02 問題児たちの正体2
ゲームとのキャラギャップに驚くけど、普通に問題が大きすぎる!
頭を抱えていると、次のメンバーを学園長が紹介し始めた。
『テンマ=ライ 鬼人 18歳 190cm アイドル志望』
大柄の生徒が立ち上がった。あっさりとした顔立ちに切れ長の瞳。すっきりと流れる赤髪から小さな角がのぞいている。
第一印象は少し怖い。鋭い瞳に射抜かれるとドキドキしてしまう、食べられそうで。
ゲームのライは、いかつい見た目からは想像できないほど心優しい人だった。一見恐ろしいけど、寡黙なだけで誰よりも紳士的で穏やかで不器用な人となりがギャップ萌えで人気だった。
「彼はパワフルなパフォーマンスができるわね。背も高くビジュアルもいい。そして、ラップも出来る。ミエルと同じくオールラウンダーね」
ライの映像が流れるが、通る声と迫力のあるダンスは惹き込まれる。声が特徴のある低音なのでグループにおいての良いアクセントになりそうだ。
ゲームのライは、アイドルとしても不器用で歌もダンスもあまりうまくなかった。
もしかしてライに関してはこの世界ではプラスに変化しているのかも!
「俺はアイドルになりたい。アイドルが好きなんだ!」
ん?
満面の笑顔でハキハキと喋ってるこの人は誰?
微笑むくらいならあったけどこんな笑顔はゲームではついに見られなかった(途中でサ終したので)!
表情があんまり変わらない人だったから目の前にいるライに驚くけど、好印象な爽やかさはアイドルにとって武器になる!いい変化だ!
「俺はアイドルという存在を愛しているんです。男性アイドルでも女性アイドルでも、国民的アイドルでも地下アイドルでも私の心を照らす太陽です。そして手の届かない星でもあり、存在は宇宙そのものです。俺なんかがその煌めく星に手を出してはいけないとわかっているのですが、彼らを知ってしまったら最後その輝きに魅了されてしまうのは――」
えっ、本当に誰?
突然早口ドルオタ語りを始めた、知らない人だ。
寡黙で控えめなライはどこにいった?私はユニ☆スタを(サ終するまで)コンプしたけど、彼のアプリ内すべてのセリフ量を超えた気がするんですが。
いかつい外見の彼がこんな風に早口長文を喋り出すと思わなかったようで場の皆が面食らっている。
同い年で面識が元々あったネルラスだけが「あーあ、また始まったよ。帰ろうかな」とげんなりした顔で言った。
「ライありがとう、もう結構よ」
学園長が優しく言い聞かせるように言ったことでようやくライのノンストップドルオタトークがおさまった。
でも、他の3人のような理由よりも。アイドルに憧れがある彼の方がいいではないか。それは事務所に断られるような欠点だとは思わない。
「ライはこの通り、優秀なんだけど……ライ、机の上に立ってパフォーマンスをしてみて」
学園長はなぜかそんなお行儀の悪いことを言い出した。ライは素直に頷き机に飛び乗った。
皆の注目を浴びたライは先程までの楽しそうな表情から一転。顔色は赤くなったかと思うと青に変わっていく。目はせわしなくあたりを伺い、歯がガチガチと震え、身体までぶるぶる震え出した。なんとか立っているが、今にも倒れそうだ。
学園長が隣の先生に目配せすると、彼はライに向かって手を伸ばした。浮遊魔法を使ったらしく、ライは静かにイスに戻っていく。席に座るとようやく落ち着いたようで息を吐いた。
「この通りライは極端なあがり症なのよ。練習では最高のアイドルができるけどステージに立つとこうなってしまう」
なるほど。机の上でそれなら、どう考えても致命的だ。
やっぱりこんな設定はゲームになかった。ライは恥ずかしがり屋ではあったけれど、ステージでもパフォーマンスはできたから。
「最後に、ヨスガ=シキ」
『ヨスガ=シキ 吸血鬼 17歳 188cm アイドル志望』
最後に呼ばれたのは、昨日私のことをずっと見ていた例の黒髪だ。
「彼は見てわかると思うけど、ビジュアルが素晴らしいわ」
その言葉にネルラスは不満げな顔をしたけれど、本当にシキは美しい。
美しいけれど男らしさもあり、甘さの中に凶暴性のような物も見えて。
まあ端的に言えば、女子ウケがめちゃめちゃに良い男だ。なんというか、バランスがかなりいい。
学園長に促されてしぶしぶ立ったが、立っているだけで絵になる。
