幼少編5
「なあ、本当に村から出ていくのか?」
「え?ええ、まずは試験を受けに行くだけだけれど」
「それ!学園は試験受けてまで行かなきゃいけないのか?このままオババの」
「カイル、そこに私が行きたいの。だからずっと勉強してるのよ」
「なんで……」
「自立したいから。この村から出たいなって」
「カーナか?」
「違うわ。もっと広い世界を見たいの!手に職があったらどこでも生きていけるでしょ?冒険者と一緒」
「……そっか」
酷く寂しそうにカイルは呟いた。
カイルは綺麗でかっこいい男の子に成長する片鱗が見え始めている。
カイルこそタリバさんの所や、村に時折来る冒険者に剣術を習って、12歳になったらギルドに登録して冒険者するのだとずっと息巻いている。
それ故か、カーナの執着が年々強くなっているようだ。
最近では少しカイルが可哀想になっている。
なんたって、稽古の邪魔を平気でしてくるのだ。あれは可哀想。
カーナにしたら冒険者になるより、この村に残って欲しいんだろうね。
カーナはそばかすがチャーミングポイントの可愛い赤毛の女の子ではあるのだ。
だけど、女の部分が凄く強い。既に遺伝子確保!となってるなら逆に凄いけど。
カーナは普通の男の子は歯牙にもかけない。
纏わりつくのはカイルと2つ上のヒースクリフだけだ。
強くてかっこいい男の子が好みらしい。
カイルは言わずもがな顔の整った男になる予感のする子、ヒースクリフも綺麗な顔立ちでこちらも、冒険者の魔道士になるのだと研鑽を重ね、12歳の誕生日と同時にこの村から出ていく事が決まっている。
もう魔法が使えるのがエリートだよね。冒険者の人からしか習って無いのに。
ヒースクリフとはカーナが絡むので早々に会話しなくなっていたのだけど、森の中で採取をしている時にやり方と見つけ方を教えて欲しいと頼まれてそこから森の中で話すようになったのだ。
村に来た冒険者の話を聞いて、駆け出しの仕事が何かを確認したらしい。
今では私と一緒にお小遣い稼ぎにタリバさんに納品している。
カイルもいる時もあるけれどカイルは相変わらず剣の稽古に夢中。
あ、ヒースクリフにも魔力増えるかもって、ギリギリまで毎日使う方法教えました!こちらは毎日やってるみたい。
一度にこやかに増えたって教えてくれた。
その綺麗な微笑みにちょっとだけときめいたのは内緒だ。
目の保養ではあるけれど割と心臓に来るね。
ヒースクリフは本当にあと少しで誕生日を迎えるので近隣の大きめな街に出る準備が始まっている。
だからなのか余計にカーナはカイルに絡むのだ。
村の外に出るのを阻止したいなら悪手だろうなと思いつつも、私はカーナと仲がよろしくないし、カーナの婿探しという些末な事に関わっていたくないので全力スルーしている。
が、カイルがこっちに来るのだ。
困ったもんだ。
「なぁ……サーシャは好きな人とかいないのか?別れ難くならないのか?」
「あん?好きな人?親とかじゃなくて?」
「ああ……」
「いないわよ」
「そっか……」
びっくりし過ぎて変な返答になった。
カイルにしては言葉の言い回しも難しいし、カイルも大人になってきてるんだね。って変な感想が頭に浮かんだ。
いったい何が言いたいのか?
首を傾げる私にカイルは少しだけホッとしたように笑う。
「まだまだ子どもだな」
「イラッとするわね。この村にいい男がいないだけよ」
「そうか……頑張るよ」
「何をよ?」
「……冒険者になるの」
「ああ、そう。頑張れば?自分の為に。じゃね、送ってくれてありがとう」
「おやすみ」
「おやすみ」
若干、子ども発言にイラッとしたものの、家に着いたのでさっさと別れる事にした。
カーナに話してるのを見られたら大事な私の薬草研究時間が飛ぶ。
カーナは嫉妬深いのだ。カイルやヒースクリフが私と話すのを見つけると後で私に文句言ってくるのだ。
だから2人とは自然と森の中でしか話さなくなった。
とは言っても、2人はある時までは普通に村でも話しかけてくれていたのだけど、私が周囲を確認するのを見て理由を察したようだ。
カーナがあまり来ない森の中以外は2人も周りを確認してから話しかけてくれるようになった。
カイルは優しいとは思う。けど、友達にしか思えない。
何となく、自惚れかもだけど、最近カイルが私の事好きな様に感じるのはきっと気のせい。
もうすぐ離れるから感傷が高まっているだけだ。
うん。