第一章 第四話 『決闘』
「何事ですか!?」
そういい大人たちがステージに駆けてくる。これはありがたい。
「私がスミダコウイチに決闘を申し込んだのです」
ははは、さすがに教師だ。安全第一だろう。そんなこと認める訳が――――
「いいですね。丁度一時限目は戦闘実習だったので。今回はその決闘を見て皆に学ばせますか」
あったね。きっぱり認めたね。俺の意思は無いのか?
「では、朝食が終ったら第一実習室に来てください」
もしかして俺って全体的に嫌われている?なんか悲しいな。先生たちは戻ってしまった。ここって本当に教育機関か不思議だ――――
「ええ、いいところに生徒会長が決闘を申し込みました。これで彼の戦闘能力を調べられますね」
「ああ、まったくだ。これはこの学園の創立以来の大事件だからな。サンプルはとっておかないとな」
「ちょっと、待ってください!!こんな非人道的なことが認められるんですか!?それだけのために戦わせるんですか!?もし死んでしまったらどうするんです!?」
「そんなことは気にしなくてよい。それともアスティラ先生?それともあなたは彼のことが分かるのですか?この先わが国の崩壊を招く可能性があるというのに」
「くっ……」
そう喋られては言い返せない。そう……一回も起きた事がないのだ……別の世界の人間が召喚でこっちの世界に来るなんて――――
俺は周りの視線から逃げるように席に戻る。
「えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!」
いきなりファニアスが騒ぎ出す。どうしたのだろうか?
「あの人って生徒会長だよ!!」
「いや知っていますよ。生徒会長って宣言してたし」
「たしか超強いらしいんだよぉー!! どうするの!!」
「っていわれても……戦うしかないでしょ?」
うん、ついでに言うと久しぶりに暴れたくなったし丁度いいね。
「でーもー! でーもー!」
なぜか引き下がらない。なにかあるんだろうか?
「どうして戦わせたくないの?」
「だって!! あの生徒会長はいたぶるのが好きって聞いたよ!! コウイチのケガしたところなんて見たくないし・・・」
それってただ単に性癖がおかしいだけじゃないかな? 会長の女にはMが多そうだナー
「それでも戦わせないと。俺は約束や誓いとかは破りたくないからな」
そういいパンを食べながら俺は第一実習室に向かおうとした。
「待って……」
シュリスさんが俺を呼び止める。どうしたんだろう……
「これ、お守りです。持っておいてくださいね」
「ありがとう。一日しか会ってないのにここまでしてくれて」
「いえ……なぜか前にも会った気がするのです」
「そうですか……じゃ向かいます。早く向かって体温めないとね」
お守りを持ち……俺は第一実習室に向かった。
「準備は万全なのか?」
向かいにはサーベルを持っている生徒会長が立っていた。
「ああ、もう体はあったまりましたよ。ついでに覚悟も決まりましたからね」
「そうか……それで貴様はそれで私に戦いを挑むのか?」
「ああ、そうだが不自然か?」
俺は私服で戦おうとした。うーん普通だと思うのだけどなー
「なぜ実戦で木刀を使うのだ?」
仕方ないじゃないか!! これしかなかったんだから。周りは笑っている。しかし生徒会長は違った
「おい! 誰か! コイツに剣を渡せ!!」
そういうと若干大柄な奴が来て一振りの剣を差し出した。俺はその剣をつかんだ。
俺は剣に使うのに慣れていない。この剣は自分に合わないらしい。手になじまない。しかし戦うしかない。
冷静になれ。そして戦え。逆は?戦うな……?そんなことはできない。俺は戦うと決めたんだ……口の中に苦味が感じる
周りの男どもは殺せと騒ぐ。俺は勝たないとならない。自分の主人の名誉にかけて。そしてシュリスのために。あれ? あいつら私怨じゃないか? 気のせいだ気のせい。
剣を鞘から抜く。鋼が光にあたり。鈍く光る。まるで血を欲しているようだ。俺の居た世界の喧嘩とは違う命のやり取り。自分は覚悟を決め向かい合う
「さて!始めてください!!」
ギィン!!
お互いが攻撃して激しい音がなる。それが開始の合図だった。会長はいきなり牽制とは思えない思い一撃で踏み込んでくる!! それを俺は剣で防ぐ。さすがにこれだけ重いと手が痺れる。
しかし!! このぐらいじゃないと面白くないな!!
