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第8話 魔力刻印ってなんですかー?

 

 ウィンディを弟子に迎えて、しばらく経ったある日のこと。


 日に日に増えていく、ウィンディ謹製ゴーレムたちに俺の魔術工房が侵略されていくなか、俺はウィンディのあられもない背中を見る、幸運の極みような機会にめぐまれた。


 自分から見にいったわけでは決してない。

 断固として不可抗力だった。


 どちらかといえば、魔術工房備えつけの、お風呂場から着替えを忘れてしまったとかで、汚い心をもった先生の目の前に出てきてしまった彼女が悪い。


 ちょっと、忍耐力と自分との戦いが発生したが、なんとか威厳おる先生のイメージはそこなわずに済んだ。


 それより、その時気づいたことがある。


 今日は、その時の気づきの追求のために、ウィンディの華奢な白い背中をガン見して確かめる。すべては謎を解明し、魔術の深淵にいたるため。他意はない。あるわけがない。そういうことにしておく。


 葉っぱゴーレム隊が、なんとなく俺のことを非難してる気がするが気にしない。息を吹きかけて、吹き散らす。


「先生、わたしの背中がどうしたんですか?」

「白くて柔らかくて……っ、んっん、いかんいかん。そうだね、ウィンディ、自分じゃ見えないだろうから、これを使うといい」


 先日、覚えた水属性式魔術で、樽の中の水を引っ張り出して空中に膜を形成する。


 ここのところ我が工房は財政難なので、鏡など買う余裕はないから、これで鏡の代わりとする。


 俺の魔術に目を輝かせながら、ウィンディは水面鏡に背中をむけて、そこに映る″緑色の輝き″に目を見張った。


 彼女の背中にあったモノ。


 それは、ほのかに輝く緑色のひかりの紋様だ。


 奴隷商から助けた日。

 文明圏の服の着替え方に手間取っていたウィンディを、8割の下心で手伝ったときには見られなかったモノ。


「なんか、光ってますよ、ウィンディの背中にこんな綺麗な物があったなんて! 先生、これは一体なんですか?」

「ふむ、なんとも断言は避けたい事案だけど、おそらくは『魔力刻印(まりょくこくいん)』……それに類する何かだと推測できるかな」


 ウィンディの背中を見つめながら、考えにふける。


 普通、魔力刻印なんて手にいれようとして手に入れられるものでもないし、作ろうと思って作れるものでもない。

 現代では数限られた魔術家にのみ脈々と継承されるだけの、まったくポピュラーではない物。

 秘術のなかの秘術にして、限られた分野・系統において、特別な魔術を行使するための鍵になったりする程度の使用用途にして、例外の魔術だ。


「だが、どうしてウィンディの背中にそんな物が現れたんだ。……む、ウィンディ、君の家はもしかして魔術の家系だったのかな?」

「そんなはずがありません! おばあちゃんも、おじいちゃんも魔術なんて教えてくれませんでした! 先生、わたしは里にいた頃には魔術なんて話に聞くだけで、見たことなんてなかったんですよ!」

「いや、隠蔽が上手いのなら、わからない。もしかしたら、ウィンディはまだ魔術を継承する年になってなかったから、教えてもらえなかったのかもしれない」


 そう考えると説明はつく。


 もしかしたら、『風の巫女』というのは、ひとつの魔術家がたどりついた究極のゴーレム魔術を行使する存在のことだとか、な。


「ほら、ウィンディ、よく思いだしてごらん。冷靜になって考えてみれば、何か不思議なことをおじいさんや、おばあさんはしてなかったかな?」

「うーん、そんなこと言われても……はっ、そういえば、確かにおかしな事はありました!」


 ほれ、来た。


「おじいちゃん、おばあちゃんはもういつポックリ逝ってもおかしくない歳なんですけど、毎年、祭りの日には里中のみんなが食べるだけのお菓子を一晩で完成させてしまうんです! よくよく、考えたら、不可能ですね! あれは、魔術を使っていたに違いありません!」


 うん、多分それ、おじいちゃんとおばあちゃんが凄いだけだね。


「むう、違いますか……やっぱり、わたしのお家は魔術とは無関係だったと思いますよ、先生」

「そうか。風の巫女は正真正銘、自然の神秘ということなのかな……」


 まあ、無理に魔術家の末裔説を推していく必要はないから、なんでも良いんだけど。


 心のどこかで理論をもとめ『人間の神秘』に落とし、納得のいく答えに当てはめようとする、俺のーーいや、人間の愚かが出ただけだ。


 やれ、まだ俺の青い。


 ただ、とりあえずは彼女の背中の魔力刻印らしきモノについては、頭の片隅にとどめておこう。


「よし、それじゃ、そろそろ行ってくるかな」

「あれ、先生、どこかへお出かけになるんですか?」


 冒険者用の厚手のローブを着込み、中杖を手にとり、予備の短杖を3本ほど腰のホルダー差しておく。


「すこし、冒険者ギルドへ行ってくる。しばらく、休んでたが、そろそろ稼ぎにいかないと、俺とウィンディの魔術工房はやっていけなくなっちゃうからな」

「っ、冒険! 冒険に行くんですね! それでは、ウィンディも一番弟子としてお供します!」


 世界で一番可愛くて、優しいウィンディなら、そう言うと思ってた。


「ダメだ。冒険は遊びじゃない。いや、遊びの要素も多分に含んでるが、それと同じくらい危険もある。ウィンディは、君はまだまだ冒険には出るには未熟すぎる」

「むぅぅ、はい、わかりました……」


 シュンとして元気のなくなるウィンディ。


 あ゛あ゛あ゛ぁあー!

 ごめんよ、ウィンディぃぃい!

 俺は、君を悲しませたくなんか無かったのにー!


「くっ……だが、俺は威厳あり、厳しくとも弟子のことを一番に考える良き師でなければ、ならない」


 心を鬼にするんだ、バルトメロイ。

 俺は優しく、厳格で、良き師匠になるんだ。


「……ふぅ。よし。今日のところは新人としての顔合わせと、クエスト打ち合わせくらいだ。すぐに戻るから、絶対に魔術工房から外にでないように」

「むぅ、わかりました。それが先生の言葉ならば!」


 納得してくれたようで何よりだ。


 出かける前から心を疲弊させた俺は、愛弟子と踊る葉っぱ隊、リンゴ、空飛ぶ本たちに見送られて、魔術工房をあとにした。


 向かうは冒険者ギルド、新しい就職先の面接会場だ。



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