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怪談「幽霊声」

作者: VLP

 

 このお話は、友人がとあるBARで知り合った智也さんと言う方から聞いたお話です。


 ある日、友人がふらっと都内のBARに立ち寄り、カウンターで一人お酒を飲んでいたら、そこに入ってきた一人の人が友人の近くに座り、何となく話をして知り合ったのが智也さんでした。


 お互い話してみると同じ県に住んでいて、話も合うので意気投合していたら、不意に智也さんがこう言いました。


「俺って幽霊声なんですよ」


「は?幽霊・・なに?」唐突な話の変わり様に聞き返した友人に智也さんが「幽霊声。って言っても俺が勝手に名付けてるだけなんすけどね?どうも俺の周りの人達が変な事が起こると、決まって俺の声で聞こえるらしいんですわw」


「はぁ・・」 あっけに取られて頷く友人に面白がりながら智也さんが「いやね?割と昔っからなんですけど・・・」っと話し始めました。


 それの発端は智也さんが中学生の時、友人合わせて3人で近所の沼にバス釣りに行った時の話です。


 友人A・Bと智也さんの三人は、早朝5時に待ち合わせていつも行っている沼に着くと、各自ばらけて釣りを始めたそうです。


 しばらくルアーを投げて釣りをしていると、智也さんからちょっと離れて友人Bが、その二人の対岸に友人Aがいたそうです。


 そこそこ釣れていた智也さんとBが軽口を叩きながらお互い釣っていると、急に前方の方から「うわぁ!!!」っという叫び声と一緒に ザッパーーン!!という落下音が聞こえました。お互いびっくりしてそちらの方をみると、胸辺りまで水に浸かり唖然としてるAの姿が見えました。


 慌てて対岸までBと一緒に走り、その辺の木の棒を突き出し「おい!A!大丈夫か?!」っと智也さんが声をかけると、「・・・あ・・ああ。大丈夫」と言ってのろのろとAが枝をつかみ、Bと二人でAを引っ張り上げました。


 Aを沼から引き上げ、水と汚泥でドロドロになったAにBが「おいおいww朝早かったからって寝ぼけてたんか?w」っと軽口を叩くと、Aが真っ青な顔をしながら「・・俺・・もう帰るわ・・」っと言い残しサッサと荷物をまとめ自転車に乗って帰ってしまいました。


 泥だらけの水浸しのAにまさか「待て」とは言えず、2人はその後ろ姿を見送りました。そして、なによりその時のAの様子が沼に落ちてというより、何か別の事でショックを受けてる様子に2人は気が付き、何とも声をかけにくい・・躊躇してしまう雰囲気でした。


 そんな事もあり、このままバス釣りを続行と言う感じでもないので、2人も荷物をサッサとまとめ帰りました。そして翌日、学校で3人顔を合わせるとAが済まなそうな様子で2人に先にとっとと帰ってしまったことを詫びてきました。


「いやぁ。しゃーないよ、あんな状態じゃ早く風呂入りたいし、テンション下がるだろ。それにあの後俺らもさっさと帰ったし・・・」と智也さんが答えると、Bがおどけた感じで「にしてもA!wお前なんであんな沼で落ちてんだよwwどんくさすぎんだろww」とAに笑いかけると、Aが急に真面目な顔になり智也さんの方を見ると


「なあ。智也。お前あの時対岸にいたよな?」と聞いてきたので、智也さんは「あ・ああ、対岸にいたよ、Bも居た。一緒にバス釣ってた」と答え、「ああ、居た居た。俺の近くで釣ってた」とBも答えました。すると、Aが少し無言になり下を向くと、何かを決心した感じで智也さん達の方を向いてこう言いました。


「俺、あんときなんか背中がゾワゾワっとして振り向いたんだよ。そしたら・・・何も無かったんだけどさ・・・んだよ・・なんもねーかと思って前向いたら」


「おい!」


 って急に耳元で智也の声がして、とっさに声の方を振り向いたら 


 ドン!


 って背中押されて沼に落ちたんだよ・・・・なあ、智也・・・おまえじゃないよな?



「これが最初の幽霊声ですわw」っと智也さんが笑ってグラスを傾けました。


 友人が「え?その友達押したナニカが智也さんの声だったって事?」と聞くと、智也さんがタバコを一服スゥーっとやると、「そ!そのナニカ。まあ幽霊?って奴が・・どーも俺の声使いやすいみたいなんすよネ~」っと灰皿に灰を落としました。


「へぇ~・・・」なんかよくわからないけど関心した友人がふと疑問に思い「ん?発端って事は・・・その後も?」っと質問すると、智也さんがニヤっと笑い「ええ。俺がいるいない関係なく」と答えると、「霊的な奴って言いますか、そういう声系は全部俺の声らしいですわ。それも老若男女問わず全部!」


 そう、智也さん曰く、それがたとえ女性の幽霊だろうと子供の幽霊だろうと、それらしいものは全部智也さんの声で聞こえるらしい。というか、体験した周りの人達が全員そうと答えるのでそうとしか言えないそうです。


「なんか、その時は驚いてたり、あっけに取られたりしてるので気が付かないけど、よくよく考えると俺の声だったって言われるんすわww」またタバコをスゥーっとやってトントンっと灰を落とすと「ま、俺自体はそういう経験全くないんで、お前の声だったって言われるだけでよく分からないんですが」と言いながら智也さんは吸っていたタバコを灰皿に押し付け消すと、席を立ち


「俺に関わった人って、何故か結構な確率でそういった体験するんすよねぇ・・もちろん俺の声でww」んじゃ!俺帰りますわ!マスターごっそさん会計たのま!っと言うと、颯爽とそのBARを出て行ったそうです。




 その後、友人は何度かそのBARに寄ってみたそうですが、智也さんに再会する事は無かったそうです。    声以外は。


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