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天国も現世も変わらない

突然ではあるが、俺の名前は野村孝二と言う。犬にでも付けるような名前が子供に付けられる昨今では、なかなか珍しい、いや、古臭いと言っても過言ではない名前である。年は十八、高校三年生を卒業しようと言う時に、俺の人生はいきなり終わりを迎えてしまった。



俺の人生を終わらせる原因は、意中の子にかっこいいところを見せようと、五階建てのビルからビニール紐でバンジージャンプを披露したことから始まる。今考えれば、愚かを通り越して阿呆の領域だ。バンジージャンプで意中の子が振り向くなど、どこかの東南アジアの部族でもない限り、ありえないことだ。そんなこともわからないで飛び降りてしまった俺は、心底の阿呆であることは言うまでもない。この阿呆に幸いしたのは、死ぬ瞬間の記憶がないことと、目の前に自称死者を案内する事務員と名乗る、スーツ姿の金髪ロリ巨乳の天使様が、俺の手を引いて笑顔で接してくれていることだ。


「私も神様も忙しい身分なのに、こんな暇な死人の手を引かないといけないなんて、貴方、自分の犯したことの意味をわかっているの?」



むう、この天使、顔に似合わずかなり辛辣な一言を言い放ちよる。しかし、いつまでこのコンクリートでできたトンネルを歩き続けなければならないのだろうか。隣に天使でもいなければ、歩く気力すら沸き起こらないだろう。しかしこの天使豊満である、天使かわいいよ天使。


「貴方、生前は童貞だったでしょ。目付きもイヤらしいし、私、貴方みたいな変態ロリコン野郎、神様の前に連れていきたくないんだけど」


「何を仰る。私のような自分に正直な者が、そのように言われる由縁などあるはずがない。ところで、私とス〇ベしませんか?

私もう死んでいますし、打ち止めの心配なんてありませんよ?」


「黙れ童貞」



ふう、今ので当分おかずには困らないな。それにこの退屈なトンネルも、そろそろ抜けられそうだ。終わりが見えないかと思ったが、あの眩い光は、間違いなく出口に違いない。そうさ、あの光の先にはロリロリでこの天使よりは優しい天使たちが俺の登場を待っているに違いない。待っていろよ、天国!


俺は期待に胸を膨らませつつ、天使に誘われるように自ら光に包まれていった。だが、現世がそう上手くいかないように、あの世もうまく行かないようだ。



光を抜けた先には、俺の考えていたロリロリワールドではなく、まるでどこかの会社のオフィスのような場所だった。周りを見れば、様々なロリ天使たちが、パソコン相手にカタカタ事務員のように働いている。なんだこれ、俺の想像していた天国とは相反するではないか。誰だ、天国をこんなクソにしたのは、責任者はどこだ。


「死者番号Qー17、連れてきましたよ、神様」



仕事をしている天使たちを見渡せるような位置に、ふんぞり返って資料を読む仏頂面のおっさんがいた。どうやら金髪ロリはこのおっさんに声をかけたらしい。しかし、このおっさんが神様だと、こんな目つきの悪い無精髭野郎が神?まさに神のいたずらだ。


「大喜利なら座布団一枚だな。だが生憎、私は大喜利が大嫌いだ」


おっさんが資料から目を離し、こちらを睨み始めた。俺、このおっさん嫌いだ。しかも心を読むとは、さらに減点だ。


「ほう、気が合うな。君の第一印象は最悪そのものだよ。さすがビニール紐でバンジージャンプをやらかす男だ、脱帽だよ」


「お褒めの言葉有難うございます。しかしなんですかこの異常な空間は。あんな可愛らしいロリ天使達を、無機質なパソコンの前に鎮座させるなど、豪語同断です。労働基準法違反ですよ」


「ここには労働基準法などないし、彼女達は君が想像しているよりも年寄りだよ。君を連れてきた彼女は今年で二万歳ほどだ。彼女達に対する言葉遣いは気をつけたまえ」



なに、こんなにかわいい金髪ロリが二万歳だというのか。ありえない、こんな詐欺が通用するというのか。俺は表情筋の全てを駆使して驚きを顕にしたい衝動を抑え、平静を装うが、金髪ロリババアに小悪魔のような笑で、残念でした、と言われてしまった。くそ、かわいい。


「おっと、こんなくだらない話をしている場合ではない。早速本題に入らなければな。君のようなどうしようもない阿呆でも、死ぬには若過ぎるから、君には特別措置を取らなければならない、よって君には転生をしてもらう、とでも言うと思ったか?」


俺がもしその手の読み物を嗜んでいたとすれば、そう考えただろう。しかし、あの退屈な現世に転生したがる奴が居るとすれば、とんだマゾか、あの有名なシェイクスピアの作中に出てくる名言「赤ん坊が産まれてすぐ泣くのは、この世に絶望しているからだ」というフレーズを知らないに違いない。


「残念だが、転生とは本来君よりも徳を積んだ聖人君子にのみ許されるのだよ。私の知る限りでは、転生が許された者は熱心なクリスチャンか僧侶くらいだ。現世では転生したらハーレムだのチートだの、俗世らしい物語が流行っているようだが、そんな都合のいい話、あるわけないだろ。最初にあんな物語を考えた者は、ある意味銃器を開発した者並に罪深い。君もそう思わんか?」


思うも何も、まくし立てるように言うから途中から聞いていなかった。しかし、神様の話というのはなかなか長いものだな。


「おっと、また話がずれてしまった、私の悪い癖だ。話を戻すと、君に転生などない。なので、君にはここで働いてもらう」


「え、働くんですか?」


「そうとも、周りには君の言うロリロリな天使達に囲まれた職場だぞ?よかったな、まさに天国だぞ?」


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