1年生春11
「お前はマイペースだな」
「どうやったらそこまで魔力が綺麗に動くんだ?」
「ノワールレント様!イメージですよ!クリーンは食器洗いしてみるといいかもですよって、食器洗いしませんよね。えへ」
やらかした。お貴族様が食器洗いする訳ない。
そっと怒ってないか様子を見るとブツブツとなんか言ってる。
「そうか……やれる事は実際やってみればいいのか。魔法はイメージだな確かに。普通の魔法も詠唱短くなるのか?サーシャ嬢、普通の魔法も詠唱が短くなるか?」
「え?さあ?普通の魔法が分かりませんので」
「え?あ、そうか。村じゃ生活魔法だけだったな。すまない。続きをどうぞ」
「あ、はい。じゃあ、えーと、この辺で一番高くて綺麗な山ってなんですか?」
「?霊峰ミッターマイヤーかな」
「ありがとうございます。『ウォーター』」
勝手なイメージだけど高くて雪被ってて、すっごく綺麗な山の湧き水をイメージする。霊峰ミッターマイヤーの湧き水をカップ半分。
万が一多く出ちゃダメだからね。
半分くらい半分くらい。
スルッとお水が湧き出てちゃんとカップに半分収まった。
「やった!成功!」
「この馬鹿!」
ゴッチンと頭に衝撃。な、殴られたー!痛い。
「タリバさん、酷いー!」
「はぁ……全くもう変な事聞くから鑑定を念の為かけてみれば……鑑定してみなさい」
「え?『鑑定』」
【霊峰ミッターマイヤーの湧き水(魔力水S) 品質S 飲料可 飲むだけで魔力回復。100ml 1,000万ペーレ 】
「は?え?は……」
「うわー凄すぎますぅー」
同じく鑑定をしたっぽいライラ様が引いている。
ノワールレント様は鑑定持ってないのか?ライラ様とタリバさんと私の顔をチラチラ見ている。
「これは見なかったことにして、私が保管しよう」
「あ、そんな!私にも!お恵みを!お金は払います!霊峰の湧き水!!分けてください!」
「霊峰の湧き水……え!?」
「わかったわかった、ノワールが固まってる。口に出すな。2人ともこのことも黙っているんだよ」
ギロリとタリバさんが睨むとコクコクと2人が頷く。も、申し訳ありません。
見ていると鞄から小瓶を取り出してふたつに分けて片方をライラ様に渡した。
「支払いはどこへ?」
「サーシャ、口座持っているかい?」
「も、持ってません」
「明日作るか。連絡する」
「え?お金なんて……失敗だし」
「金なんて今はあればあるだけ便利だ。冒険者雇って外に出られるし、機材は高い。だが二度と……いや、この学園を卒業したら自由にすればいい。ただし、誰にも見られるなよ」
「は、はい。そうします。えっと、もう1回お水出しても?」
「イメージを抑えろ。こんな事言うのは初めてだ」
「うっ……えーと、『ウォーター』」
えっと、その辺の綺麗な森の湧き水、またはお山の清水。うーん富士山の天然水!くらいのお水飲めるやつ!冷えててうまうまー!
コップ半分!
「『鑑定』」
【森の湧き水 品質A 飲料可 ひんやり冷えた湧き水、飲むと美味しい】
「ど、どうですか?飲めます」
「これなら良いだろう。なんで冷えてるのか分からないが……」
タリバさんを混乱させてしまったようだ……
お水冷たい方が美味しいと思うのだけど。村の井戸水も汲みたてが美味しかったし。
ノワールレント様もライラ様も唖然としている。解せぬ……




