幼少編11
「ただいま!受かったよ!!」
「おかえり!!」
お父さんを初めとして家族全員が転がり出てくる。
愛されているのを実感してすっごく嬉しい。
うちの家族ってそういうのしっかり伝えてくれるし、スキンシップ多いから探らなくていいのが楽で安心する。
「バッチリ特待生奨学金も取れました!安心してね」
「おめでとう!」
「「おめでとう」」
玄関先で次々と抱きしめられる。
大好きな家族の温もりと香り。
帰ってきたんだと嬉しくなる。
「それでいつまでいられるんだ?」
「1週間かな。忙しなくてごめんね。せめて年1回、長いお休みには帰ってくるつもりだから」
「うん、うん、ここではなんだから中でゆっくり話を聞かせてくれないか?」
「そうだね」
「お茶を入れるわ。まずはゆっくりくつろぎましょう」
「お姉ちゃん!王都のお話も聞かせて!」
「聞きたい!」
「いいわよ。あのね」
部屋に移動しながら王都の街の雰囲気の話しをする。
残念ながらお勉強で殆どウロウロしてないから、合格発表後にお土産を買いに行った時の事を中心に。
次に帰ってきた時はより詳しく話せるように頑張ろう。
そしてまずはお土産を渡して弟と妹を満足させる。
真面目な話にはこの2人はまだ幼いからね。
居間でお土産に夢中になったところで、両親と学校に必要なお金の事。
自分の貯金だけでほぼなんとかなるので、貯めたお金はお父さんと弟妹の教育に使って欲しい旨を伝える。
少なくとも春季は大丈夫。そのまま貯めておくよって言ってくれた。
あって困るものじゃないし弟妹が街に出る仕事の時も諸経費かかるからね。
向こうに行ったらバイト探さなきゃ。
単発の仕事ってあるのかなぁ。
タリバさん知ってるかな?
2年……いや、1年半くらいかな?冒険者出来ないのは。
登録は誕生日が来たらすぐするつもり。薬草は自分で取りに行きたいしね。
あ、そうだ、ペイラムとペイガムの鉢植え持っていきたいな。そのくらいならなんとかお部屋でも育たないかな。
出来ればタリバさんの薬草園の貰えないかなー餞別として。
強請ってみよう!
家から持っていくものが何かあるか新しく作っておくもの、例えばベットカバーとかを改めて確認。料理道具がいるか聞かれたけどキッチンがあるか分からないから保留。
ママがベットカバーと枕カバー作ってくれるって!
2階の自分の部屋で私物の荷造りをする為に階段を上がる。
「さて、持っていくのは……」
元々そこまで服も持ってない。むしろ向こうで買った方が良いだろう。
この田舎とでは庶民服も質が違っていた。
2.3枚の服と下着類、薬草をスケッチしたノートというか資料達。これが1番多いかも。
ああそうだ。カイルにメモをあげようかな。
この近くで取れる定番の薬草をラフスケッチして特徴や採取ポイントを紙に纏め直す。
この作業1番好き。
「ご飯よ」
「はーい」
気づいたら夕方だった。
楽しすぎて時間が経つのを忘れていたらしい。
「我ながらいい出来よね。ヒースクリフの時より知識増えてるし」
少し枚数が多くて厚くなった紙の束に満足して紐を通して纏めると、夕食を取りに階下に降りる。
ここで食べれるのもあと少し、夏にはきっと帰れない。
しばらく味わえない母の味をこの一週間は噛み締めよう。
まだ出発は先だというのにほんのり鼻の奥がツンとする。




