1年生春3
切れなかったから長い
「明後日の午後1時に弟子の1人に会うことになったよ。向こうも今年ペイラムに入る弟子を連れてくるから顔合わせだ。向こうは貴族だが気にする事は無い」
「いや、気にしますよ!?お貴族様なんですから」
「弟子には変わりがないから、気にするな」
「いや、あの、わかりました」
キロっとタリバさんに睨まれて仕方なく肯定の返事をする。
こうなるとテコでも了承しないと動かないのはここ数年で把握している。
にしても、お貴族様か。良い人だといいなぁ。
せっかくの食事の味も後半は分からなくなった。
大人しく食べ終わって部屋に戻る。
「『アイテムボックス』なんちゃって」
カッと目の前が光って空間が小さく空く。
「え!?」
「どうしたんだい?」
「タリバさん……どうしよう、穴が空いた」
「は?どういうことだい?」
「空間魔法と適当に箱を思い描きながら唱えたらここに穴が空いてる……」
「まさか!これを入れてみな?」
タリバさんから手渡されたのはただの紙。メモ用紙だ。
恐る恐る裂け目に入れてみる。
「入った。あ!メモ用紙1って……」
「……空間魔法だね。容量はどうなんだい?一説には魔力量によるとか」
「中は分かりません。時間経過も見た方が言いですよね?タリバさん氷お願いしてもいいです?」
「ああ」
持ってきていた木のカップに氷が落とされる。
ついでとばかりに湯も別のカップに出された。
2つのカップを慎重に裂け目に入れる。
「これ、どうやったら閉じるん……閉じた!」
「サーシャの思い通りになるんだと思うよ。中に入ってるものはわかるのかい?」
「えっと……あ、分かります」
ステータスボードみたいに目の前にボードが出てくる。
氷[コップ]1
メモ用紙1
湯[コップ]1
と、簡潔に書いてある。視線を外せば聞ける。見たいと思えば出る。
慣れればとっても便利だろう。
「空間魔法だろうね。サーシャこれは秘密だよ。全て魔法鞄のせいにしな。幸いにもそちらも本物だ。空間魔法が使えるのがバレたら国に囲い込まれる」
コクコクと頷くしか無かった。
あったら便利は思ったけれど使えるとは。
チートか?チートなのか?
「魔力量が無ければこれは出来なかった事だろうね。才能はあっでも最初に魔法を使う時、爆発的に魔力を動かせなきゃいけないからねぇ。まず魔力量と魔力操作が出来なければ鑑定魔法も空間魔法も花開かない。あとはイメージ力もだ。今の教育だと詠唱だかに力を入れているらしいが、魔法はイメージなんだよ。鑑定魔法は沢山観察して、多くの本を読み込んでこそ出来るようになるとも言われている。子どもの頃からの魔力量を増やす積み重ねや、本を読んで想像する力が昇華されたんだ。誇りに思いなさい」
いつもとは違う学者の顔をしてタリバさんが言う。
心に染みて凄く嬉しい。
本は種類を沢山読んだとは言えないけれど、ずっと繰り返し繰り返し読んできた。
学園に行けばもっと沢山読める。
ワクワクする。
空間魔法の説明はなかったけれどこれもイメージなんだろう。
転生……だからかな。
そういった知識は前世のアニメ、ゲーム、小説で沢山ある。
そして、調子に乗ってざまぁでズッコケた人も沢山読んでた。
注意しよう。調子に乗らない!
ざまぁは嫌だ!
調子に乗ったら薬草より、そっちに駆り出されるってことでしょ?
それに、持ち運び出来るからって戦争に駆り出されたら嫌だ!
「さて、30分ほど時間が経ったね。先程のコップ2つを取り出してくれるかい?」
「はい」
アイテムボックスオープン!唱えなくても思えばいいのか。ふむふむ。
出来た四角い空間に手を突っ込んでコップを取り出す。
どちらも何も変わらないつまり時間停止だ。
ついでに空間の中に顔を突っ込んで見る。
「サーシャ!?」
「はい?」
「顔が無くなるから辞めなさい。心臓に悪い」
空間の中はなんだか前世で見た宇宙の画像みたいだった。綺麗な星空。謎。
顔以上は中に入れない。
手は手だけ。
大きいの入れれるのかな?
何気なくベッドを入れと思うとすんなり入った。
焦って出ろって思うと元通り。
むしろちょっと綺麗。
ボードを見ると『埃、塵、汚れ』……
うん、ゴミ箱あるよね。そこに『埃、塵、汚れ』出すと、ふっさと汚れが中に落ちる。
「サーシャ?何したんだい?」
「大きいの入るのかなって。そしたらベッドの埃、塵、汚れが落ちました……」
「掃除いらずなのかい……」
「みたいです……なのでゴミ箱はゴミ箱へ入れました」
「そうかい……気を取り直して、コップはなんの変化も無い。つまり時間停止状態だね」
「ですね。少なくともベッドは入る大きさで実際どれくらい入るのかな……」
「実験はおいおいにしなさい。夜も更けてきいるからね」
「ですね。寝ます」
無理は禁物!私はまだ子どもなのだ!睡眠をしっかり取らなくては成長しない。
身長もまだ欲しいし、お胸もそこそこ育って欲しい。
なるべく栄養のバランスがとれた食事を心がけよう。
そんな事を考えているといつの間にか夢の中へ旅立っていた。
「やれやれ、末恐ろしい娘だね、全く。上手く私の弟子って事でその特異性を隠せると良いが……こればっかりは本人次第だからねぇ。幸い目立ちたくないって思っているらしいから、なんとかなると良いねぇ」
そうタリバさんが呟きながら掛け布団を直してくれたのは知るはずもなかった。
たまに切り時分からなくなるwので長い時も……