気だるそうな雰囲気も色気があり、どんな人も魅了しそう。
黒髪から覗く赤い瞳は、心まで奪ってしまう、そんな気がする。
……でも、ゲームのシキはこんな雰囲気ではなかった。
ビジュアルは同じくかなりのイケメンで、ユニ☆キラでも一番人気のキャラだった。
アイドルとしての実力があっていつも自信満々で俺様で。ヒロインに突っかかってくることも多いけれど、実は優しい。
中身も王道の人気キャラクターのそれだった。
そんなシキはだるそうにその場でぼーっとして――いや、私のことをやっぱり穴が開くほど見ている。
とにかくゲームのシキとは全く違う。
「彼はビジュアルだけなら一級品なのだけど。それ以外が全てダメ。ダンスも歌も下手だし、笑顔もろくに作れない」
「そんな男いりますか?」
学園長のシビアな紹介に、ネルラスが反応した。自分以外の人のビジュアルが褒められて少し嫉妬も入っているかもしれない。
「ええ、彼のビジュアルは放っておけないわ!スターになるビジュアルよ」
私もシキほどビジュアルがよければ、アイドルデビューさせてもらえたのかもしれないと思う。そう思うと、私も少し嫉妬。
シキの練習動画も映された。――私よりはマシだとは思う。
でもマオくらいフラフラしたダンスだし、歌はリズム感があまりにもない。笑顔もなく常にぼんやりした顔をしていた。
「これは……ビジュ担だとしても限界があります。いくら顔がよくても最低限のダンスと歌が必要ですし、これだけ出来ないとかっこいいからでは許されません、憧れる要素が一切ないパフォーマンスですね。スキルがなくて許されるのはポンコツ枠、つまり応援したくなるようなキャラクター性であって彼の本来持つ魅力とは相反する気がするのですが、もし彼の――」
「長い。でもその通りだ。彼の雰囲気ならアイドルよりモデルの方がいいんじゃないですか?」
ライがアイドルキャラクター論を語り始めたのを、ミエルが遮った。
それはそう、かっこいいビジュアルを全面で売り出すには、彼とダンスと歌はあまりにも酷い。ださい。これではファンは夢からさめて幻滅してしまう。
「俺は……エイリ=メイの目指す場所に行きたいから」
「え?」
彼の意外な言葉に視線が私に集まる。
どういうこと?と皆の目が訴えているけど、私だって説明して欲しい。
シキは他の人のことはどうでもいいようで、表情を変えずにじっと私を見たまま言葉を続けた。
「だから、アイドルをする。エイリ=メイがアイドルを目指していたから」
「待って!私あなたと昨日初めて会ったのよ!」
恋愛厳禁なこの学園で、男性生徒と繋がりがあったと思われては困る。
私はなんとか声をあげたが、他のメンバーはいぶかしげに見ている。困った、メンバーに手を出すプロデューサーだと思われたら信頼関係など築けない。
「エイリさんの言うことは本当よ。貴方たちは初対面のはずだけど?」
学園長がフォローしてくれてホッとする。疑惑の目もいくぶんかはとけたみたい。
「とにかくシキはアイドルしか目指さないと言っているから、モデルの道はないの。それに関してはマオもネルラスも同じなのだからいいわね」
みんな納得はしきれていないけど、ひとまず頷いた。
「それから最後にプロデューサーのエイリ=メイ。彼女はきっと良きプロデューサーになるわ」
どんなことを言ってもらえるかドキドキしたけど、私の評価については特に触れずにあっさり紹介は終わった。
あのひどいダンスと歌を見られたら、誰も私を信じてくれなくなるかもしれないけど。
「貴方たちには大きな問題があります。けれど飛び抜けたスキルがあったり、素材としては一級品なの」
学園長にそう言われると自信が出てくる。
彼らも学園長の言葉に大きく頷いた。シキだけはやっぱり私を見つめてるんだけど。
「エイリさん、彼らをまとめあげて最高のグループを作ってね!」
素材としては一級。それはわかる。
でも、それをまとめあげて最高のグループに!?
「恋愛脳」さえなければ、トップに行くのは余裕だと思っていた。ゲームの設定だけならば。
で、でも……。
もう一度彼らを見渡してみる。ゲームでよく見た顔、イケメン五人。
でも私が知っている彼らとはまるで違う。
ゲームの内容を知ってるから余裕だと思っていた。
でも本当はなんにもしらないんだ、この世界のこと。
む、無理かもー!?




