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『改変された世界で、俺のスキルがチートだった件』  作者: ばずみかん
第一部:異変の始まりと『運』の覚醒
10/60

第9話:二階層の洗礼、ギルマンの牙

ガチャで得た新たな装備とスキルに慣れた学は、倍々サイコロのクールタイムが終わったことを確認し、チュートリアルタワーの2階層への挑戦を決めた。事前にインターネットで2階層の攻略情報を集めていた学は、そこが広大な湿地帯であり、水棲モンスターが多く生息していることを知っていた。特に、フロアボスではないものの、集団で行動し、素早い動きと鋭い牙を持つ「フロア・ギルマン」が厄介な存在であると噂されていた。


万全の準備を整え、学は再びチュートリアルタワーの入り口に立った。1階層とは異なる、どこか湿った空気が肌にまとわりつく。転移門をくぐり、2階層へ足を踏み入れると、目の前には見渡す限りの湿地帯が広がっていた。草木は水分を多く含み、足元はぬかるんでいる。不気味な水音が、どこからともなく響いてくる。


慎重に周囲を警戒しながら進む学の耳に、突然、水が跳ねるような音が響いた。振り返ると、泥水を飛ばしながら、複数のフロア・ギルマンが学に向かって突進してくるのが見えた。緑色の鱗に覆われた痩せた体、そして獲物を捉えようとギラつく赤い目。


「っ!」


学は咄嗟に『シャドウダガー』を構えた。しかし、フロア・ギルマンの動きは予測以上に素早く、あっという間に学の懐に飛び込んできた。鋭い牙が、学の装備の隙間を狙って迫る。間一髪で攻撃を避ける学。その時、学は冷静に『鑑定』スキルを発動させた。


眼前に現れた半透明のボードに、フロア・ギルマンの情報が表示される。


【フロア・ギルマン】


レベル:5


HP:80/80


特性:素早い移動、集団行動、水属性攻撃への耐性


弱点:物理衝撃(首元のエラが脆弱)


「首元のエラ…!」


学はボードに表示された弱点を見逃さなかった。しかし、素早く動き回るフロア・ギルマンの首元を正確に狙うのは容易ではない。さらに、複数の個体が学を取り囲むようにして攻撃を仕掛けてくる。


学は瞬時に判断した。この状況を打開するには、『因果固定』に頼るしかない。


「頼む…! 一瞬でいい、隙を…!」


学が心の中で強く願ったその瞬間、フロア・ギルマンたちの動きが、ほんの一瞬だけ不自然に淀んだ。それは、学が求める「首元のエラへの攻撃」を可能にするための、微かな因果の歪みだった。


学はその隙を見逃さず、『シャドウダガー』を手に、最も近くにいたフロア・ギルマンの懐に潜り込んだ。『シャドウダガー』には暗闇に潜伏する効果がある。湿地帯の薄暗さと相まって、学の姿が一瞬だけフロア・ギルマンの視界から消える。


そして、学は渾身の力を込めてダガーを振り抜いた。狙うは、たった今『因果固定』が引き寄せた「隙」の場所に位置する、フロア・ギルマンの首元のエラ。


ダガーが緑色の鱗に弾かれる感触。しかし、狙いは確かに首元のエラに吸い込まれた。


グギャアア!


甲高い断末魔を上げて、フロア・ギルマンは泥水の中に倒れ伏した。他のフロア・ギルマンたちが、仲間が倒れたことに動揺し、一瞬動きを止める。


「…っ、よし!」


学はその隙に距離を取り、態勢を立て直した。初めての複数戦闘。そして、初めて『鑑定』で得た具体的な弱点情報と、『因果固定』の組み合わせで敵を撃破した。


この戦闘を経て、学は改めてこの新世界における「情報」と「運」、そして自身の持つユニークスキルの重要性を痛感した。闇雲に力に頼るのではなく、情報収集と自身の能力を組み合わせることこそが、平凡なサラリーマンだった自分がこの世界で生き抜くための道なのだと再認識する。


その後も、学は慎重に湿地帯の探索を続けた。フロア・ギルマンとの戦闘は何度かあったが、一度弱点と対処法を掴めば、その後の戦闘は最初の時ほど苦戦することはなかった。もちろん、常に『因果固定』による微かな「幸運」が、学を危険から遠ざけ、攻撃を成功へと導いてくれていた。


しかし、学はまだ『因果固定』の真の力や、その「対価」となるリスクの全てを理解しているわけではなかった。


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