04 恋愛絶対禁止宣言!
それでは後はお若い者同士で、とお見合いのようなことを言われてユニ☆キラの5人と私はその場に残った。皆まだ興奮冷めやらぬようでソワソワしているのがわかる。
「今後のスケジュールを皆のコスモに転送したので各自確認してください。明日から早速ビジュアル撮影も入っているわね」
とりあえずプロデューサーとして仕切ってみる。
プロデューサーって実はどういったものなのかまだわからない。学園長の構想がしっかりあるし、ひとまずはマネージャーの役割からスタートしてみよう。
「今後デビューに向けてユニ☆キラとしての仕事が増えていきますが、それ以外は通常の授業を両立する形になります。授業は基礎レッスンになるのでこれからも受けてください。それとは別にグループのレッスンもあります。仕事と授業のバランスについては私が調整するので、各自スケジュールを確認してください」
「はーい」
マオが元気よく返事した隣でミエルは少し不服そうだ。
「授業を受けている暇ってあるのかな。デビューまで3カ月しかないんでしょ?」
「今後割合としてはグループ活動の方が多くなるかもしれないけどね。でも他の人が仕事をする間、待ちの時間もあるだろうし、その合間はレッスンをしてもらいます。基礎レッスンも大切だから」
「ふうん。僕もう基礎レッスンなんて必要ないけどねえ」
「まあお荷物が多少いますから」
ミエルは形だけ納得したけれど不服な表情は変わらず、ネルラスは意味深な視線をシキに送った。シキは全く気にせず眠そうな顔で私を見ている。
「今日の午後は各自の授業に戻ってください。私は今後について学園の関係者とミーティングをします。
ユニ☆キラとしての活動は、今日はこの時間が最後になるけど、何か質問はありますか?」
「はーい、質問です!
エイリ=メイ、ちゃんだよね。同じ学生だけどなんて呼べばいい?」
マオが元気よく質問してくれる。これは……慎重に答えなくては。恋愛脳でサービス終了!という文字が私の頭の中で踊りだした。
「エイリさんでお願いします」
「ちょっと固くない?せっかくの仲間なんだから」
「そうだ、僕たちもなんて呼び合うか決めた方がいいかも」
「メンバー間の仲の良さはファンにとって重要なポイントだからね。他人行儀だと不仲説が出てしまうし、やっぱりケミ人気がある方がファンは――」
ミエルの提案にライも賛成する。
確かにメンバーの仲の良さは重要!今までは関わりのなかった人たちだけど、今後は同じグループとして関係性も売り出さないといけない。まだ絆なんてないけど、目に見える部分だけでも仲良くしていかないと。
「みんな呼び捨てにしようか。敬語とかもない方がいい」
「敬語なし……ですか」
ネルラスが困った顔をするのを見て、
「ネルラスに関しては丁寧語萌えがあるからそのままの方がいいと思う」とライが言う。
「それもそうだね、じゃあネルラスに関してはそのままでいいよ」
私が口をはさむでもなくミエルがどんどん決めていってくれる。彼を最年少リーダーにするのはいいかもしれない。
「そうしてもらえるとありがたい。ああでもそれなら、私のことはネルラスでなく、ネルと愛称でお呼びください」
「オッケー!その方が仲良く見えるもんな!で、メイちゃんもそれでいい!?」
マオは人懐っこい笑顔を私に向けてくれる。
「私はあんまり親しく見えない方がいいんじゃないかしら。同じ学生だし、敬語は使わなくてもいいけど。名前で呼ぶのは……」
とにかく恋愛禁止絶対阻止!なのだ。
恋愛をしていないにしても、ファンから少しでも疑われる呼び名は避けた方がいいだろう。
「そうだ!プロデューサーって呼んでくれる?」
うん、それしかない。そしていい響きだ……!
(元)推したちにプロデューサーと呼ばれるささやかな喜びくらいは持っていてもいいだろう!
「えー?まあいいか」
「そういやプロデューサーってアイドル志望じゃなかったの?なんでプロデューサー?」
ミエルのまっとうな質問になんと答えればいいかわからない。
アイドルとして諦めなさいと言われた……それを素直に言って、そんなプロデューサーについてきてくれるのだろうか。
そもそもどうして私が選ばれたのかもわからないんだ。
「……実はなんで私が選ばれたかわからないの。でもアイドルに憧れる気持ちは本当。アイドルが好きな気持ちはライにも負けない。
だから、私もあなたたちとトップアイドルの道を目指していきたい!力を貸して下さい」
嘘をついても仕方はないので、そこは素直に言ってみた。
メンバーも「まあ学園長が選んだわけだしね」「トップアイドルになりたいのは同じだし」とそこまで疑問に思わず受け入れてもらえたようだ。
それなら……
あのことも、きちんと言わなくては!
私の頭ではまだ「恋愛絶対禁止!」の文字が踊り狂っている。
「これからのアイドル生活で約束してほしいことがあるの」
「なに」
「私、18歳でしょ。同世代で若い女なわけよ」
「まあそうだね」
「だから、絶対恋愛禁止で!お願いします!私と恋愛は禁止です!」
先ほどまでワイワイとしていた部屋がシンと静まり返る。
彼らの表情を見るとあっけに取られてこちらを見ている。
彼らは私と恋愛する『設定』だから、受け入れてもらえないだろうか。
「え、言われなくても『ない』よ」
沈黙を破ったのはミエルの呆れた声と表情だった。
「俺は女の子みんな好きだけどねー!でもみんな好きだから、ごめんね?」
申し訳なさそうに手を合わせてマオが私を気遣う。優しい口調に憐れみが含まれていて切なくなる。
「私より美しいものしかありえないですから」
ネルのその瞳は普通に傷つくからやめて欲しい。
「アイドルを愛するアイドルとしてそもそも恋愛をするつもりはないのに、そのうえプロデューサーと恋愛だなんてありえない。やらかし炎上熱愛それはすべてを滅ぼすから」
ライは冷静に正論を放った。
「……ご、ごめん。そうだよね……」
完全に恥ずかしいだけの女になってしまった!
ということは、この世界では彼らに私と恋愛に落ちる『設定』はない……!?
そうだ、性格やスキルも変わっている。恋心がなくならありがたい。
いや……それも今のところ、だ。これから好感度があがってしまったら恋愛が始まってしまうこともあるんだから!釘をさしておくことは重要よ、うんうん。
皆にガッツリ拒絶の壁を作られると、地味にショックを受けたので自分で言い訳をする。恥ずかしい!
「――無理だよ」
今まで黙っていたシキが突然言葉を発した。
コズミックフェスの話が出ても浮かれる事なく、ずっと黙って私をぼんやり見つめていたシキだったけど、眠りからさめたようにはっきりと喋った。
「俺、もうプロデューサーのこと好きだから」




