第19話:深淵への階梯、新たなる力
学はステータスボードを開いた。
「やっぱりな…」
表示された数値に、学は改めて自身の規格外の成長を実感する。ガイア・ゴーレム撃破による膨大な経験値で、レベルは大きく上昇していた。現在のレベルは **20** となっている。そして、『上限突破』の恩恵により、獲得したステータスポイントも常軌を逸している。学のステータスは以下の通りだ。
【田中 学】
レベル: 20
HP: 1190/1190
MP: 1170/1170
筋力: 93
敏捷: 40
体力: 97
魔力: 34
運: 77
なんと、筋力は93まで跳ね上がっている。これは、ガイア・ゴーレムのような巨体を相手に、弱点を突いたとはいえ決定的な一撃を放つに足る数値だろう。HP、MP、体力も順調に伸び、『因果固定』やその他のスキル使用の基盤をより強固にしている。魔力も34となり、プニとの連携や、今後習得するかもしれない魔法系スキルの可能性も広がってきた。運は初期値の77から変動していない。
「これで…さらに上の階層でも戦える…」
学は自身の力の確かな向上を感じていた。平凡なサラリーマンだった頃の自分が、この数値を見たら腰を抜かすだろう。この力は、『上限突破』という、あらゆる成長の限界を撤廃するユニークスキルによってもたらされている。学の成長には、文字通り天井がないのだ。
次に、学はスキル一覧を開いた。
【ユニークスキル】
『倍々サイコロ』
効果: 1日1回、任意のステータス1種を1時間の間、1~6倍にする(サイコロの出目次第)。
『上限突破』
効果: あらゆる成長(レベルアップ時の獲得ステータスポイント、スキル熟練度上昇率など)、ステータス上限、スキル取得数制限などを原理的に撤廃する。
『因果固定』
効果: 都合の良い結果を引き寄せる。学の周囲で発生する事象に対し、彼にとって「都合の良い結果」をもたらす確率が極めて高まる。
【通常スキル】
『鑑定』
効果: 対象の情報を詳細に表示。熟練度が上がると隠された情報や弱点、真贋などを見抜く精度が向上。
『召喚』
効果: 自身を主とするスライムを召喚。バディ召喚獣としてプニがいる。
『空間収納』
効果: 無限に近い収納容量を持つ空間を作り出すスキル 。
『魂の練成』
効果: 取得した素材を元に、様々なポーションやアイテムを精製するスキル。学の『運』で得た素材の質が高いため、一般的な錬金術師よりも高品質なものが作れる。
『鑑定』の熟練度は着実に上昇している。敵の弱点を見抜く精度が上がり、戦闘を有利に進める上で不可欠なスキルだ。『召喚』も、学の相棒であるプニがいる限り、その重要性は増す一方だろう。新たに獲得した『空間収納』は、大量のドロップ品を収納する上で非常に役立つ。そして、『魂の練成』は、自身の『運』で得た豊富な素材を活用し、ダンジョン攻略に必要なポーションなどを自作できる重要なスキルだ。
そして、学はプニのステータスとスキルを確認した。プニは学の『召喚』スキルで召喚された、学にとってかけがえのない「相棒」だ。『捕食・吸収進化』と学の『因果固定』の影響により、驚異的な速度で成長を遂げている。
【プニ】
種族: スライム
レベル: 20
HP: 800/800
MP: 400/400
筋力: 50
敏捷: 60
体力: 70
魔力: 80
運: 10
スキル:
『体液分泌』(溶解、粘着、回復など用途多様化)
:簡易な酸、麻痺液なども分泌可能になった。
『捕食・吸収進化』(高速化/多様化)
:敵を捕食することで、そのスキル、特性、魔素を吸収し、自身の能力を強化・進化させる。捕食速度が向上し、より広範な種類の特性を吸収できるようになり、稀に記憶の断片も取得する。
『外殻硬化(初級)』
:体表が岩石のように硬質化し、物理防御力がわずかに向上。第4階層でストーンタートルを捕食して獲得した 。
『地属性耐性(微)』
:地属性魔法や攻撃によるダメージを微量軽減する。
第4階層でストーンタートルを捕食して獲得した。
『岩石操作(小)
:より大きな岩石を生成・操作可能になる。
ガイア・ゴーレム戦で獲得。
『重力操作(微)』
:周囲の重力をより広範囲、あるいはより強く操作できる。
ガイア・ゴーレム戦で獲得。
『放電(微)』
:微弱な電磁場を発生させ 、攻撃として放出できる。
第2階層の水棲モンスターを捕食する中で獲得した。
プニもまた、著しい成長を遂げている。第4階層で獲得した『外殻硬化』と『地属性耐性』は、この岩石地帯で大いに役立った。そして、この階層の岩石モンスターを捕食することで『岩石操作(小)』を獲得し、ガイア・ゴーレムの残骸を捕食したことで、『重力操作(微)』まで獲得した。
学にとって、プニは単なる召喚獣ではなく、共に未知の世界を切り開く、真の相棒なのだ。
学は、自身のステータス、スキル、そしてプニの成長記録を見つめた。平凡なサラリーマンだった自分が、これほどの力を手に入れた。それは、この世界を変貌させた地球の神が与えた「進化の触媒」によるものだ。
しかし、学は知っている。この力は、単なるゲームの能力ではない。それは、この世界そのものが持つ「因果律」に深く関わる、根源的な力なのだと。そして、その力を使うことには、まだ理解できていない「対価」や「リスク」が伴うことも。
ガイア・ゴーレムを打ち破った達成感と共に、学の心には新たな決意が芽生えていた。この変貌した世界の謎を解き明かすため、自身の持つ規格外の力を最大限に使い、この世界を生き抜いていく。
岩石地帯の奥に、次なる階層への扉が静かに開いている。学はプニと共に、その扉へと向かった。未知なる試練、そして深まる世界の真実が、彼らを待ち受けている。
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