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新世紀の殉教者

名もなき道の果てで

作者: keisei1

 僕は長い夜を越えてここに辿り着いた


 決して1日や2日でここに来たんじゃない


 僕はこれまでに夢の話は全部したよ


 それでも僕に振り返ってくれる人など誰一人としていなかった


 僕は理想は全て売り払ったし


 やるべきことは全てやった


 それでも僕の心の傷を拭おうとしてくれる人は誰一人としていなかった


 こんな惨憺たる日々を一体誰が癒してくれると言うんだい?



 今日も朝から電話は鳴りっぱなしでやまない


 彼女が今日も僕に多くを期待しているらしい


 僕だっていつもヒーローってわけにもいなかい


 休みたい時は休みたいし


 眠りたい時はぐっすり眠りたい


 なのに彼女はいつも僕に完璧を求める


 これ以上「世捨て人気質」の僕に何を求めるって言うんだい?


 君はこんな未完成な僕に一体何を期待してるって言うんだい? 


 僕はあと1日、2日もすれば君の前からいなくなってしまうだろう


 だから僕を自由にしておくれ


 この名もなき道の果てで

 


 僕は長い間地下室で暮らしてきた


 決していつも陽の当たる場所にいたわけじゃない


 僕はこれまでに学ぶべきことは全て学んだ


 それでも人は言うんだ 君の人生ほど楽なものはないってね


 僕は自分の少年性は全部売り払った


 無から始めて無に帰った気分でもあるんだよ


 それでも人は言うんだ 君の人生ほど容易いものはないってね


 こんな悲劇性に満ちた人生を誰が癒してくれるって言うんだい?



 今日も朝から携帯は彼女からのメールで一杯だ


 彼女は今日も僕から愛の言葉を引き出したいらしい


 前にも言ったよね


 僕はいつもカッコいい男でなんていられないって


 なのに君はいつも僕にクールでいて欲しいと求める


 僕だって旅したい時は旅したいし


 出掛けたい時はゆっくり出掛けたい


 これ以上「厭世家気質」の僕に何を求めるって言うんだい?


 君はこんな未熟な僕に一体何を期待してるって言うんだい?


 僕はもうあと1、2時間もすれば君の前からいなくなってしまうだろう


 だから僕を自由にしておくれ


 この名もなき道の果てで

 


 光が明滅していく


 反響する音

 

 蘇る記憶


 思い出の空


 思い出の海


 思い出の太陽


 思い出の月


 波打ちめくるめく宇宙の鼓動を聴いて


 お願いだから


 僕を自由にしておくれ

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