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幼少編6

 



 10歳になった。

 今日は王都まで1週間かけて馬車を乗り継いで試験を受けに行く日。

 タリバさんが付いてきてくれる事になった。

 1人で行くことになるのかと思っていたので内心ホッとする。

 他に街に行ったことが無いのにいきなり王都デビューなのだからドキドキ通り越して心臓はバクバクしてたのだ。

 今は椿の月の25日。試験は桃の月の5日。

 試験結果は試験後2日経つと張り出される。

 入学は春秋の区切りのいい所から入れる。

 遠方の出身者にも考慮されているのだ。

 私は春から入学するけれど、一旦戻って身支度を整えてから入学するのだ。

 本当はそのまますぐにでも入学したかったけれど、お願いだから一度帰ってきて欲しいと両親と弟妹(ていまい)に頼まれると嫌とは言えない。

 両親も私の為にお金を貯めてくれているのを知っている。

 その両親もお金を渡したいのだろう。もし、特別奨学金に受からなかったら受け取らないと正直厳しい。

 本当にありがたい。

 その後は夏と冬の長期休みには帰るつもりだが旅費を考えるとどちらかで年1回だろう。そう思うと寂しい。


「行ってまいります」

「気をつけて、頑張っておいで」

「風邪ひかないようにね。全力で頑張るんだよ」

「「お姉ちゃん!頑張って!行ってらっしゃい」」

「ありがとう!行ってきます!」


 一番良いワンピースのスカートを翻すとタリバさんが待つ荷馬車まで走る。

 自分で決めた事だけど、ちょっと泣きそうだ。


「よろしくお願いします」


 荷馬車の持ち主に挨拶をする。

 背後ではタリバさんに両親が頭を下げている気配がする。

 タリバさんも頭を軽く下げている。


「タリバ、さん」

「泣くな。まだ試験だ」

「分かってる」


 村を出る荷馬車に載せて貰って私はこの村からの第1歩を踏み出す。

 私が出たことに気づいたカイルが走って追いかけて来る。

 カーナが後ろで烈火のごとく怒ってるのが見えた。


「頑張れよ!サーシャ!」

「あ、ありがとう?」


 まさか追いかけてまで応援の言葉をくれるとは思わなかった。

 思わず疑問形になったけど、カイルはいい笑顔で止まって手を振った。

 だから私も小さくカイルには分かるように手を振った。


「いい護衛騎士様だ」

「違うよ。友達だよ」

「そういうことにしとくかね」

「……」


 タリバさんの頭の中ではカイルはいったいどういう位置づけなのか……

 鞄の中から薬草辞典を取り出して眺める。

 旅はまだ始まったばかりだった。

 その後、馬車に酔った私は自分で作った酔い止めのポーションの世話になるのだった。

 馬車の乗り心地はガタゴトの最悪だった。

 サスペンションだったけ?そんなのある訳ないよねーうん。

 お尻は痛いわ、気持ち悪いわ……

 自業自得だけど、「タリバさん本を読むの止めてよー!」と馬鹿だねと笑うタリバさんに八つ当たりした!

 そのくらいしんどかった最初の宿泊地のラケルまでの道程だった。





豆知識

椿の月は2月

桃の月は3月


その月に咲く花が月の名前になってます。


なんと感想頂いてしまいました!ありがとうございます!

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