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ロスト・アポカリプス in ロスト・ワン 滅亡十八夜目

「殺人鬼がなぜこのような真似をするのだ?」と、こらえきれず護衛の一人が口を開く。

「そんなことを言うのはやめてください」

 アリタリウスがぴしゃりとしかった。

「山城様は、私達を助けてくださるおつもりでしょうか?」

「助けるに決まっている」

「ありがとうございます。シロア、この方と協力して窮地を脱しましょう!」

 山城は少し驚いてしまった。決断の早く迷いがなかった。もしかしたら、本当に気の狂った殺人鬼で、魔物との戦いを終えた後に背中からナイフを刺すかもしれないのに協力を決めてしまったのだ。

 だが、その判断は決して間違っていない。この状況を脱するには、山城がいかれた殺人鬼であろうがなかろうが、人間離れしたその力を借りるしかないのだ。協力すれば可能性がゼロに限りなく近かった生存の可能性が跳ね上がる。

「クレア様! このような殺人鬼の力なぞなくても、たとえスライブ様がおらずとも、守護天使様が来るまで持ちこたえて見せます!」

「なりません。山城様、部下の無礼をお許しください」

「別に構わない。慣れている」

 山城は振り向きざまに背後に迫っていた魔物を横に両断する。

「これはこれは、酷い有様になってますネ。一体なにが起きてると言うのでス」

 ボロボロの黒い布をまとい、棺桶を背負った魔物が下りてきていた。ここに来た魔物を束ねているボスはこいつだと山城は確信する。

「先ほどのあなタ。あなたあなたあな多。ちょーっと人間離れしてませんかネェ? 人殺しであるなら、私達の行いを邪魔する道理はないはずですけド。今からでも私達の方について一緒に遊びませんカ?」

「断る」

「ツレませんネェ。あ、もしかして勧誘の前に自己紹介しなかったのが原因ですかネ。ワタクシは死霊術士ネクロマンサーをやってるネグロスという者でス」

「自己紹介しても変わらないぞ」

「それは残念。では、あなたも一緒に死んでもらうしかないですネェ! 強い人間は素材としてレアなので、殺した後にいろいろ実験させていただきまス!」

 ネグロスが背中に背負っていた棺桶を肩に担ぎ直す。それを振りかぶりながら山城との距離を詰める。

「まさか、棺桶が武器だなんてな」

 山城はククリナイフを二本使って棺桶の上段からの振り下ろしを受ける。絨毯の下にある岩の地面に山城の足がめり込むほどの破壊力だった。

「ほウ!? まさかワタクシの一撃を受けられる人間がまだいるとは! いったい何人の人間を殺し、魔物を狩ってきたんでしょうかネ!?」

 重い。これは、直でくらえばレベル上昇によるステータスを加味しても無傷では済まない。

 棺桶を左腕で押し返して、ネグロスの胴に狙いを付けて右手でナイフを振るう。

「おっト」

 山城の動きもしっかり見えている。今までなすすべもなく屠られてきた魔物とはわけが違う。

 カウンターに茶黒い足が山城の腹を捕える。

「ぐっ!」

 内臓を打撃で痛めつけられて顔をしかめる山城。戦いで痛みに怯んでいる暇はない。その隙をネグロスは逃さなかった。棺桶をバットのようにフルスイングして山城の側頭部を捉えた。

「ッッ――!?!?」

 彼の体はそれこそボールのように吹き飛び天幕に激突する。外が土砂で埋まっていなければ、あと十メートルは吹き飛んでいただろう。

「げほっげほっ」

「あんまりダメージがないなんて、ほんっと丈夫ですネェ。一体どれだけレベル上げてるんですカ! このままでは守護天使が来てしまいますので、ワタクシももう少し手札公開いたしましょウ」

 ネグロスは棺桶を地面に置いてその蓋を開く。中身は空だった。そこに近くで転がっていた人間の死体を入れて再び蓋を閉じた。

「<死者利用ネクロマンス>。いきますヨ」

 刺突でもするように棺桶を構えて山城に突撃をかけるネグロス。山城の反応が遅れた。それは決して目で追えなかったからではない。目では追っていたが、その速さが先ほどの倍以上になっていたからだ。棺桶がもろに山城の体に直撃し、壁と棺桶で彼をサンドウィッチにする。

 メキメキィ!

 あばらが嫌な音を立てて激痛が脳みそを埋める。死霊術士の力も段違いに上がっていた。明らかに山城を殺せる域に到達している。

 痛みで意識が飛びかけたが、やはり痛みで意識が覚醒する。

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