第2話 現状確認2
「……は?」
> 状態異常:混乱になりました
目の前に表示された"ステータス"を把握しきる前に、ボクは混乱状態となった。
い、いろんな意味で意味が分からない。なんだコレ!?
というかごく自然に≪確認≫をしたけど、"ステータス"ってナニ!?
『≪確認≫
現在の状態や能力、装備、スキルを数値化して一覧で表示する魔法。対象は自分自身のみ』
気を利かせて"勇者の記憶"が説明してくれるが、残念ながら「あ、そうなの?」と素直に納得できるほど、ボクは神経は図太くなかった。
「ととととりあえず落ち着こう! すーはー! すーはー! ひっひっふー! ひっひっふー!」
混乱を収めるべく、深呼吸を繰り返す。
何かが違うような気がしたが、気にしなかった。
> 状態異常:混乱が解除されました。
「ふー……」
とりあえず落ち着けた様だ。
「……まあ、ステータスというのはどういう物かは分かった」
といか、落ち着いて見ればかなり便利だ。現状を確認するにはこれ以上ないほど有効な魔法だろう。
"勇者の記憶"を探ってみると、≪確認≫の魔法は、勇者が無意識や条件反射で使ってしまうほど多用していた魔法らしい。
「なるほど。だからか……」
直接的にボクの"意志"――精神に対して、"勇者の記憶"が影響を与えることは無い。
しかし、直接影響を受けなくても、"勇者の記憶"が語る知識の影響は避けられないように、不可避の影響力も存在する。
その中のひとつが、"無意識の行動"だ。が、この"無意識の行動"は、不可避というより≪写し身≫に備わっている必要能力に近い。
ボクの元々の体は不定形。人間とは見た目どころか体内の組織から異なる。
故に姿形だけをコピーした場合、そのままだと動くことすら出来ないだろう。
今ボクが動けているのは、体の動作を含めた"無意識の行動"もコピーしているからだ。
先の≪確認≫も、そのコピーした"無意識の行動"によるものだった。
「ううむ……今後もこういうことがあるかもしれないな」
突然体が操られるようなものなので気分は良くない。しかし、≪写し身≫の副作用のようなものなので、受け入れるしかないだろう。
そう自分を納得させたところで、ボクは改めてステータスに目を向けた。
そこには、ボク自身も知らない様な情報が分かり易く羅列されている。早速、上から見ていくことにしよう。
まずは名前だ。"クロノス=カミシロ=アイゼンリヒト(偽)"
これはコピーした勇者の名前だ。もちろん"(偽)"は除くね。
次に 種族。"ドッペルゲンガー(純人族)"
予想通りドッペルゲンガーだった。まあ、ここでゴブリンとか表示されたら、とんだ勘違い野郎になってしまう。
"(純人族)"はコピーした勇者の種族だ。
お次は性別。"無"って……ボク性別無いのか。まあ、あったら≪写し身≫したときに不具合が起こるかもしれないので当然かもしれないが。
勇者が男なのは見た目で分かるよ。
年齢の"1"は、多分実年齢。ボク1歳だったのか。
"(26)"は勇者の年齢だろう。若いような、意外に歳食ってるような。
レベルは"7"。実年齢1歳らしいので、魔物ならそんなもんか、って気はする。けれど、
「このレベルからして、勇者の経験値は入っていないんだろうなぁ……」
"勇者の記憶"曰く
『攻撃を一切していない場合、例え戦いに勝利しても経験値は入らない』
らしい。
勇者はボクが攻撃する前に死んだんだろう。一撃でも与えていれば……と思うのは、意地の悪い考えだろうか。
「そういえば、この場合、宙に浮いた勇者の経験値はどこにいくのだろう? 聖地?」
――LvUP! LvUP! の音声と共に、にょきにょきと標高が上がっていく聖地が頭に思い浮かんだ。
……ちょっとなごんだ。
「……さて、現実逃避はここまでにして」
頭を振りつつ、ボクは混乱の原因その2――STR(筋力)等の能力値に目を向けた。実数は多分、ボク自身の能力値だろう。レベル相応の値だし。
ただ、問題はカッコの方だ。なんでこんな高いの?
『能力値におけるカッコ内の値は、装備値や常動スキルの効果を含んだ値』
「ほほう」
推測する間もなく"勇者の記憶"が説明してくれた。だんだん解説好きのお兄さんみたいに思えてきた。
「なるほど。常動スキルの効果や装備値を含めた値か」
常動スキルは"常時発動スキル"の略で、消費MP0で常に発動しているスキルを指すらしい。
早速ボクは詳細を確認していく。まずは常動スキルの≪不定形≫から。
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≪不定形≫
効果:VITUP(+50) 物理耐性(中)
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「こっちはドッペルゲンガーとしての常動スキルかな。元は不定形らしいし」
≪写し身≫を解除して確認する訳にもいかないのでスルーする。特に問題はなさそうだし。
「≪創生神の加護≫……こっちは間違いなくコピーした勇者のスキルだろう」
ドッペルゲンガーに関連するとは思えないからなーと思いつつ、確認すると、
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≪創生神の加護≫
効果:全能力値UP(3.0倍) スキル効果UP(3.0倍) 自然回復量UP(10.0倍) 熟練度成長UP(10.0倍)
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「ナニコレ」
思わず片言になってしまうくらい反則的だった。
ステ3倍て……そら強い訳だよ。魔王にも勝てちゃうわけだよ。
≪不定形≫がカスみたいだよ……。
ちょっとやさぐれたような気分になるが、「まあ、勇者だし」と気を取り直して、装備を確認する。
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【創生武器トワイス(偽)】
形状:両手剣 補正:STR+500 INT+250
付与:自動修復(中) 物理貫通(中) 魔法貫通(中)
特殊:≪想生≫≪解放≫≪継承≫
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【創生防具テスタロス(偽)】
形状:全身鎧 補正:VIT+500 MND+250 AGI+250
付与:自動修復(中) 物理耐性(中) 魔法耐性(中)
特殊:≪想生≫≪解放≫
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【聖王の指輪(偽)】
形状:指輪 補正:HP+1000 MP+500
付与:自動修復(中) 状態異常耐性(中)
特殊:≪聖光≫
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なあ、嘘みたいだろ。これで劣化してるんだぜ……?
――例として、世界最高位の剣士のみが所持できる
"オリハルコンブレード"の能力をお見せしよう。
『【オリハルコンブレード】
形状:両手剣 補正:STR+200 INT+20
付与:自己修復(極小) 物理貫通(小) 魔法貫通(極小)
特殊:なし』
お分かり頂けるだろうか。この異常さが。
つーか、反則過ぎるだろ! どんだけだよ! どんだけだよ!
……どんだけだよ。
> 状態異常:憂鬱 になりました
うるさいよ!
> 状態異常:憂鬱 が解除されました
ああもう、勇者って! 勇者ってズルい!!




