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目が醒めて、詮無きことを。

作者: ずんたこす


ーー目が覚めた。開け放したままだったカーテンの窓から外を見やると、ぼやけた視界にまだ暗い世界が見えた。


のそりと身をよじらせて、枕元に放り出しておいたスマートフォンを手に取る。

充電12%、ただ今の時刻は午前4時27分。


充電器のコードを手探りで探すが、手の届く範囲にはないらしい。嘆息たんそくして諦め、スマートフォンを乱雑に放り投げる。どうせろくでもない通知しか入ってこない。


そのままぼんやりと天井を見つめながら、何を考えるでもなく思案しあんする。


『間』

  

どれくらいの時間が経過しただろうか。時間を確かめようにも、放り投げてしまったスマートフォンは手の届かない距離で淡く光を放っている。


仕方なくゆるゆると起き上がり、のそのそと数歩。転がっているスマートフォンを手に取る。


寝起きの躰の怠さには気付かないフリをして、液晶を見る。

 

充電8%、午前5時8分。思ったより時間は経っていないようだった。


それよりも。と、碌でもない通知群に、やはり碌でもない通知を見付ける。


不変なものなど無いと、頭では理解わかっているのに、心がそれに付いてこない。


心にわだかまるシコリは一旦飲み込み、一つずつスワイプで消していく。


もちろんそれで心は晴れるはずもなく、沈んだ気持ちのまましばし瞑目めいもくした。


『間』

 

いくぶん気持ちが落ち着いたところで軽く息を吐き、スマートフォンを握りしめる手の力を少しだけ抜く。


充電3%、午前5時35分。ふと画面に視線を落とすと、そんな表示が目に入る。

 

この充電が切れた時、私の存在も同時に無くなってはくれまいか。そんな益体やくたいもない考えが脳裏に浮かび、苦笑する。

 

 

ーーー死ぬ勇気もないくせに。

 


そんな声が聞こえた気がした。いや、これは自嘲じちょうの呟きだったのかもしれない。軽く頭を振ってベッドに戻ると、充電器のコードを差し込んだ。


途端に画面の光が強くなり、私の目を灼いた。充電は残り1%。危ないところだった。


苦笑いを噛み殺し、じわじわと増えていく数字を眺めていると、またぞろとモヤリとしたモノが脳内を支配する。


世界に一人取り残されたような、何とも云えないもの寂しさに襲われ、ベッドサイドに置いた煙草に火を点けた。紫煙しえんとともに重たい気持ちを吐き出そうとするが、それも上手く行かず、すぐにもみ消した。

 


ーーーひと晩眠れば、全部リセットされるから。

 


自分にそう言い聞かせ、すっかり醒めてしまった眠気を無理矢理手繰むりやりたぐり寄せて夢の中へ。



明日も早い。眠らなければ。


 

胸にしこる色々なものにフタをして、私は眠る。いつものように朝、目が覚めれば取るに足らないおりとなって心の底へと沈んでいくのだ。


やがてその澱は臨界点を超え、私を蝕むのだろうが、その時はその時の私に丸投げしておこう。そんな風にして、私は今日も『生きて』いる。

 

いや、『死んでいない』だけなのかも知れない。



やがて、どちらでも良いと諦めをつけ、私は意識を手放した。


どちらにしても。

 


ーーー詮なき事だ。

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