幼少編7
「うわー」
「アホ面してるんじゃないよ。並ぶよ」
「あ、はい」
私は大きくポカーンと開けた口を閉じる。
確かにアホ面だ。
王都の門のあまりの大きさにびっくりした。
ドドンと大きな門にズラリと並ぶ馬車と人々、時折追い抜いて行く馬車は豪華絢爛。
お貴族様の馬車なのだろう。
あと、厳つい装備の騎士。
「この並ぶのが面倒なんだよねぇ」
「はぁ……」
げんなりとした表情のタリバさんを横目に私はキョロキョロする。
「あっちは人が少ないですよ?」
「あれは冒険者用だねぇ、この近辺の依頼を受けた者は便宜が図られるのさ」
「そっかぁ……冒険者って12歳からでしたっけ?」
「そうさね。登録するとああやって便宜をはかって貰える事もあるから新鮮な素材を自分で取りに行く魔法薬師もいるよ。まあ、依頼を熟さないと抹消されるから一長一短だけどね」
「私でもできるかな?」
「……授業で攻撃魔法を覚えな。あとは解体。獣や魔物は魔法薬の素材以外も売れるからね」
「アイテムバッグが必要になりそうですね……時間停止機能付きはやっぱり高いですよね……アイテムボックスのインベントリ付きがあればな……」
「なんだって?」
「なんでもないです!」
危ない。アイテムボックスがこの世界にあるかどうかも知らない。
アイテムバッグはあるんだ。行商のおじさんが持っていたから。
採取したの入れるのに欲しいなって思ってたから覚えてる。
「……合格したらな」
「え?」
「なんでもないよ。さて、そろそろだねぇ」
ゆるゆると緩慢に進んでいた列がとうとう私達の番になった。
軽い身体検査と王都入場の理由を述べる。タリバさんが何かを取り出して見せると途端に兵士は畏まった。
「次回からは貴族入口から」
「必要無い。今はただの村の魔法薬師だ」
「……はっ!どうぞお通りください」
「タリバさん?」
「行くよ、サーシャ」
「うん」
さっき何を見せてたのだろう?
そっとタリバさんを見上げるとタリバさんは気づいて笑う。
「身分証だよ。サーシャはまだ持ってない。各ギルドに所属するか、成人するか、どこかの学校に入れば貰えるよ。あとはお貴族様なら持っているかな」
「私は今回はタリバさんのお供ってこと?」
「そうさね。」
タリバさんはゆっくり私の頭を撫でてくれた。
「次来る時は仮の学生証が発行されるはずだからそれで入る事になるだろう」
「タリバさん、私が受かると思ってるの!?」
「誰が教育したと思ってんだい?」
「タリバさん!」
「ほっほっほ。受かるだけなら受かるさ。奨学金までいくかはサーシャ次第だよ」
「頑張ります」
「宿はこっちだ。荷物を置いたら学園までの道を確認しよう。そしてご飯だな」
「ご飯!」
「お腹空いたか?先に食事にするか?」
「ううん。タリバさんの言った順番にする。宿屋、学園、ご飯!でお部屋帰ったら勉強する」
「そうさね。夜寝るまでは好きにするといいよ」
タリバさんに案内されて着いた宿屋ではちゃんとベッドが2つのお部屋が予約されていた。
タリバさんがしていてくれた。
これ1人だったらと思うとゾッとする。オマケにやっぱり季節柄受験で宿屋は埋まりがちなんだそうな。
タリバさんを思わず拝んだら変な顔された。ですよね。