夕闇の中
夕闇が迫るまでに
何か伝えようとした。
どう言えばいいのか、
わからなかった。
何を求めていいかも
わからなくなった。
気持ちの夕闇には、
時間はなかった。
そっけない言葉が、
愛想のない行になった。
何故かよく書けたと
思った、どうにか眠れた。
その時になれば、
日常の困難を越えて
会いに行けたらいい、
求めたいことを求めて。
抱きしめて欲しい。
そう思っていた。
その胸に顔を埋めて、
無防備になりたかった。
閉じた瞼の隙間から
涙が出てきたら、
その涙に流されながら、
自分を脱ぎたかった。
抱きしめてくれる。
そう感じたりした。
幼いままの心も一緒に、
おかえりを聞きたかった。
そのまま安らいで、
どこに行く必要もなくて、
ゆっくりと夕闇から
朝の光を覗きたかった。
まだ若いあなたと、
幸せを探そうなど、
それは考えられなかった。
それは別のことだった。
出来た話をするようで、
出来てはいなかった。
話だけなら綴れても、
人生は綴れなかった。
なんとも子供じみた
感じ方だとわかっている。
浮世離れに憧れた
ただの小心者なのだ。
自分の中にしかない、
都合の良い話の空想癖。
ないものを思い込み、
思い込んで気を晴らした。
夕闇の真ん中で、
気持ちの壁には
家守らが蠢いていた。
成り行きでしかない。
おかえりの声は、
どこにも見えなかった。
守りを求める声たけが、
耳に落ちてきた。
当たり前のことだった。
自分におかえりの声がなく、
自分に守りを求める声だけが
響いているのだから。
夕闇を通り過ぎる間も、
何も伝えられなかった。
黙り込むばかりだった。
横たわるばかりだった。