幼少編13
切れ目が見つけられず長いです。
3日目の朝、私はお昼ご飯を済ませてからタリバさんの家に向かった。
何故かカイルも一緒。
朝、タリバさんに納品した時に一緒に来るように言われたのだ。
なんでよ?
今日は久しぶりにポーション作りもしたかったのにやらせて貰えるかちょっと不安になる。帰りなって言われそうで。
「タリバさん、お約束通り来ました!あと、ポーション作りたい」
「お前は……とにかくお上がり。ああ、騎士様もちゃんと来たね」
「騎士じゃないってば、カイルは」
「どっちでもいいよ。さっさとお上がり」
「失礼します」
「……むぅ……お邪魔します」
「こっちだよ」
カチャリと後ろで鍵の閉められた音がする。
いつもながらどんな仕組みなんだろうか?
先を歩くタリバさんを追う。
外から見るとあまり広くは見えないのに中は結構広い。
奥まったところにあるリビングに通される。
「合格祝いだこれをあげるよ」
「ありがとうございます?」
「これって……鞄?」
「マジックバックだよ」
「「……え!?」」
「これから先必要だろうからねぇ、合格祝いと餞別だよ」
「そ、そんなこんな高価な物……」
「今となっては手に入れにくいからねぇ。作れる者もいなくなってしまったし。これには騎士様も登録するといい。私には二人で採取に行く図が見えたから」
「え!?俺、いや、えーと私がサーシャとですか?」
「お前さん、冒険者になったら王都に出るつもりだろ?」
「いや……あの……」
チラチラと私を見てカイルの歯切れが悪い。
なんだろうか?
「何?」
「サーシャ、サーシャが嫌じゃなければ俺は王都に出たらサーシャとパーティを組みたい。ずっとじゃなくても、サーシャが採取に行く時は絶対!女の子1人じゃ危ないし。多分ヒースクリフも一緒だと思うけど。俺たちパーティ組む約束してるんだ」
「え?あ、そうなの?え?でも私、足手まといじゃ……」
「採取に出る時慣れて無いと危ないだろ?冒険者雇うの結構かかるんだぞお金。もったいないだろ?」
「そりゃそうだけど……いいの?」
「ああ。ヒースクリフとも話してある。その代わりと言ったらあれなんだけど、ポーション俺たちに売って欲しい」
「え?そんなのあげるよ?」
「ダメだろ。商売道具なんだから」
「あ、じゃあ、私を連れてってくれた時のポーションは私持ちでとりあえずどう?」
「こらこら、そんな先の話はあとだよ。まずは登録しちまいな」
タリバさんからストップが入った。確かに先の話だった。
タリバさんの前にある鞄に向き直る。
サイズは肩掛け鞄の今の私には少し大きいが、成長期を迎えて人並みサイズになれば程よい大きさだ。
シンプルでどんな服にでも合う。
お貴族様の服は別だろうけど。
「この鞄は持ち主の魔力量に合わせて中に入れられるサイズが変わるんだ。サーシャ、少し指を切って鞄の底に触れな」
「う、うん」
ナイフでほんの少しだけ指先を切るとふつりと赤く血の玉が浮かぶ。
そっと零れないように鞄の蓋を開けて鞄の底にそっと血を触れさせる。
と、鞄が光り魔法陣が浮かび上がる。
「よし、それで登録完了だ。登録解除はサーシャだけの権限にしてあるからね。鞄の中のこの魔法陣に触れて解除を願うんだよ」
「う、うん。分かりました」
「じゃあ、騎士……えーとカイルだったかね?同じように登録するんだ」
「う、うん。いえ、はい」
タリバさんには丁寧な言葉で話すのを心がけているのであろうか?若干口調がおかしいカイルに鞄を渡す。
同じように魔法陣が浮かび上がる。
「出来たね。サーシャ解除してごらん」
「え!?あ、練習か。えっと解除」
小さく魔法陣が浮かび上がると、霧散した。
「カイル、鞄はどうだい?」
「えっと、普通の鞄です」
「もう一度登録してご覧」
「はい……あ!底が無い!」
「よしよし機能しているね。いいかい、これは秘密だよ。登録した人間以外は出せないからね。持っている事自体は問題無いと思うが容量は秘密だ」
「私の魔力量なんて大したこと無いよね?」
元々そんなに多くないはずだ。確かに毎日特訓はしていたけれど、そこまで増えていないと思う。
「元々ここに来た時は中の下の量だったけれど、今は上の下までは増えているよ。まだ増やしているんだろ?」
「え?そんなに増えてるんですか?」
「自分なりに見つけた方法だろうし、朝来た時に疲れ切ってもいないからほっといたけど、間違いなく増えているよ」
「ということは私も……」
「カイルもやってるの?」
「ああ、サーシャに教えて貰ってからほぼ毎日。ヒースクリフと修行してた時はそこで魔力を使ってたからやってないけど」
「カイルの方は中の中かね。もう少しで中の上くらいに届きそうだが、剣を扱う人間にしたら多いんじゃないかね」
「そ、そうですか!嬉しい!」
「つまりかなりの量が入るから引越しに使うといい。パーティを組んだら中の物は時間停止するから倒した獣や魔物なんかも入れるといい。生きた物は入らないから注意するんだね」
魔力量に喜ぶ私たちに淡々とマジックバックの注意事項を、言われる。
慌てて聞く体制に戻る。
うううっ頑張ってフラフラになってた甲斐があったよ!!
