1年生春5
取り消しさせる……タリバさん偉い人なんだね。薄々分かってたけど。
次の店は先程のグラウディング魔法薬店よりこぢんまりとしている。
お店の名前はマリアハルト魔法薬店。
カラランと軽いベルの音が鳴る。
店内は薄暗くやっぱり薬草の香りがする。
入口近くには投げ売りっぽいポーション、薬草が、雑多に入っている。
鑑定すると本当に色んなのがごちゃ混ぜのようだ。
ポーションも品質Dの売値が500ペーレ程度の投げ売りだ。
鑑定結果と大差が無い。惜しいD+のもあるからそれ選べたらラッキーだね。
奥に進めば進む程珍しかったりする薬草があるがどれもしっかり状態が維持されてそれなりの値段だ。
最奥にほど近い場所にあったポーションを鑑定してみる。
【ポーション 品質C 1000ペーレ
原材料 ペイラム、精製水】
【ポーション 品質B+ 3000ペーレ
原材料 ペイラム、精製水、ペイガム】
【中級ポーション 品質C 5000ペーレ
原材料 ペイラム、精製水、ペイガム】
「ふーん、こっちはまともっぽいね」
「いらっしゃいませ!入口近くのが、新人冒険者向けのポーションです!品質は落ちますが浅めの傷なら治りますよ!」
「リリアリスはいるかい?」
「え?師匠ですか?失礼ですけどお名前は?」
「タリバが来たと言っておくれ」
「少しお待ちください」
声をかけてきた丸い黒縁眼鏡の長い三つ編みの女の子が奥に引っ込む。
エプロン付けてたけどあの子も魔法薬師なのかな?
「タリバさん!会いたかったですーう!」
中から転がるように綺麗な女性が出てきた。
なんていうか、ボンキュッボン!
亜麻色の髪に翡翠の瞳。ふんわりと優しそうな人だ。
「リリアリスはどうやらまともなようだね」
「あはは……爪に火を灯しながらやってますよ」
「王宮御用達には?」
「残念ながら……売り込み下手なんで」
「商品の仕入れは?」
「指名料金払って何人かにやってもらってます、がなかなか今の子達は状態良くは……」
「2年待ちなこの子の騎士様が来るからね」
「ちょ!タリバさん騎士じゃないって!」
「タリバさんこの子は?私はリリアリス・マリアハルト。この店のオーナーです」
リリアリスさんが丁寧に私に挨拶してくれる。
苗字があるからお貴族様?
「あ、私は」
「サーシャだ。私の最近の弟子だ。今度ペイラムに入る。よろしく頼むよ」
「え!優秀なんですね!」
リリアリスさんでは無く丸い黒縁眼鏡の一般的な茶髪長い三つ編みの女の子が思わずといった感じで口を開いて、しまったという顔をする。
「この子は私の弟子でミリーよ。仲良くしてやって。タリバさんもう弟子は取らないって言ってたのに。私、断られたのにー」
「面白い理由で突撃してきたからついね。そして優秀だよ。これもあと2年で冒険者になるから指名を出すといい。この子と同じ村の仲間も纏めてきちんと採取出来る」
「やった!ポーションは?作れる?」
「上級さえ作れる。ポーション系は一通り仕込んであるよ」
「凄いです!私まだあそこの投げ売りポーションしか作れません」
「マリリンのとこよりマシだよ。精進しな」
「はい!」
ミリーは既にタリバさんに馴染んでいる。
若干置いてきぼりになってる感がするけど、タリバさんに認められて嬉しい。
「王宮御用達に口出しをしに行く。この店を推薦するからどうにか用意できるようになりな」
「え?」
「マリリンの所は最低だよ」
吐き捨てるようにタリバさんが言う。
リリアリスさんは鎮痛な面持ちでため息を吐いている。
「やっぱりですか。最近王宮魔法薬の品質が下がったともっぱら噂で……個人的に宮廷魔法薬師からうちへの仕入れが増えてるんですよ。冒険者に何人か指名にしてようやく追いついている状態で。ただでさえペイラムはお金にならないですからね。王宮にあった薬草園も今は枯れてるとかなんとか」
「ペイラムを枯らすのは相当なんだがねぇ。これだから貴族は」
「あうー私も貴族ですし、タリバさんもですー」
「私は心から貴族になったつもりは無いよ。勝手に付けられた肩書きだ」
「そうなんですけどーペイラム案外難しいです。私も裏庭枯らしました」
「え?」
私は思わず驚いて声をあげてしまった。
あんなにどこにでも生えるペイラムが難しい?タリバさんの畑ではペイガムと一緒にぐんぐん生えてたし、私も自分の家の畑に小さく作った薬草園でこの2つはぐんぐん成長したのだ。
鉢植えの相棒は持ってきたのはタリバさんの畑から株分けしてもらったやつだけど。
リリアリスさんがカウンターの上に突っ伏す。
ミリーちゃんも居心地が悪そうだ。




