1年生春4
翌日お昼ご飯を近くの食堂ですませると、タリバさんと連れ立って歩く。
目指すはそこそこの物が置いてあるはずの魔法薬師のお店2軒。
まずは1軒目のグラウディング魔法薬店の扉を開ける。
少し薄暗い店内にはポーション各種にペイラム等の器材や、薬草素材が置いてある。
「うわ!凄い」
「……うん?」
「あれ?」
その品数に驚いたがよく見るとなんだか素材の様子が……手に取る事はせずに鑑定をかける。
売値は30ペーレだ。
【ペイラム 品質F 10ペーレ ペイラムの茎葉 萎れて薬効も抜けている】
「タリバさん……これ……」
「ちょいとマリリンはいるかい?」
「いらっしゃいませ。マリリン様とお約束はございますか?」
「無い。が、タリバが来たと言っておくれ」
「お約束が無ければお取次ぎ出来ません」
「いいから、行ってくるんだ」
ギロリと鋭くタリバさんが睨む。
受付の女の子は小さく「ひっ」と悲鳴をあげると奥に消えていく。
「全く誰だい?あたしはアポイント無しじゃ受けないだよ」
「マリリン、よくそんな口が叩けるね」
中から出てきたのは黒い髪に無理やり銀色入れましたみたいな色合いの髪のケバい女性だ。
あれ地毛なのかな?
口紅の真紅が目立ってこう全体的にはぼやけた印象。
化粧とったら素朴な顔なんじゃ?とつい思っちゃった。
どちらかというと夜のお仕事……この世界の化粧は分からないけど、そんな印象の派手な化粧。
あんまり好きじゃない。
歳の頃は50代?
不機嫌な顔から、タリバさんの声を見ると途端にお愛想笑いへ。変わり身凄いな。
「その声はタリバ様!あらようこそおいでくださいました。かなりのものが揃いますよ?今後ともご贔屓に」
「この品質でよく、それが言えるね?ゴミじゃないか」
「ちゃんとした物は奥に置いてあるんだよ。何がお望み?」
「ここは王宮御用達じゃなかったのかい?」
「今でもそうだよ。当たり前じゃないか」
「なら、何故薬効も抜けた物が堂々と売りに、しかも高値がついてるんだ?」
「目利きじゃないやつにはちょうどいいだろ?うちの商品を使っているというブランドで売れるんだ」
「……行くよサーシャ。マリリン、見損なったよ」
「ふん!大口叩けるのも今のうちさ!お前には売らないよタリバ」
「必要無い」
怒りを抑えた硬い表情のままのタリバさんに背中を押されて店を出る。
店内の商品をレベル上げがてら鑑定しまくったが、どれも最低品質で、薬草は鑑定の値段の5~10倍以上の値段が付いていた。
ポーションも高そうなケースに入ってはいたものの中身はものすごく苦い魔力と素材のゴリ押しの品物だった。値段はポーションの相場はまだ分からないけど鑑定さんは一律50~100ペーレしか付けていなかったね。
無言で歩くタリバさんについて行く。
これはかなりご立腹。でもあの品質と値段じゃね……ぼったくりもいい所だ。それが王室御用達……えーってなるよね。
「悪かったね。あの店では買ってはダメだ。王宮御用達も取り消されるだろう。いや、取り消しをさせる。あれは悪い貴族に成り下がった典型だよ。関わってはダメだ」
「はい」
「もう1件は、あ、ここだ」




