グリーンマン
今より少し先の未来の話。第三次世界大戦で世界中に核がばら撒かれ人類が滅亡したり、氷河期が訪れ地下に都市を築いたり、地球温暖化が急速に進み火星移住をしたりしなかった未来。
人類は予想の斜め上を行く進化を遂げた。それは脈々と続いてきた人類種にようやく与えられた進化であり、決して脳が肥大化し全身がやせ細った所謂宇宙人のような容貌になってしまうような悲劇的な代物ではなかった。だが結末は目を背けたくなるようなものだった。進化はもれなく平等に訪れるものではなかったからだ。
人類の6割ほどが進化の恩恵を得る結果となり、残った4割の人類は中学に上がった途端に周りがスマホを持ち始め、クラスのグループ形成に置き去りにされるような寂しい気持ちを抱いた。
進化を遂げた人類は自分達を星の代弁者、人類の上位種であると宣言し、彼らの言うところの下等種であるただの人間は厳しい立場に置かれていた。人間も科学の発展に尽力し上位種に追いすがったが流石は下等種といったところか、施設は燃やされプラントは爆破され虫のように逃げ回ることとなった。単純な力の前では人権など意味をなさなかった。そもそも上位種は人間ではないらしいので人権とか気にしないらしい。
この腹の底が煮え滾るような気持ちは何かに似ていた。スマホケースが壊れたんでショップに行くと「型落ちのケースは扱っていない、それより新機種はどうだ」と言われた時のような気持ちだ。つい数ヶ月前には最新機種だと言って売りつけておいて、新しいのが出来たら掌を返したように型落ちだのなんだのとよく言えたものだと憤慨しつつも、新機種のパンフに心惹かれてしまうあの感覚だ。
最初こそ抵抗の様相を見せていた人間種であったが、上位種との間にできる子供は相手がどちらであっても上位種であることから、人間種は一方的に数を減らされ、上位種は着々と数を増やしていった。
そして今や人口の八割を上位種が占めている。
だが上位種がそんなに偉いのか。見た目がちょっと緑になって、力が強くなるだけではないか。奴らが現れてすぐは奴らの姿を的確に表した蔑称もあったのだが、上位種と呼ぶ事を強要され、歯向かう力のない人間は抵抗を諦めた。今や人間は少数派、圧倒的劣勢を強いられている。だが俺は現状を受け入れているわけではない。外界との関わりを絶ち、ひっそりと牙を研ぐのだ。
いつの日か慢心し油断しきった奴らの首を掻き切ってやるために。そう決心を固め今日も親の脛に寄生し生きてく。
足音が近づいてくる。素早く布団をたたむと昼食に使用した食器をトレイに乗せる。奴らの可能性もあるのだ。気をつけなくてはいけない。上位種を自称する連中は平気で人の家に入ってくるのでいつ如何なる時も警戒を怠ってはいけないのだ。そしてお母さんの場合は食器を渡さなければ晩御飯が運ばれてこないのでこちらも注意が必要だ。つまり俺という人間は昼夜問わず気の抜けないスリリングな状況に身を置いている、死と隣り合わせの生活というやつだ、奴らには到底理解できないだろう。
「駅前でチラシ配ってたよ。アンタよく、俺に力があれば……とか言ってるじゃない」
食器を準備しておいてよかった。だがいらない気を回したお母さんがドアの隙間からドギツイ色をしたチラシを差し入れてくる。知っているぞ、俺を働かせる気だな。
しかしそうはいかない。獅子は自らの子を崖から落とすというが、今の社会は崖なんて生易しい試練は与えてくれない。よくて地下帝国での強制労働、最悪実験施設で汚い花火を咲かせる事になる。働くとは成層圏から裸バンジーするようなものだ。まず助からない。
俺を殺す気かと叫び倒し、一通り暴れてすっとした俺は気配が消えたのを確認してからちょっとした好奇心でチラシに目を通した。
見出しには大きく
【君も上位種の仲間入り!? 力が欲しいみんな集まれー! 】
バカにしやがって。人間様を舐めているとしか思えない。
