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『改変された世界で、俺のスキルがチートだった件』  作者: ばずみかん
第一部:異変の始まりと『運』の覚醒
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第5話:限界なき魂の器

グリーンスライムは、見た目に反して意外な速度で迫ってきた。学は反射的にナイフを振るう。しかし、ゼリー状の体は刃を受け流し、ぬるりとした感触だけが手に残る。スライムが学の足元に取り付こうとする。その瞬間、学は先ほど購入したポーションを思い出し、慌てて懐から取り出した。


「ええい!」


ポーションの瓶をスライムに投げつける。瓶はスライムに当たり、割れて中身が飛び散った。緑色の液体を浴びたスライムは、キイィィィ!と耳障りな音を立てて溶け始めた。数秒後、そこには何も残らなかった。


「…倒した?」


学は呆然と立ち尽くした。初めての戦闘。呆気なく終わったが、確かにモンスターを倒したという手応えがあった。その瞬間、学の視界に文字が浮かび上がった。


「グリーンスライムを撃破しました。」

「経験値を獲得しました。」

「レベルアップしました!」


学のステータスボードが更新される。HPとMPの最大値が増え、筋力や体力といった基本ステータスも僅かに上昇していた。レベルも「2」になっている。


そして、ステータスボードの一番下に、見慣れない項目が増えていることに気づいた。


【残りステータスポイント: 15】


「…じゅう、ご?」


学は目を疑った。ニュースやネットの情報では、レベルアップ時に得られるステータスポイントは通常5~10ポイントだと聞いていた。それなのに、自分は初レベルアップで15ポイントも獲得している? これは何かのバグか?


そこで、学は共有夢の中で神が語っていた「超常能力」の中に、もう一つ、自身に付与された「ユニークスキル」があったことを思い出した。『上限突破』という名前だったはずだ。


ステータスボードのスキル一覧を開く。『鑑定』の下に、確かに『上限突破』というスキルが表示されている。説明文を呼んで、学は息を呑んだ。


【『上限突破』: あらゆる成長(レベルアップ時の獲得ステータスポイント、スキル熟練度上昇率など)、ステータス上限、スキル取得数制限などを原理的に撤廃する。】


「…成長率が、撤廃? スキル取得制限まで?」


このスキルの意味するところは、あまりにも大きすぎた。通常、人間が獲得できるステータスポイントや、習得できるスキルの数には限界があるはずだ。それが「原理的に撤廃される」? つまり、自分には成長の限界がないということなのか?


学は再び、自身のステータスボードを凝視した。初期値から突出していた「運:77」。そして、この『上限突破』。これらが組み合わさることで、自分は常識では考えられない速度で強くなることができるのではないか?


驚きはそれだけでは終わらなかった。再びレベルアップしたことで、ステータスポイントを振り分ける必要があった。


【田中 学】

年齢: 30

HP: 160/160

MP: 110/110

筋力: 17

敏捷: 21

体力: 18

魔力: 6

運: 77



その時、学はふと思い立ち、ユニークスキル『倍々サイコロ』を試してみることにした。ステータスボードからスキルを選択すると、学の目の前に、半透明の、しかし確かに存在感のある巨大なサイコロが現れた。それはタワーの入り口で見た、あの天まで届く構造物を模したような、奇妙なデザインだった。


学は恐る恐る、そのサイコロに手を触れた。心臓がドキドキと高鳴る。


「…運、に。」


学は指定するステータスを「運」に設定し、念じた。サイコロが回転し始める。カラン、コロン、というサイコロが転がるような音が、頭の中に直接響いてくる。そして、止まった目の数は――「6」だった。


学のステータスボードが再び更新される。


【田中 学】

年齢: 30

HP: 160/160

MP: 110/110

筋力: 17

敏捷: 21

体力: 18

魔力: 6

運: 77 × 6 = 462


「また6倍!?」


たった1時間とはいえ、自身の「運」が6倍になる。これほどの「幸運」が、この未知なるダンジョンにおいて自分に何をもたらすのか。


学は『上限突破』によって成長に限界がないこと、そして『倍々サイコロ』で自身の最大の武器である「運」を飛躍的に高められることを理解した。これらの力は、神が全人類に与えた「超常能力」の中でも、明らかに規格外のものだ。


「俺は…他の誰とも違う…」


その事実に、喜びと同時に、漠然とした不安も感じた。自分が持つ力が、世界の「システム」から逸脱している可能性。それは、自分が神の計画の「想定外」の存在であるということなのか?


学は薄々感じ始めていた。自分に付与されたこれらのユニークスキルは、単なるゲームの能力とは違う。それは、この世界そのものが持つ「理」に深く関わる、何か根源的な力なのではないか、と。


レベルアップによって満身創痍から回復し、ステータスが向上した学は、再び周囲を注意深く見回した。草原にはまだ複数のスライムが見える。


「よし、次は…」


学はナイフを握り直し、歩き出した。常識外れのステータスポイント獲得に驚愕しつつ、学はこの力が「何か」から逸脱していることを薄々感じ取る。しかし、立ち止まるわけにはいかない。この世界で生き残るためには、強くなるしかないのだ。そして、自分に与えられたこの特異な力が、そのための「鍵」であることは間違いなかった。


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