2010年3月11日(土)
朝、ひどい悪夢にうなされながら飛び起きる。
決まってこういうときはどんな悪夢だったか覚えていない。
「朝・・・」
時計をチラリと見るとすでに11時を回っている。
「学校・・・行きたくない」
引き篭もり特有のセリフをつぶやくと布団をかぶって寝てしまった。
「おい。起きろ~バカたか」
腹に鈍痛が迸る。
だが、僕はおきない。
「鷹史、起きろよ。起きないとキスするぞ」
(うるさいなぁ・・・もう少し寝かせてよ)
「鷹史!ほ、本当にいいのか?やるぞ?ヤッちゃうからな」
途端、急激な本能の警報に飛び起きる。
「っ・・・!鷹史、昨日・・・どうだった?」
目の前に良の顔がある。なぜか良のほうが驚いているけど。
昨日・・・は・・・。
「ごめん、今だけは良の顔見せないで。唯ちゃんは良が好きだってさ」
「そ!そう・・・」
少しだけ嬉しそうな顔をした良を睨むと、バツの悪そうな顔で目をそらした。
ぴょんっとベットの上からウサギを思わせる動きで飛び降りると、僕の部屋のドアをあけて部屋を出て行く。
「そうだ。今日は土曜日だから遊びに誘いに来たんだけど、仕方ないね。また明日!」
最後にひょっこりと顔をのぞかせて用件だけ伝えるとそそくさと去っていった。
「だから、憎むに憎めないんだよ。良・・・」
しばらくしてから階段を下りてリビングへと向かう。母と妹がテーブルについていた。
「鷹ちゃん、お昼ごはんの用意が出来ましたよ」
「ん・・・」
目の前に出された食事にお腹がなる。「いただきます」と手を合わせてから無我夢中に食べ始める。
ちらっと横目で見ると、隣では物心のつき始めた妹がお淑やかに食事を食べていた。本当によくできた妹だ。
「「ごちそうさまでした」」
ほぼ同時に食べ終わった妹と一緒に声を出すと、母がニコニコと僕たちを見つめながら片付け始める。
そして、夜。
『送信者:緑山良
唯ちゃんのメールアドレス。話したいことがあるから明日連絡欲しいって
yui222-yui2222-amano@×××.ne.jp』
(あまの?・・・僕の苗字も天野だけど)
夜も遅いのでメールもせずに眠った。その日見た夢はなんだっただろうか。