1年生春10
おっとそんな事より生活魔法!えっと火はファイア。人差し指を立てて。
「行きます!『ファイア』」
その途端目の前に火柱が出現。
「え!?」
「このお馬鹿!『魔法壁』!『消去魔法』!『防音魔法』!サーシャ魔力を止めな!」
「ふぁい!」
タリバさんの声に慌て魔力を止める。なんでそんなこと思いつかなかったんだろう。
「び、びっくりした」
「このお馬鹿!魔力流す時にちゃんと炎の大きさはイメージしたのかい?」
「あ……」
「流す魔力量もちゃんとそれによって変わるだろう。魔法はみんなそうだから気をつけな!お前はまだ魔力を増やしてるんだから余計に。……あ、しまった」
「え、なんですか?」
どうやら私だけが分かっていない。
ライラ様もノワールレント様もさっきまでの穏やかな顔ではなく、驚いた顔から一転して獰猛な肉食獣のような顔になっている。
「お前達……ライラとノワール、誓約魔法を受ける気はあるかい?無ければ今のは聞き流せ」
「無理です」
「僕も増やしたいです。誓約魔法受けます!」
「私も受けます?」
とりあえず乗っかって見たら盛大にタリバさんに溜息を吐かれた。
どうやら私の事らしい。
「面倒だが仕方が無い。『誓約魔法』ライラ・アーネスト、ノワールレント・ディライト、その名に誓え。世界神マルグリットに誓え。サーシャの不利になる事を話さぬと誓え。ただし、どうしても伝えたい相手のみサーシャとタリバの了を得たのちひっそりと誓約魔法を用い伝えられるとする」
「ライラ・アーネスト誓います」
「ノワールレント・ディライト誓います」
「簡単に言うとだ、サーシャは魔力量を増やし続けている。独自の方法で」
「「え!?」」
「そんなに珍しいですか?」
「サーシャ、普通はだ、10歳頃までに総魔力は決まる。だから街の子どもは5歳過ぎに生活魔法を覚えて練習し、必要な者がより上級な魔法を勉強する。田舎だからラカル村は10歳だがな。貴族の大人側も大方の魔力量が固まるまで魔力の動かし方こそ教えるが8.9歳頃までポーション作りさえ教えない」
「え、でもタリバさん私には6歳からガンガン教えてくれてましたよね?」
「お前が不思議な魔力操作を独自でやっていたからな。魔力量が増えた時には驚いたがポーション作っても倒れなかったからそのまま色々と教えただけさ」
「師匠……スパルタ過ぎません?」
「ひょいひょいついてこられたらスパルタでは無い。適量だ」
「……タリバさん」
「で、肝心の魔力の増やし方は?」
「え?……あの」
チラッとタリバさんを見ると鷹揚に頷く。
「魔力をお腹から順番に身体の中を動かすんです。魔力枯渇寸前まで」
「「は?」」
「最初は胴体だけで枯渇すると思います、できるようになったら手や足、頭、もっと細かくどんどん細かく、細く太く身体の中をぐるぐると。枯渇してくると気持ち悪くなるのでそのまま寝ます」
「寝る前に……魔力を動かす……」
「効果あるかは分かりませんけど、私と、気付いた友人に教えたら2人とも増えたそうです」
「今日から寝る前に行う。魔力はあればあるだけいい」
「大人でも増えるかしら?魔力の細かい操作には適してそうね。私もやってみるわ」
ノワールレント様は何やら意思固く、ライラ様は何やら嬉しそうに、その決意を固めているようだった。
「今、やるなよ、あと、枯渇には各々で気をつけよ。決してサーシャのせいにならぬようにな」
「「はい」」
「ではサーシャ、続きの生活魔法……その前にもうひとつ便利な魔法を教えてやろう。このカップを借りるぞ、『クリーン』」
「わっ、すごい!」
カップの汚れが一瞬で消えた。
「洗わなくても済むからな便利だ。だが、道具は緊急時以外は丁寧に洗えよ」
「はい!この魔法やってみてもいいですか?」
「これをどうぞ」
「わ、私もやってみたいです!」
目をキラキラさせるノワールレント様、生活魔法と言ってたけど知らないのかな?確かにお貴族様が自分で片付けしたりはしないか。
「貴族は自分で片付けをしたりしないからやはり知らぬか。畑をやるなら便利な魔法だぞ」
カラカラと笑いながらノワールレント様へタリバさんが他のカップを差し出す。
何となくお互い目を合わせてから同時に発動させた。
「「『クリーン』」」
私の目の前のカップはピカピカ、ノワールレント様のは半分というか所々残ってる。
クリーンって前世の魔法憧れの1つだったからねぇ、部屋の掃除に洗濯、体操服洗い忘れた時とか本当に欲しかったよね。あと、上履き。だから私にはイメージが湧きやすい。
お貴族様はお洗濯や食器洗いなんてしないだろうし。仕方ないかな?
「やはり難しいな」
「イメージ。『ファイア』」
人差し指指の先に小さな炎、ロウソクの炎をイメージして、チャッカマンに変えてみる。少し炎が大きくなった、成功、ゆっくり魔力も細く細く出して炎を細くして魔力供給を止めると、小さくなった火が消えた。
「ファイア出来ました!次、水ですよね!」
ウキウキしてタリバさんを見上げると呆れた目をしてこっちを見てた。
なんかやらかした?




