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ロスト・アポカリプス in ロスト・ワン 滅亡四夜目

 体を起こして体についた土とはっぱを払う。恰好は殺されたときと一緒で制服だ。気候的には暑くもなく、寒くもなく、シャツ一枚で十分過ごせる温度だ。

「目的地はあるのか?」

「ないよ! とりあえず近場の街で最新の情報を集めるのかベターだと思うよ。とはいっても、ここがマリンカリンの世界のどの辺りかはよくわからないんだけどね」

「そうか。なら、今日は最悪野宿か。道具がないキャンプに来たと思えば、一日くらいはなんとかなりそうだな」

「適応力が高すぎる……。実は異世界に飛ばされたのは二回目とかいうオチ?」

「人生に二度も異世界に行くってどんな確率なんだ? む……」

「どしたの?」とガブリエルが首を傾げる。

「人間の悲鳴が聞こえた気がした。こっちだ」

 ガブリエルに聞き取れなかった音を山城が聞き取れたのは、レベルによる身体能力上昇の恩恵だ。悲鳴がした方に迷わず駈け出した。その時、元の世界にいた頃よりも何倍も早く走れているのに本人は気付いていなかった。あっという間にガブリエルとの距離が離れる。

「待った待った! 待ちたまへ!」

 ガブリエルがひーひー言いながら山城を呼び止める。だが、切羽詰まった悲鳴の主の安否が気になったのであえて無視をする。

 木々の隙間を疾駆すること十数秒で開けた広場に出た。そこの中心にはアステカ文明の祭壇を思わせるような遺跡があった。階段状に積み上げられた祭壇のてっぺんには、ドレスで着飾った一人の少女と多くの供え物がある。悲鳴の主はおそらくその少女だ。

 異形――彼女の前には、山城のいた世界には絶対に存在しえない、いわゆる魔物が立っていた。そいつは、ゴリラのようにけむくじゃらの胴体を持ち、右手だけが異様に発達している。右手と胴体のサイズがほぼ同じだ。本来、顔がありそうな部分には卵のようなのっぺりとした凸形状があるだけで目や耳等がない。では、その本来顔についているはずのパーツがどこにあるか。それは少女の頭上でパーの形に開かれた右手の平にあった。手のひらには目、鼻、口がついており、特に口はひときわ大きく少女の頭を一飲みにできそうだ。

 おぞましい。山城は一瞬近づくのに戸惑ったが、魔物の巨大な手の平の口が大きく開き、少女を喰らおうとしたのを見て足に力をこめた。

「ひっ!?」

 山城は少女の恐怖の吐息が聞こえる位置まで、刹那の時間で詰め寄った。祭壇のてっぺんは三階建ての建築物ほどの高さはあったのだが、人間として最高のレベルを得ている山城にとっては大した隔たりにはならない。

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