1年生春27
「おや、一体これは何事ですかな?」
ドアが開いてイケおじ……では無くどっちかと言うと枯れた感じのおじさんいや、おじいちゃんが入って来た。
学園長のトーマス・ヤンソン氏だ。
「学園長……授業中ざます」
「学園長、お伺いしたい。この学園の精神は?」
「ん?誰もが平等に学問をおさめるじゃな」
「それは貴族が平民を使役するということですか?」
「なんじゃ?そんなわけなかろう。等しく平等じゃ。レインハルト、そなたも等しく同じただの生徒じゃ」
「では、教師が学生を酷使する宣言はどうお考えですか?」
「なんじゃ問答か?それはありえないじゃな。手伝いを頼む事はあっても各研究室、それぞれがそれぞれの研究の手助けを依頼するだけじゃ。生徒も自分の研究をする。教師はむしろその手助けじゃな。アドバイスをする」
「安心致しました。私の認識と相違ありませんでした。その上でお伺いしますが、先程ミリアム先生は彼女のポーションをFランクとしました。学園長はどう付けられますか?基材はこのレベルです」
そう言うと殿下は私の残りの基材をつまみ上げた。
「確か魔力水にも何かしてたよね?」
殿下にすっごい綺麗な笑顔で見られました。
恐れ多すぎてというか口は開きません。高速で首を縦に振るだけです。
ええ、赤べこです私は。
「これは……」
早いですね、ノワールレント様……いつの間に真横に来て、なんで私が濾すのに使ったふきんの中覗いてるんですか?
私が濾してる時ってご自身の作業されてたはずですよね?
「確かクリーンをかけながら2.3回濾してましたよね……」
「汚れておるな……魔力水はどこから持ってきたのかね?サーシャ」
「あ……あの……み、ミリアム先生から、わ、渡されました……」
「ほう」
「なっ……自分で汚しておいてわたくしのせいにするざますか!」
「彼女が基材に何かする暇はありませんよ。何せ最初に取りに行ったのに、最後に渡されてましたから。僕がずっと見てました」
「あ、そうです」
思わずノワールレント様の証言に相槌を打ってしまう。
ギロリとミリアム先生に睨まれる。
ひっ!やっぱり般若……般若がいるよ……いや、鬼女かな?
「ミリアム女史、この基材はどこからの納入品ですか?」
「ちゃんとした所ざます。由緒正しき王宮御用達の店ざます」
「ミリアム女史、まさかグラウディング魔法薬店からではないじゃろうな。あの店は今後学園の方では購入しないと教諭会で話をしたはずだが?」
「そ、それは……王宮御用達は王宮御用達ざます!その辺のチンケな庶民の店で買うよりは良いものが置いてあるざます!」
学園長がゆるゆると首を振る。




