1年生21
「……努力しよう。まずは結果を出さなくては」
「結果は出します。研究室の所属届出書ありますか?」
「これだな」
「書きます!」
「「あの、私達も入ります!」」
「え!?」
それまで静かにしていたカルナとマリアが緊張しながら声を上げた。
お貴族様の娘さんが畑仕事?大丈夫なの?
「畑仕事だよ?、力仕事だよ?」
「私はガーデニングはしておりました」
「私は剣術の稽古はしてました。畑仕事が何をするか分からないけれど私たち下級貴族の娘だから蝶よ花よと育てられたわけではないわ」
「はい!農作業道具に抵抗は無いですし、領地では農作業もほんの少しだけ」
「それに……恥ずかしながらそれほど金銭も余裕がある訳ではありませんの。最近はペイラムでさえも高くなってますわ。自給自足ができるなら正直ありがたいのですわ」
「わたくしも。それに体力作りにもなります」
「「お願いいたします」」
「ああ、人が増える分には歓迎だよ。一緒に頑張って体力作りをしような」
マリアさんや、金銭的理由暴露して大丈夫なのかしら?
私も貧乏だから同じ理由に少しほっとする。
2人とも迷わずその場で所属届を出した。
もっと仲良くなれそうで嬉しい。
あ、もちろん教室では節度ある対応を心がけます!
2人の貴族としての行動の妨げになっちゃダメだからね。
私は速やかに授業が終わったら出てくのでご安心を!たまに一緒にご飯食べれたらくらいで。
お貴族様色々しがらみありそうでとっても大変そう。
なんて思考を横道に逸らしていたらナイデアール先生が声を上げた。
「よし、じゃあ、『防音魔法キャンセル』ヤンフリート、奥にいるラングラーとパリスを呼んできてくれ。多分いきなりの防音魔法で何があったかやきもきしている」
「はい」
既に全員が研究室にいたのね。顔合わせドキドキする。
良い先輩でありますように。
ドアが開いて2人の男の人が入ってくる。
お貴族様にしては割と平凡……失礼、お貴族様は顔が良いから。
濃紺の髪に濃紺の瞳のラングラー・ダリス様が6年生。
オレンジの髪に赤の瞳のパリス・セージ様が5年生。
おふたりとも伯爵家らしい。ちなみにタルタム先輩は子爵家だそうだ。
皆さん何故か眼鏡族……穏やかな優しい笑顔を浮かべて新1年生の所属を喜んでくれた。
平民に指導されることもなんとも思わないらしい。
むしろ畑がきちんとできる可能性に驚いていた。
「では早速!どうすればいい?サーシャ君」
「皆さん、私は平民ですので呼び捨てください。今、この研究室にあるペイラムを見せて頂けますか?」
「これだな」
保存箱から萎れたペイラムが取り出される。『鑑定』わーお、薬効殆ど抜けてるじゃないですか。
どこぞの魔法薬店をおもいだすなぁ……
「これは……ちょっと使えません……どこから仕入れてます?」
「グラウディング魔法薬店だ」
「すぐ、仕入先をマリアハルト魔法薬店に切り替えてください。間もなく王宮御用達は変わります」
「「「え!?」」」
「ご内密に。タリバさんが怒ってましたから」
「先生に力があるなら学園全体の仕入れ先を変えた方がいいかと。ただ急だとマリアハルト魔法薬店だと数が揃いませんね」
「ああ、力は無いが学園長に伝える」
「んーこれが使えないなら……そうだ!皆さんはペイラムがどこに生えるか知ってます?」
「どこにでも生えるという話だが」
「枯れるんだよね」
と、ラングラー先輩とパリス先輩。
やっぱり学園内に生えてるの知らないんだね。
上級生でも外に採取に行かなさそう。
お貴族様って必要な物を用意させて、その用意されたものを使うだけぽいね。
悪い意味じゃなくて自分で取りに動くってことが頭にないんだろうな。
あれ?平民の魔法薬師はどうなんだろうね?もしかして私が規格外??




