踏み外された世界
1955年に起こった第三次世界大戦による核兵器報復を経て世界は、『汎大陸領邦=イングランド社会主義統一圏』と『北ユーラシア自由協定』と『東アジア相互繁栄同盟』の超大国らによって分割されることになります。
1964年に各国首脳部が秘密裏に結んだ“消費保存条約”によって、惑星要所のタンジール、ブラザヴィル、ダーウィン、香港を頂点とする四辺形の領域を各勢力の緩衝地帯として係争地域に設定することで、互いの支配体制を相互防衛する「永久戦争」が安定軌道に乗りました。
1990年に発生した“アフリカ危機”と1995年の“海峡戦争”によって『汎大陸領邦=イングランド社会主義統一圏』は指導者層の不和を招き、2021年現在は内戦と代理戦争にその富を費やしています。
1988年の“核施設事故”、1991年の“核テロリズム拡散”、1994年の“統一両替システムのエラー”、2001年の“神代革命”によって『北ユーラシア自由協定』は指導者層の不信を招き、2021年現在は共和制国と君主制国の板挟みになり、その資源を軍閥に掠め取られないように揉めています。
1993年の“中央アジア侵攻、”1997年の“赤道事変”、1999年の“春風改革運動”、2005年の“列島大停電”によって『東アジア相互繁栄同盟』は指導者層の被害妄想を招き、2021年現在は人種暴動と権力闘争の渦となり、その人口は淘汰され続けています。
超大陸極東部の日本列島にある「天道政府」は安全保障面で脆弱です。硫黄島会合で2年後に国内勢力の糾合による朝廷復活が決定されていますが、実質的には分裂状態です。
最北は道北同盟が牛耳り、東北は津軽コロニー軍の縄張りです。近畿と北陸は都市国家が乱立し、四国は四国公社が治めています。九州と中国地方は九州解放軍と北大和連合に割れており、沖縄は総督府として独裁下にあります。東海道と関八州の南一帯は水産海軍機構に制圧されて、東京を支配する八百万革命評議会と対峙しています。関八州の北と中部地方はイースタシア復帰政府が掌握しています。
同列島は旧イースタシア政府にとっては不沈空母と実験施設の扱いでしたから、発電所や工場地帯や機密施設や基地はあっても食糧と燃料と資源は完璧に大陸に依存するように設計されていました。
ハワイ会議で列島の正式政府になる「天道政府」解体が決定され、海域が封鎖されればこれまでの小競り合いが子供の喧嘩レベルに見える大規模な内戦に発展し、その後に潔く屈服するでしょう。
各地に散った旧体制の残党や大陸からの移民・難民の存在も無下には出来ず、地下に潜伏しているテロ組織も未だに活発なようです。
果たして名もなき男は、世界を潜り抜け、故国(仮)に平穏を呼び込めるでしょうか。