カイルがやっていたのが少し意外だったけれど。
それだけ冒険者になるのが本気だったんだろう。
剣士でも魔法が使えた方が有利らしいから。
「カイルにはこの小さいのをひとまずやろう。採取したものを入れてくるといい。これは登録が無いやつだから取られないようにするんだよ」
もうひとつ巾着みたいなのをタリバさんが引っ張り出してきた。
地味な色の古ぼけた袋。
「これで見た目の10倍は入る。時間停止も一応付いているからこそ泥には注意するんだ。さすがに鳥、兎が数匹程度しか入らないが、村の入口付近まで持って来れるだけで随分楽だろう。時々肉を分けてくれるからね、おまけだ」
「ええ、いつも片手が塞がるので1匹でしたがこれでしたら2.3匹持っていけそうです、お肉も採取も頑張ります。ありがとうございます!」
「カイルの落としそう。ベルトに止めれるようにする?」
「ああ、そうだな。母さんに頼むよ」
「やってあげるよ。おばさんにも内緒にした方がいいだろうし」
「いいの?ありがとう」
にぱっと子どもみたいにカイルが笑う。
不意打ち過ぎて顔がちょっと熱い。
「ふぉふぉふぉ、仲がいいことじゃな。取り扱いは注意が必要だが、サーシャ、自分が信用した物には使わせてもよいぞ。ただし自己責任にはなるがな」
「はい。気をつけます」
「それと、もうひとつサーシャにはこれだ」
くすんだ緑色の袋が奥の部屋から出される。
机の上に置かれたので紐解いて中を見る。
中から出てきたのは鉄で出来た鍋、簡易コンロ、乳鉢、すり鉢、混ぜ棒、計量スプーン、お玉、などなどのサイズは小さいけれど魔法薬を作るためのセットだった。
「タリバさんこれ!!」
「昔私が外出先で使っていたセットだね。錆び付いていたりはしないが年代物だが王都で足りない物を買い足すくらいで十分初期には使えるだろう」
「ありがとうございます!これで部屋でも魔法薬が基材さえあれば作れます!!冒険者になってからも持ち運び出来る!」
「餞別だよ。こんなんでも揃えて買うとそれなりにするからね」
「タリバさん好き」
感極まってタリバさんに抱きつく。
ああ、すぐにでもこの素敵なセットを使ってなんか作りたい。
タリバさんに離れろと肩を叩かれる。
最後にぎゅーと抱きしめてから離れた。
「さあ、もう用は済んだ帰りな」
「あ!タリバさん!ポーション作りたい!腕落としたくない!」
「本当に魔法薬が好きだねぇ。そこにある材料は好きに使っていいよ。なんなら納品分を作っといておくれ」
「はーい!カイル、巾着預かるね。先帰っていいよ!」
「待つよ。外で素振りしてる」
「え?別に……」
「俺がそうしたいの」
そう言うとカイルはヒラリと手を振って外に出る。
なんか調子狂うなぁ。
気を取り直して機材に向き直る。
久しぶりのポーション腕がなります!
いきなり長いw
途中で切れませんでした。
すみません




