオレの目的はダーク星の破壊と全滅だ。シロ星の救済はそれに伴うついでのもんだ。もう方法も考えてある。悪いが、人質もろともオレのパワーで破壊させてもらう」

「なっ!?」

 ――とんだ欺瞞じゃないか。

 ルイは押し黙り、考える。

 この男なら本当に人質ごと殺しかねない。いや、絶対に実行するだろう。

 どうにか説得をしてみようか。でもどうやって?

 ダメだ。まともに話が通じる気がしない。この男に義理人情という概念があるのかも謎だ。

 ならば、ここは――

「その計画は、いつ実行する予定なの?」

 ルイは心を鎮めて、京を見据えた。

「もう明日にでも可能だぜ」

 それはさすがに早過ぎる。

「……三日。三日だけ待って!」

「……大方の予想はつくが、一応聞いとく。何をするつもりだ?」

 ルイは腰に手を当て、仁王立ちになる。

「決まってんでしょ! 人質になった人達を連れ戻す!!」

 大見得切って言ってやると、また周りの町民達が騒ぎ出す。

 無理だと非難する者、さすがはルイだと称賛する者に分かれている。チェッタは「さすがルイ姉!」と称賛側に付いたようだ。サナは読めない表情のまま黙っている。

 京は非常に面倒臭そうに溜め息をついた。

「……三日だな。いいぜ、待ってやるよ」

 京の言葉にガッツポーズをするルイだが、「ま、待て、ルイ!」と長老が声を上げる。

「何の勝算もないんだろう? 行かせるわけにはいかん!」

「長老! このまま人質を見殺しにするつもりですか!?」

「そうは言っていない! せめてもう一人の救世主様が戻ってからでも……!」

「シロ星に来た初日に帰る救世主のどこに希望を持てってんですか!? 力も覚醒してないんじゃ、安久津京より無能です!」

「オレは無能じゃねえよ」

「とにかく!!」

 京の横やりは無視して、ルイは人差し指をビシリッ! と長老に向けた。

「あたしは必ず、マルク達を助けてみせます!!」

 町民の一部が、ワー! と歓声を上げた。

「俺も行くぜ、ルイちゃん!」

「ワシだって負けてられん!」

「力を合わせて助けに行こうぜ!」

 何人かの男性陣が賛同してくれる。

「ありがとう、オッチャン達! 長老! もう止めても無駄だからね!」

 長老は難しい顔をしたまま、返事はしなかった。代わりに「愚かな……」と、小さな嘆きの声が聞こえた気がしたが無視を決め込む。

 あの時、ちゃんとマルクの話を聞いて怒りを収めてやれば、こんなことにはならなかったかもしれない。仮にもチームリーダーと呼ばれる立場にいるのだから、全ては自分の責任である。

 そう考えてから、ルイは気合いを入れる為に右手の拳を左手にパシッと当てて叩いた。

「待ってなさいよぉ! ダーク星人!」

 ルイは暗い空を睨み付けたのだった。

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