1年生春6
「お前も枯らしたのかい?そっちの……あーミリーもいてかい?」
「はいー枯れましたーミリーは街の子なので畑仕事はやった事が無くて。2人して頑張ったんですけど1年前に最後の株も……今は採取に行けてないので仕入れたのを使って、どうにか根付かないか頑張っているところですー」
「ふむ……リリアリス、サーシャを雇うつもりは無いかい」
「へ?」
「この子は畑が作れる。田舎娘だからね。うちの薬草園の世話もしていた」
「まさか!サーシャちゃん!」
リリアリスさんがガバリと起き上がって私の両手をリリアリスさんの両手で包み込む。
顔と顔の距離がおかしいよね?
「サーシャちゃん!ペイラム畑作って!」
「え?学園が……」
「休みの日だけでいいから!お願いします!」
「え?え?」
「サーシャ小遣い稼ぎだよ。仕事先を2年間は探すって言ってたろ。12歳からは冒険者やるとしても」
「え?ペイラムの畑の世話ですか??特に大して……」
「難しいんですぅ……お願い!日給1万ペーレでどう?」
「い、1万!?」
月10万ペーレあったら村では生きていける。
その1/10……破格過ぎじゃない?
「ついでにポーションも作ったら買い取ります!値段は物次第だけど!」
「ポーション買ってくれるんですか!?」
「タリバさんお墨付きをむしろ逃がしたら馬鹿のすることです!」
「その馬鹿はいたけどね」
苦味潰した顔でタリバさん。
苦笑を浮かべるしかないリリアリスさん。
私もどんな顔したらいいか分からない。
「分かりました。でも肝心の植えるペイラムが無いですよ?」
「学園が始まって落ち着いたらリリアリスに連れて行って貰えばいい。これも冒険者資格を持っている はずだ」
「ひぇ……ありますけど……ここ最近は……いいでしょう護衛を雇います!行きましょうサーシャちゃん!」
「師匠私も!」
「んーーミリーいくつだっけ?」
「9歳です!」
「ダメかな。ちょっと小さい。せめて学園受かったらかな」
「そんなー師匠ー」
「なんの資格もない子を家族でも無いのに出入りさせるのは面倒なのよ」
「うっ……お留守番してます」
へーやっぱり大変なんだ。そうだよね、命の責任があるものね。
改めてタリバさんに感謝だね。そんな面倒な事をしてくれてる。
そしてバイト先もゲットさせてもらい、とりあえず森だか平原だかに行ける!やった!
他の薬草も採取しちゃお!
「あー他の薬草も採取する気満々だねぇ。それなら学園のどっか一部で畑作って論文でも書いたらどうだい?」
「論文?ってなんです?」
あ、一応卒業論文は書いたから書けなくは無いけど、村から出たこと無い子どもが知ってるわけないからね?あと、この世界の論文と私の知ってる論文が同じとは限らないし。
「そうか、さすがに読ませた事は無かったか。うーん、まあ学園で教えて貰いな。育てる事が出来たらになるか」
「タリバさんが書けば……」
「そんな面倒な事はしないよ。中央に戻るつもりも無いからね」
「リリアリス様が書けば……」
「人の功績を取るつもりはありません。あと、貴族籍ですけど今はほぼ庶民なので呼び捨てで!」
カウンターからずいと身を乗り出して迫られた。
危ないですよ?
圧が凄い。私も楽だからいいか。本人が良いと言ってるのだし。
「……リリアリスさん……にします。人の功績と言ったら私も……」
「サーシャは弟子だからね」
「師匠が纏めるのめんどくさい場合は携わった弟子の功績として発表出来てしまうんです。そして優秀な弟子を持ったと師匠の評価も上がる」
「なんと……」
中央……タリバさん偉い人確定。そして少なくともペイラムの育て方で論文は無いらしい。
書いても良いけど10歳で書いて説得力なくない?
保留かな。
でも学園でペイラムとか薬草育てるのやっぱり面白そう。そんな部活とか研究室とか無いかなー
そんなのがあるのかどうかも知らないけどね。
「まともな教師がいるなら薬草園作る研究室があってもおかしくは無いからね、その辺はサーシャの好きにしたらいい」
「はーい」
やっぱりある可能性あるんですね。
入ります!変な先生じゃないといいな。
「あ、タリバさんお茶!今更ですけどお茶入れるのでおしゃべりしましょう!ね?サーシャちゃんもー!これからお世話になるんだし!リリアリスさんお菓子作ったの!」
「リリアリス……お前さんは相変わらずだねぇ」
カウンターの中に招き入れられて奥の住居スペースへ案内される。
ミリーは残念そうに店内に戻って私達の後に入ってきた人の対応をしている。
結局この日はリリアリスさん、時々ミリーとのおしゃべりでタイムアップ。
楽しかった。王都の情報がちょこちょこ出てきたので脳内メモに書いたよ。
タリバさんが楽しそうだったのが一番印象に残ったよ!
服、午前中に買いに行っといて良かったよ!