会長は強い……しかし、俺は無様に防戦に回らない! お互いに剣戟をぶつけ合い、相手を力でねじ伏せようとするッ!! 激しく剣と剣とぶつかり合い火花が飛び散る。
「一つ質問していいか?」
「ああ、いいぞ」
そういいながらもお互いに剣戟をぶつけ合う。
「スミダ……お前はなんで戦うんだ?」
会長が剣が振り下ろされるよりも早く踏み込んで体をぶつけ、勢いが弱まったところに剣を叩き付ける。向こうも同じことを考えていたようで、体勢を崩されながらもこちらの攻撃に武器をぶつけてきた。
「俺は……自分優先で偉ぶって威張っている奴が嫌いなんだ。そいつらは個人の意思を知らずに見下す奴が多いからな!」
素早く体勢を立て直し、自分の武器を相手の方へと強く押し込む。相手も同様な行動をとったので、鍔迫り合いのような状態になった。
「だから、どうしたというんだ」
だが膠着状態にはならない。俺も会長も示し合わせたようにぴったりなタイミングでお互いに蹴りあって間合いを開く。
「なんだと!!」
その言葉と同時に俺は踏み出す。しかし会長は防ぐ。
「どうせ人なんて使い捨てだ!! なのに役目を与えられるのだ!! すばらしい事じゃないか!! 男は労働力、女は跡継ぎを産むだけの存在だ!それ以上もそれ以下もない!」
「貴様ぁぁあああ!! ふざけるなよ!! 貴様は人の意思なんて関係ないとでも言うのか!!」
剣に力を入れる。会長は苦しく呻き声を少し上げる。
「ああ!! そうだろ!! 意思なんて尊重しても意味も無い!! どうせ家畜は家畜なんだよ!!」
その瞬間俺は怒りを感じていた。もしかしたらこの会長はいい奴じゃないかな? と思った。けど違った……こいつも同じなんだ。偉ぶっている奴の一人なんだ!!
「スミダはどうなんだ!? 貴様は傲慢じゃないのか? 貴様の考え自体傲慢なんだ!! 全員が個人の意思を持ち行動したら破滅だ!!」
お互いに間合いを開く……
「けど!! ある程度は意思は必要だ!! お前らは下を下でしか見ていない!! 生まれとかでしか判断しないじゃないか!!」
「それが傲慢だって言っているだろう! 貴様は個人の自由を訴えているだけだ。自由なんて存在してはダメなんだ。よく世界をみろ! 貴様が居た世界だって格差があっただろうが!! 貴様は幸せなところに生まれたんだな。お前は現実を知っていないからそんなこといえる!!」
そうかも知れない……俺は知らないかもしれない……けど俺は……自分の気持ちを貫く!! 自分の考えている事も間違ってるかも知れないが相手も間違っている事は分かっている!!
飛ぶ! 舞う! 打つ! そして時に退きあい、もったいぶるように間合いを計り、お互いに飛び込みあって火花を散らせあう!舞を踊るように旋回しながらお互いの虚を狙う。
お互いにさっきから攻撃は当たっていない。ただただ攻撃と防御の激しい応酬があるだけだ。
「仕方ない・・・貴様なんぞに使うつもりは無かったが私も本気を出そう。」
そういうと足元に魔方陣が現れた。
「私の声を聞き駆けつけろ。我の盾となれ」
魔方陣から徐々に光が形を成す。そこには本でしか読んだ事も無いような魔物が現れた。
「こいつが私のパートナーのグリフォンだ。まぁ貴様とは質がもう違うけれどな。勝つためには仕方ない。行け……」
そういうとグリフォンはこっちに向かってくる。人間とはケタ違いの速さだ!!
「ぐ……は……」
なすすべも無く壁に叩き付けられる。そして会長は何かを詠唱していた――――――
「やばいのですよ!!コウイチがやられそうです!!」
ファニアスが言う。まったくのその通りだ。このままでは負けて死んでしまう。しかし自分は何をすればいいのだろう……自分のしもべも救えないなんて……自分がとてつもなく悔しい……
しかしシュリスは冷静だった。まったくもって穏やかだ。他の全員はみんな焦ったり、喜んでいるのに……一人だけ、一人だけ彼を。異世界から現れた彼を穏やかに見ていた。
「がんばってください・・・ヴァ――――」
そう言ったがまわりは五月蝿くて聞こえるわけない。
シュリスは静かに祈りを捧げた。
「実験は失敗か。所詮……温室育ちの異世界だから仕方ないか。」
「なんてこと言うですか!! あなたは!! あの子だって……」
「あの子だってなんですか? ほうほう? 知っているんですか? あなたは? あのクリスのしもべのことを?」
「知りませんがいいじゃないですか! 私はあなたの非人道的な研究なんて認めません!!」
「そうですか? ならあなたの願いも叶いませんがいいんですかぁ?」
「くっ……」
「そうそう、あなたはそういう風に何もできないのに反抗している姿がいいんですから。」
「しかし。生徒会長のデータを取れただけでも大収穫だ。私はもう部屋にもどるから、死体の処理は任せましたよ……」
「うっ……うっ……」
所詮私は何もできない。彼の言うとおりにものをやるだけしかできないじゃないか。まるで操り人形のような自分……それが悲しくて……辛くて……
「ぐぐぐ……」
「これでおしまいです」
会長の周りに光の束が何個もできている
「光の束よ。私に仇名す敵を焼き尽くし浄化しろ!! ライトバルカン」
