一般人、殺し屋見習いになる
NYダウンタウンの雰囲気って良いですよね。
最近だと物価高と治安悪化で、スラムが急増しているらしいですが……。
警察も10万程度の万引きだと、いちいち出動しないらしいです。
日本とはだいぶ違いますね。
それでも、NYは大好きな街です。
「……本当なの?ミハエル」
「ああ。こいつには今後も協力してもらって、慣れてきた頃に組織入りをしてもらおうと思っている」
「本当に一般人ではないの?元々何してきた子なの?」
「ターゲットの情報収集、囮役、殺しの補助なんかだよな?」
「……う、うん!そういうのはそれなりにヤってきたよ」
「ふーん……」
ダウンタウンにある一般的なカフェで、3人は話し合っていた。
意外とこういう場所は、彼らのような職業のミーティングにも使われている。
ミハエルとユウトはそこで、今回の件について説明すべく、ハイドラと呼ばれる女性と面会していた。
ハイドラは銀髪の長い巻き髪をかきあげながら話し出す。
「……まあこれまでも殺し屋からの紹介による入会ってパターンはあったけど……あのミハエルがねえ。ちょっと信じがたいわ。ていうかあなた、友達いたの……?」
「……ああ?失礼だな。俺にもいざというときに頼れる友達くらいいる」
「ふーん。でもその子、私の眼には一般人にしか見えなかったわよ、あの時も」
「……それがこいつの恐ろしいところだよ。完全にこっち側の気配を消すことが出来るんだ。現に、ターゲットを油断させて、最後は首を一突きだぜ?」
「確かにそれは……そこは引っかかっていたのよね。ただの一般人があの状況であんな大胆な行動出来るとは……思えないものねぇ。でも本当に一般人にしか見えなかった……。もし、それがこの子のスキルだとしたら、相当やばいわよ?ダイヤモンドの原石ってところかしら。成長したら、情報収集係なんかを任せても良さそうね」
「ああ。いずれはそういう系統もヤってもらおうと思っている。……ということで、組織にはそんな感じで今回の経緯を報告しといてくれ」
「……そういうことにしといてあげるわ。……特別に?」
「……恩に着る」
一通り今回の件について話し終わると、ハイドラと呼ばれる監視役の女性はさっさと店を出ていってしまた。
ハイドラが完全に見えなくなるのを確認した後で、ミハエルとユウトは同時にふーっと深く息を吐いた。
「……とりあえず、始めの一歩はクリアだな」
「いやあ……めっちゃ緊張した……。何あの人の迫力……あれで監視役とかダメでしょ。てか、絶対僕のこと疑ってた」
「ああー、んでもいい感じにこっちの意図をくんでくれたみたいだぜ」
「でも絶対バレてたよ……ミハエルだから有耶無耶にしてくれたんでしょ?」
「いや、そうとも限らないぜ?あいつも驚いてただろ、お前の能力に。……完全にこっち側の気配を消してターゲットを油断させつつ、最後は一発で仕留めるダイヤの原石だって」
「それ真剣な顔していうのやめてくれる?」
「おー、怖い怖い。ジャパニーズ侍か、ニンジャの子孫って設定も入れときゃ良かったな」
「ねぇふざけてる?」
「まーそんなこと言うなよ。こんなんシラフじゃとてもじゃないけど、やってけねぇ」
「……確かに」
2人は頼んでいたコーヒーをぐっと飲みほした。
カフェの窓からは5月の晴れやかな青空が見えている。
ミハエルは流れる雲をぼーっと眺めながら、今後のことを考えていた。
店内に差し込む光を浴びて、ミハエルの肩ほどに伸びたブロンドが、キラキラと輝いている。
そんな様子をじーっと見ていたユウトは口を開いた。
「……ミハエルのそれって地毛?」
「……あ?」
「いや、髪めっちゃ綺麗な金髪だよね。外国人でも地毛が金髪の人はほとんどいないって聞いてたけど」
「ああー……。地毛だよ。目立つから染めてた時もあるけど、普通にめんどくさくて続かなかった」
「分かるー!僕も大学デビューした時に金髪にしたけど、メンテナンスが大変で半年で黒に戻したよ」
「ユウトが金髪?大学デビュー?……そりゃお前……ははっ、似合わな過ぎだろ。てかなんで染めるんだよ、黒髪で良いだろ」
「仕事で目立たないから?」
「それもあるし、黒ってかっこいいだろ」
「ミハエルは黒好きだなあー。家具も服も全部黒いし」
「まあな」
ミハエルはクールに整った顔をニヤリとさせて、言った。
ユウトはそりゃあこんだけイケメンなら何しても似合うだろうな、なんて考えながら不貞腐れた。
「……ていうかさ、これからどうするの?」
「ああ、これから家に戻って2人で出来そうな案件を選ぶ。ハイドラが何とか時間稼ぎをしてくれるだろうが、早めにユウトが俺の協力者だという実績を作らなくちゃいけない」
「そうだよね。あぁぁ、でもめっちゃ不安だなあー……言っておくけど、僕本当に何もできないよ?得意なこととか特にないからね?」
「そんな自信満々にいうなよ……」
「いや、事実だから」
「今まで何があったんだよ……」
ミハエルとユウトはわぁわぁと騒ぎながらカフェを後にした。
周りにいた数人の客は、うるさいなと顔をしかめている。
しかし、彼らがまさかプロの殺し屋とその見習いだなんて、思いもしないのであった。
小話。
昔からカフェではロイヤルミルクティーを頼む派でした。
でも、最近になってスパイシー強めのチャイもいいなーなんて思ったり。
ちなみにミハエルは苦み強めのブラックコーヒー派、ユウトは甘さ弱めのコーヒー派です。
意外と2人とも甘いものは苦手なようです。
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作者はイラスト関連の仕事をしていたので、そのうち2人のイメージイラストなんかも投稿していく予定です。