ロスト・アポカリプス in ロスト・ワン 滅亡七夜目
「マリンカリンの世界ではね、人間はみなレベル1でいるようにと決めごとがされているんだ」
「強くなるなってことか?」
「そうだね。強さは戦争を生む。ならば、みなが平等な強さなら武力的な争いは起きないだろうという考えの元、人間は人間のレベルを上げることを禁じた。レベルを上げたのが分かれば国によっては極刑さ」
木に生える青い実から妙に甘ったるい香りが漂ってくる。途中にあった川で、山城は手についていた魔物の血を流した。それをするとガブリエルは「ごめんごめん、清浄の加護を使えばよかったね」と謝ってきた。再度出発してからも、ガブリエルの話は続く。
「この世界でレベルをあげるには、他の存在を殺める必要があるんだ。レベル1の人間は、基本的に魔物に勝てない。魔物は弱肉強食の世界に生きてるから、生まれたてでもなければすでにレベルは上がってるからね。ならば、人間が殺せるのは人間のみ。人間なのにレベルが上がってる者は、殺人鬼の疑いが濃いんだよ。魔物を倒せるほどのレベルまで上げるには、途中から魔物を倒したはじめたとしても、はじめは何人もの人を殺した可能性が非常に高い。だから、さっきの少女はキミを――」
「レベルを上げるために大量殺人を犯した人間だと思った、か」
ガブリエルが言いにくそうに口をもごもごさせていたので、山城は言葉を繋いだ。居心地悪そうに彼女は頷く。
自分が殺人鬼と思われたことはどうでもよかった。大事なのは、魔物に喰われそうになった少女を助けられた。その事実だけ。それだけで山城は十分だった。
「この世界の表面的な事情は理解できた。だが、いろいろ疑問があるな。殺生がいけないのなら、この世界の人間は動物の肉を食わないのか?」
「いや、食べるよ。もう一つ、大事な概念があってね。この世界には上位存在、中位存在、下位存在に種族ごとに分類されてるんだ。経験値を<得てしまう>条件は、自分と同等かそれ以上の存在を殺したときなんだ。人間は中位存在。人間の食料となる生き物は、基本的に下位存在さ」
「なるほどな」
「ちなみに、天使であるボクは上位存在さ!」
「ガブさんを倒したら経験値がたくさんもらえそうだな」
「冗談でもすぐにボクを殺そうとするのやめてくれない!? ……まぁ、事実その通り。ボクはドラリンクエストで言えばはぐれクロムみたいな存在だからね。いや、もしかしたらそれ以上かもね。自身のレベルを極限まで高めた中位存在が上位存在を倒すと特典あるから!」
「ふぅん? なにがあるんだ?」
「こ、これを教えてもボクを殺らないでね? 虫を殺すよりあっさり死ぬからね、ボク」
「殺すわけないだろう」
「中位存在の限界レベルである99に達した人が上位存在を倒すと、その人は上位存在になれるんだ。そしたら、レベル上限解放で999まで上げられる。経験値を積めばいつか神様とだってやりあえるようになるよ!」
「ほう……」
「メガネの奥の瞳が悪い感じに歪んでるよ!」
「それはあんたの勘違いだ。もう一つだけ聞いておきたいことがある」
「なに?」