1年生春20
「タント・ナイデアールだ!君か?畑が作れるのは!誰だ誰に師事していた!」
沢山あるのか無いのかハッキリしてくださいと言いたくなる名前だな……は、いいとして。
まずは挨拶これ大事!
「サーシャです。平民です。新1年生です!師事していたのはタリバさんです」
「タリバ……」
「あの!ライラック老師か!?」
「老師?」
「特別宮廷魔法薬師のタリバ・ライラック準侯爵だ!」
「え?準侯爵?」
「そうだ!誰よりも魔法薬に精通していて、ペイラムだけでなく様々な薬草畑をお作りになり、特別に準侯爵を王家が作り授与されたんだ。その地位は王族に次ぐ地位だ。ハッキリ言うと他国に逃さない為の地位だ」
「でもタリバさんは王家、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵の順番だって言ってました」
「あの方は貴族が嫌いだから自分の地位を言うわけが無い」
「確かに!」
ポンと手を打つ。すっごく嫌ってたから教えてくれる訳が無いか。
そんで、先生、ハッキリ言い過ぎですね。内心で苦笑する。タリバさんそりゃ貴族が嫌いになるよね。逃さない為って。
「つまり君はタリバ老師直弟子!もう二度と弟子は取らないと言ってたタリバ老師の!」
「やっぱり師匠!」
ギロっとタルタム先輩を睨むとバツが悪そうにする。
1年生しかも入学初日を捕まえて師匠とはどういうことだ。まったく。
「サーシャ君!畑を作る手伝いをさせて下さい!」
先生から頭を下げられた。普通逆よね?
畑はやってみなければわからないのが正直ある。
こう尽く王都で畑が枯れるなら何かしら問題があるのかもしれない。本当はフィールドワークしたい……この辺りの森ってどうなってるんだろう?
あ、でも学園内にもペイラム生えてたからきっと大丈夫。となると世話の仕方や畑の水はけとか肥料とか……と、いうかお貴族様ペイラムこの学園内で生えてるの知ってるのかな?多分気づいてない。自分達で確認してもらうのが先かな。
あとは……タリバさんに言われてた論文……あ、そうか、先輩に押し付けるか!
「私は畑がやりたいわけではありません。この研究室は魔法薬やポーションはつくれますか?」
「ああ、もちろん。最近の薬草はどれも薬効成分の残量が悪くて畑の研究を進めているところなんだ。昔の資料を漁ると薬効の良い薬草を作り、それを様々な魔法薬にするために研究していたようだし。元々は薬草と魔法薬の研究をするところだから」
「次に畑がちゃんと出来たら論文を誰か書いてくれますか?」
「君が書けば……」
「私では説得力がありません。もちろんタリバさんの名前出せばある程度は大丈夫とは思いますが、平民のしかも村娘の10歳が書いた論文を誰が信じますか?失礼ですけど殆どのお貴族様は村娘の言うことを信じませんよね?」
「それは……信じる人もいるはず」
「気休めは結構です。タリバさんの名前を出せば、私の出身を調べ、タリバさんの所に行き着くのは簡単です。が、タリバさんの所に押しかけたらタリバさんブチ切れます。国外へ出てくかもですね。あの方村ののんびりした生活気に入ってましたから」
「……有り得るな。魔法薬単純馬鹿が多いからな」
「それなら、失敗結果も踏まえて、他の方に書いて頂ければと思います。それに私、論文の書き方知りません。今日が授業初日ですよ?」
「あ……新1年生か!」
今気づいたとナイデアール先生は目を見開く。
連れてきたタルタム先輩も驚いている。
いや、自己紹介で新1年生って言ったよね?
「分かった。ならば共著にしよう。ヤンフリート君が今一番熱心に畑をしている、君のこれまでの結果とこれからの結果を踏まえて論文を書いて提出しなさい」
「わかりました。確かに1年生には論文は難しいですよね」
「あと、もうひとつ!畑活動をしない人に薬草はあげないでください。あくまでも労働した人のみに権利を!学園長でも基本はダメです。多分絶対他の研究室が取りに来ます!こんなに人が少ない研究室なら畑の薬草むしり取られます!畑の世話係の研究室になります!そんな研究室なら入りません!」
何度でも言おう。私は畑仕事がしたいんじゃない!魔法薬が作りたいのです!




