1年生春1
サーシャ目線に戻りました!
「もうじき王都だ。降りる準備をするんだよ」
「はーい」
順調にたどり着いて私は王都の門の長蛇の列に再び並ぶ。
今度は仮の学生証があるから、タリバさんのおまけ扱いでは無い。
「宿で1泊して、明日か明後日には私の知り合いに会いに行こう。今日のうちに連絡が取れれば何とかなるはずだからねぇ」
「そんなに急で大丈夫なんです?」
「向こうが会いたいと言ってるやつだから都合をつけるだろうよ。一応アッテラの街を出る前に手紙は出してあるしね」
「そうなんだ」
アッテラの街は王都の1つ手前の大きな街だ。ここからほぼ丸一日の距離にある。
王都に入ってすぐに入寮するのではなく、いくつかタリバさんに付き合ってからの入寮になる。
顔繋ぎをしてくれるらしい。
人の都合もあるけれど王都の街を案内しつつなので数日タリバさんと過ごすのだ。
たわいも無いことを話しながら順番待ちをする。
「次!って!失礼しました!お貴族様」
「私は村の魔法薬師だよ」
「いえ、あ、はい。どうぞお通りください」
タリバさんの眼光に王都の警備の人がビビっている。
お貴族って聞こえたから実はそれなりの地位なのかなと薄ら思っておく。
わざわざこの長い列を並ぶのだバレたく無いと言うよりお貴族様扱いが嫌なのだろう。
身分証を見たら分かってしまったとしても。
「あんな図々しい貴族と同じになれっていうのかねぇ。全く」
「えっと……お貴族様は図々しいんですか?」
「図々しいのが多いね。中には気のいいのもいるけど極小数だね。サーシャの学年に変なのが少ないといいけどねぇ。近日中に会うのも貴族の息子だって言ってたから釘刺しておくよ」
「釘……ありがとうございます?」
思わず疑問形になった私にタリバさんは苦笑する。
「さて、宿の場所は前回と同じだ覚えているかい?」
「さすがに覚えてます!こっち!」
タリバさんを引っ張るように歩く。
久しぶりに見る王都はやっぱり広くて綺麗だ。
「この辺りは東門で東商業地区だ。別名学園地区。ペイラム魔法薬師学園だけでなく、騎士学校や魔術学校なんかがあるからね。この国の方針でお貴族様だけで構成された学校は少ないが、魔法薬師の学校が一番平民が少ないねぇ。学費がそれなりにかかるからね」
「そうなんだね。あの制服で歩いてる人が色んな学校の人?」
「ああ。学校によって違うが、どこかしらの学校に入っていれば3割引になることが多いからねぇ。学生証よりも服で証明してるのさ」
「さんわりびき……凄い」
「南区の冒険者ギルドのある方でも物は揃うが質が落ちる長く使う事を考えたらこちらで買い揃えた方がいい」
「薬草もですか?」
「薬草もだねぇ。店にもよるが指名で採取をまともな者にして仕入れたりしているから。今2店舗こっちにはあるはずだ宿を取ったら日用品の買い物がてら店を教えよう。ハズレが無いはずだ」
「タリバさんお願いします!制服無いけど3割引になる?」
「学生証をお見せ」
「あ、そか。てへ」
誤魔化し笑いを浮かべる。そうだった学生証があるんだった。
下手に遠い南区に行くよりいいのかも。
冒険者になったあとならまた色々違うかもだけれど、良いものを安く買えるのはありがたい。
「でも制服だけなら知らない人も買えてしまうんじゃないです?」
「無理だね。制服はそれぞれの学校で、学生証を提示して買うんだ。加護、今は付与だったかね。それを付けるからね。卒業時には外すからすぐ分かる。生地の素材感が変わっちまうのさ。稀に付与術が出来る人間はいるが大して多くはないからね。一応付与術も学園で習う筈だよ。ポーション瓶に稀に付けるからね」
「どんな時に?」
「瓶を割れにくくしたり、品質低下防止を付けたりだね」
「そっかー、できたら面白そう」
「覚えたらやってみな。珍しいところだと空間魔法とかもあるようだよ。付与魔法とそれが出来たら魔法袋が作れるらしい」
「へーすごい確率だね」
そんなたわいもない話しをしながら歩く。
宿屋に着いてほっと一息。
鞄から自分の持ってきた服を出す。
やっぱり王都の人の服装からするとかなり安物だ。
これは寝巻きや部屋着にして、1.2着新しいのを買った方がいいだろう。
これから案内してもらうお店で値段を確認しておこう。
絶対バイト探すぞ!おー!




