1年生春28
「あーサイモン、悪いがハンス・バーキング先生を呼んで来ておくれ。この時間なら研究室にいるはずじゃ」
「は、はい」
サーモン君……じゃなくてサイモン君、再び大急ぎで教室を出て行ったよ。
なんかごめんなさいだよ。サイモン君。
リアルじゃ、こんな風に話しかけられないからそっと心の中で手を合わせて拝む。
それに呼応するかのようにノワールレント様が私を見て首を傾げた。なんで?
「この授業はワシが預かる」
「学園長もうひとつ御報告が」
「レインハルト、なんじゃね?」
「先程、ミリアム先生は平民を下働きとして尽くせとおっしゃいました。同時にこれはミリアム先生の家のランスバーグ伯爵家以下の、こういう言い方は嫌なんですが上級貴族命令で下級貴族の子どもが下働きさせられているのでは?現システムでは研究室を辞めるのに教授のサインが入りますよね?辞めるに辞められない人がいるのではないかと思います」
「ふむ……ミリアム女史だけの問題では無さそうじゃな……よし、各研究室に査定を入れよう。もちろんその場で嫌なら辞め、研究室を移動出来るようにしよう」
「ありがとうございます、学園長」
「お呼びですか?学園長殿」
少々息を切らしながら1人の男性が入ってきた。
後ろにサーモン君じゃなかった、サイモン君。
この人がバーキング先生か。
ミリアム先生はずっとフルフル顔真っ赤にして怒ってる。
私を睨みつける目も変わらない。
私ポーション作っただけなんですけど。自業自得では?なんて言葉は通らないだろうね。逆恨みしてそうでやだな。
「どうしたんです?授業中に」
「ハンス、君を今日からミリアム女史の授業全てを受け持つように。ミリアム女史はご自身の研究室のみの権限とする。また用品や基材も全て自分の研究室の物のみの取り扱いとする。それと、全ての研究室に査察を入れる。不当な人材の扱いや金銭の流れ全てを大規模に確認し、調査する。それでいいかのう?レインハルト」
「ありがとうございます」
「ハンス、今からワシと一緒に初級ポーションの査定をするぞ」
「はあ」
「ミリアム女史はもう、自分の研究室に戻られて結構。ああ、書き換えなどしようとしても無駄じゃからな」
「な!横暴ですわ!」
「どちらが横暴かな?学生を下働き扱いなど聞いた事ないわい、さ、出ていきなさいミリアム女史」
無言でドスドスと足音が聞こえてくるかのように荒々しくミリアム先生は出ていった。
お品がありませんよ?なんちゃって。
ミリアム先生、不正してた資料書き換えとかするんじゃない?とか私は思っちゃうけど……無駄って言ってたし学園長が何も言わないならいいのかなー?
学園長はバーキング先生と連れ立って私と真逆の位置の人からポーションの査定をし始めた。
結局私のポーションはどうなるのだろうか?
そして、未だにじーとこちらを見てくるノワールレント様……そろそろ私から視線外しませんか?
私何もしてませんが。大人しくポーション作っただけ。