一気に光が放出される……。そして全てコウイチに当たる。周りの男どもは狂喜している。恋敵的みたいな奴が死んだんだ。嬉しいと思うだろう。
しかし。異常な状態にある生徒が居た。クリスだった……。クリスは顔が真っ青になっている。しかも震えている……
「クリスどうしたの!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
あきらかに異常になっている……ずっと肩を小刻みに震わせ謝り続けている。
それを見た教師達も驚いている……パートナーが殺されても普通ならこうならない……なにかの力が働いている感じがする。
「まったく、少し痛いなぁ」
誰もが耳を疑った。そんなわけが無いと思いながら煙が消えた場所を見る。そこには獅子の鬣を持つような髪をなびかせて盾で魔法を防いでいた幸一がいた。
「な、何故死んでいない!?」
目の前の男が聞いてくる。まったく、人が寝てるときに起こすなよ。
「俺の名前はオリュンポス十二神の一柱ヴァルカンだ。この体が消えそうだから仕方なく変わったんだ」
「なぜ、神なんかでてきてるんだ? 何故なんだ!!」
「あ? 偶然だよ。偶然。俺が力が少なくなって人間の体に入ってなかったら呼べなかったな」
「あ、あと貴様、確かブサイクとか醜いとか言われていたのになんだ? その美形? 何故なんだ?」
「はぁ? 俺は足が不自由なだけで醜いとか言われてたんだぞ? あと神なんだしそこらの美形な男よりは顔もいいぞ?」
金髪は納得しないようだった。はーしかたない。
「貴様? この盾分からないのか? これはイージスだ。俺が作った奴だよ」
「な、なんだと? なら貴様は本当に神なのか?」
「はー、そうだといってんだろうがまったく。人間って奴はものわかりがねぇな。まあ俺の勝ちでいいんだよな」
しかたない……そろそろ主人格にもどるか……
「まてぇぇい!!(´・д`・ )」
なんだ?ん?変なBGMまでかかっている
「西から太陽が沈むときそのとき俺達は現れる。悪を倒し世の中に平和をもたらすために!!」
「「俺達ビクトリー兄弟!!∩^ω゜★.」」
二人の魔術師がでてきた。片方はデブでもう片方はガリ。秋葉原戦士か? いや秋葉原魔術師か。
まったく……周りの空気が醒めたじゃないか。
「俺と戦うのか?」
「ああ、貴様は悪の根源だ。神ではなく悪魔なんだ!!だから貴様を倒す。」
「本音は?」
「ああ、ファニアスたんやシュリスちゃんをかけて勝負しろぉぉおお!!ヽ(・`Д´・)ノ」
「いいだろ……かかってこい。」
「うぉぉぉぉおおおーーーーーーーー」
そういいながら突進してくる。捨て身の攻撃をしてもう一人が魔法で俺か……しかし甘いな。
俺は雷を展開し防ぐ。
「食らえ!! ゼウスの雷を!! 神の裁きを受けるが良い」
そういい雷を操る。相手が懲りるような強さで撃つ。そうしないと殺してしまい問題になるからだ。
数分後、ゴミ二人はゴミ箱に入っていました。
さて、いいかげん主人格さんに戻しますか。あ……武器代わりに自分のハンマーを出せるようにしておくか。武器無しはかわいそうだし。戦闘できないだろうしな
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「第四回!!ファニアスちゃんのー用語解説コーナー!!」
パチパチパチ・・・
「今回はオリュンポス十二神のヴァルカンの話をするぞー。ギリシア神話では名前をヘーパイストスでローマ神話ではウゥルカーヌスと呼ばれているんだよー。オリュンポスの神々に加えられたヘーパイストスであるけどー、ヘーラーの彼への冷遇は続き、彼は母への不信感を募らせていたんだよー。そんなある日、ヘーパイストスからヘーラーに豪華な椅子が届けられたのー。宝石をちりばめ、黄金でつくられ、大変美しい椅子で、その出来に感激した上機嫌のヘーラーが椅子に座ったとたん体を拘束され身動きが取れなくなってしまったそうなのだ。そこでヘーラーがヘーパイストスに拘束を解くよう命じると『自分を貴方様の実の子であると認め、神々の前で紹介してください』と言ったらしいのです。醜さゆえ自分が捨てた子で認めたくもなかったヘーラーでだったらしいけどー、このままでいるのも恥ずかしいかったそうでー。仕方なく要求に応じヘーラーも認めたらしいのー。だが、母に疑心暗鬼になっていたヘーパイストスは、ヘーラーが助かりたい一身であり、本心で言った言葉ではないと考えてー信用せず拘束を解かなかったのだー。そして、『なら私をアプロディーテーと結婚させてくれますか?出来ないでしょう。軽々しく言わないでください』と言ったのであるらしいのだー。ところがヘーラーは助かりたい一身でこれを了承しちゃったらしいぞ。驚いたヘーパイストスだったけどー、急いでヘーラーを解放しちゃたんだよー。そして、ヘーパイストスはアプロディーテーと結婚することになったのだー。しかし、アプロディーテーがすぐにアレースと浮気をしたために不仲となり離婚。後に改めてアグライアーと再婚したらしいのだー。今日はここまでーグッバーイ」
すいません。バトルなんて書けません・・・。どうしてもしょぼくなります・・・。これからちょっとは勉強しないとダメですなー。