第15話:草原の狩人、風切る刃
換金を終えた学は次の目的地、チュートリアルタワーの4階層へと向かうことを決めた 。事前にインターネットで集めた情報によると、4階層は広大な草原であり、俊敏なモンスターや空を飛ぶモンスターが出現するらしい。3階層までの岩石地帯とは異なる環境への適応が求められるだろう。
チュートリアルタワーの入り口に再び立った学は、深呼吸をして転移門をくぐる。視界が切り替わると、目の前には見渡す限りの緑が広がっていた。1階層の草原よりもさらに広大で、所々に木々が点在している。心地よい風が吹き抜けるが、その中に潜む未知の気配に、学は緊張感を高めた。
「ここが4階層か…」
学の足元では、相棒のプニがプルプルと震えている。3階層で共に迷宮を攻略し、成長の兆しを見せ始めたプニは、学にとって単なる召喚獣ではなく、かけがえのない存在となりつつあった。
「よし、プニ。ここからが新しい試練だ。慎重に行こう」
学はプニに語りかけ、新たな階層の探索を開始した。草原の草を踏みしめる度に、サワサワという音が響く。その音に紛れて、遠くから何かが駆け抜けるような速い足音が聞こえてきた。
学は咄嗟に**『鑑定』**スキルを発動させる。視界の端に半透明のボードが現れ、遠ざかる影の情報が表示される。
【ラピッドホーン】
レベル: 7
HP: 120/120
特性: 高速移動、角による突進攻撃
弱点: 集中攻撃(動きが直線的になりやすい)
鹿のような姿をしたモンスターだ。速い。学は『シャドウダガー』を構えた。接近戦になる前に、プニと連携して弱点を突く必要がある。プニは学の意図を汲み取ったかのように、小さく弾んでラピッドホーンが向かう方向へと移動を開始した。
さらに探索を進めると、今度は頭上から奇妙な羽音が聞こえてきた。見上げると、鳥のような、しかしどこか異質な姿をしたモンスターが数体、学の上空を旋回している。再び『鑑定』を発動。
【ウィンドシーカー】
レベル: 8
HP: 90/90
特性: 空中からの急降下攻撃、風属性攻撃
弱点: 翼(物理攻撃に弱い)
空を飛ぶ敵か…。近接攻撃が主体の学にとって、厄介な相手だ。しかし、『シャドウダガー』には暗闇潜伏の効果がある。草原の木陰を利用すれば、一時的に姿を隠すことができるかもしれない。学は周囲を見回し、身を隠せる場所を探した。
草原の探索は、これまでの階層とは異なる戦術が求められた。俊敏なラピッドホーンには、『シャドウダガー』の機動性とプニの粘液(体液分泌スキルの多用途化により可能になった)による足止めが有効だった。ウィンドシーカーには、木陰に潜んで『因果固定』が引き寄せる一瞬の隙を狙い、渾身の一撃を叩き込む。『因果固定』は、ここでも学にとって都合の良い「偶然」を引き起こし、ウィンドシーカーが急降下してきた際に、その軌道が僅かに逸れたり、翼が学の攻撃範囲内に入るように誘導したりした。
プニも学を懸命にサポートした。ラピッドホーンにまとわりつき、その動きを鈍らせる。ウィンドシーカーが急降下してきた際には、プニの体から放出される微弱な放電が、ウィンドシーカーの飛行を僅かに乱す効果を発揮した。
戦闘を重ねるごとに、学は自身の俊敏性を活かしたヒットアンドアウェイ戦術が、この広大な草原において非常に有効であることを実感した。また、自身の『運』が高いためか、ラピッドホーンやウィンドシーカーは、他の冒険者が見つけにくい希少なドロップアイテムを落とすことも多かった。それは、この新しい世界で「隠者の道」を行く学にとって、大きなアドバンテージとなっていた。
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