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ロスト・アポカリプス in ロスト・ワン 滅亡十三夜目

「ひどいほこりだね」

「屋根があるだけましだ」

「うぅ……アザミーに害をなしてた魔物を倒した朱雀くんが追い出されるなんて……。普通の世界ならちやほやされてしかるべきなのに」

 ガブリエルもマリンカリンの世界については思うところがあるらしい。

「朱雀くんをこんな酷い扱いばかりしてたら、この世界は見放されちゃうよ」

「別にそんなことはない。異世界には異世界の事情があるんだから仕方ない」

「……ほんと、懐が広いのか、諦観しているのかわからないなぁキミは」

 ガブリエルは若干呆れ気味だった。

「朱雀くんが気にしなくても、ボクがむかむかするからやけ食いだ! 朱雀くん、ボクが材料を渡すからおいしいもの作ってよ」

「あんたが作って慰めてくれるんじゃないのか」と山城は言わずに、「自信はないが、わかった」と頷く。

「うむむ、度し難し朱雀くん。まさかそのまま受け入れてくるとは……。このご奉仕するためにありますよ的なメイド姿が見えてないのかな」

「材料はどこだ?」

「作る気満々! ならば止めはしまい! 待ってね。異次元ポケットから出すから」

「どこぞの青い猫型ロボットみたいだな。一家に一台ガブリエル、だ」

「人を家電みたいな扱いしないでよ!?」

 ガブリエルはラッパを手に持ち、マウスピースに口を当てる。頬をいっぱいに膨らませながらプホーッとそれを吹く。音が詰まっており、終末を知らせるラッパの音にしてはずいぶんと安っぽい。だが、目を疑うような不可思議が起きた。ラッパのベルから肉、野菜、そして山城のいた世界ではお馴染みの箱詰めされたカレーの元が出てきた。お肉はパック詰めされており、バーコードと値段が貼られている。賞味期限を大幅に過ぎているが、色合いはきれいだ。ラッパから出てきたのは食材だけではなく、調理に使うダッチオーブンとおたま、着火剤、食事に使うお皿とスプーンのおまけつきだ。ラッパのベルよりも大きなアイテムも出てきたのを見る限り、ガブリエルのラッパに三次元の常識は通用しないようだ。

「あんたが毎日服を変えられていた秘密が解けたな」

「ボクのラッパは有限と無限を繋ぐ特殊な物だからね。無限の世界にアイテムをストックできるのさ。出し入れはすごく疲れるけど……」

「それを聞くとやっぱり青猫じゃないか?」

「むぅ、もうそれでいいよ。あとは任せたよ!」

「任された」

 水は近くの川から調達した。薪は森からほどよい大きさの物を拾ってきた。大きい物はククリナイフで適当なサイズにする。ククリナイフは当然薪を切るものではないのだが、山城の技術と力がそれを可能にした。

「ナイフとまな板はないか」

「出そうと思えば出せるけど、今日はもうだめ……。このラッパ吹くのは疲れるんだよ」

「へえ、ちょっと吹かせてくれないか?」

「……狙ってやってる? もしかして天然を装った意図的変態行為?」

「どうして変態だ?」

「いや、だってボクが吹いたラッパをごにょごにょ」

「僕は気にしないぞ」

「気にしようよ! とにかくこれはだーめ! 人に扱える物じゃありませーん!」

「そうか。なら、ククリナイフで斬るしかないな。骨董品屋にあったなにを斬ってきたかもわからないものだが、焚き火で熱消毒すれば問題ないだろ」

「熱消毒じゃなくて、せめてボクに清浄させて!」

「わかった」

 一本のククリナイフをガブリエルに差し出す。それを受け取った彼女は片手を刃にかざした。すると、青い光のつぶが全体を包んだ。元々手入れしたばかりなので、きれいだったのだけど、より一層刃のきらめきに磨きがかかった気がした。

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