俺は駆け足で家を出て集合場所に向かった。
力が欲しかったのだ。
俺は指定された雑居ビルにやってきた。
受付のお姉さんにチラシを見せると、シャワールームに連れて行かれた。急展開である。こんな事があっていいのかと思いつつ、脱衣所で待ってます、という言葉に期待した俺は人生で最も気合を入れてシャワーを浴びた。
しかし脱衣所には消毒された俺の衣類が丁寧に畳まれており、これまた丁寧に説明会の部屋を伝えられた。
人生最大の肩透かしを食らったことで意気消沈しつつも指定された一室の扉を開いた。
室内にはアルコールの臭いが充満しており、パイプ椅子が四十ほど並べられていた。
そこには俺同様に狐につままれた様な表情をした者達が席の八割ほどを埋め、その向かいにはよれよれの白衣を纏った博士然とした初老の男性が立っていた。
残された席は最前列のみ、俺は迷うことなく席についた。
博士然とした男は顔を動かさず目だけで俺を一瞥すると二回拍手を打った。
「よく来てくれた、同士たちよ。私の呼びかけにこれだけの人間が集まってきてくれたこと嬉しく思う」
俺が最後の参加者のようだった。思わぬお出迎えに出鼻をくじかれたが当初の目的は力を得ることだ。進化という歴史的大事件より前であればあんなチラシを信用することは出来なかっただろう。
しかし表立って上位種に敵対するような文言が書けない事はここにいる参加者すべてが理解している。
そして俺達を焚きつける様なあの文章。シャワーという謎の工程を挟んだ訳。
俺達は生唾を飲み込み次の言葉を待った。
「そして初めに、この部屋での出来事がグリーンマン共に漏れることは決してないと保証しておこう」
男は大袈裟な身振りで部屋の壁を指した。
窓枠はテープで厳重に閉じられ、壁には金属板が貼られ、床も光沢のあるタイルが隙間なく敷かれていた。
俺達はその異様な光景よりも次に起こる惨劇を予想しどよめき、衝動的にパイプ椅子の下に隠れた。
俺達は男のしでかした事実に困惑を隠しきれなかった。中には涙を流し命乞いをする者もいた。
しかし何も起こらない。
男は満足げに腕組みをして口の端を吊り上げた。
「見ての通り、奴らの目に関しては徹底的に対策している。安心して欲しい」
確かに今この男は奴らを蔑称で呼んだ。奴らをグリーンマンと口に出して言おうものなら武装した上位種共がすっ飛んでくる。
俺達はいつも監視されているのだと身を縮こまらせ生きてきた。
だがこの男は、いや先生は奴らの得体の知れない力を無効化してみせた。俺達は椅子の下から這い出て先生の周りに群がった。
先生!すげぇよ、あんた天才だよ!どうやったんですか!何したんですか!グリーンマン!グリーンマン!救世主だ!俺はあんたについていくよ!
俺達は正気を忘れて数十分沸いた。
先生の柏手で俺達は正気を取り戻した。しかし初対面の男達と手を叩き合い、抱き合い、逆立ちやブリッジ、でんぐり返しで喜びを表現していた事を冷静になって思い出した俺達は気まずさを隠しきれずにいた。
微妙な雰囲気に耐えかね俺は先生に質問を投げかけた。
「先生は、奴らの力の正体を知っているのですか」
熱狂した俺達にもみくちゃにされた先生は白衣についた埃を払うような動作をしてから静かに答えた。
「奴らの力、それは強靭な肉体や攻撃的な性格が先行してしまい見落としがちだ。
しかし奴らの真に恐ろしい力は目と耳だ。グリーンマン共は植物を介して遠く離れた場所の情報を見聞きする力を持つ。だから君達にも面倒な手順を踏んで貰うしかなかった。
葉っぱの一枚でも付いていたら今頃僕らは死んでいただろうからね。だが説明もなく不安な思いをさせてすまなかった」
先生は深々と頭を下げた。
俺達はとんでもないと口々に先生に感謝の言葉を述べた。先生は全員を一人ひとり見つめる様に見渡した後に微笑みを返してくれた。
その後は先生の有り難いお言葉が続き、先生がグリーンマンと敵対する事になった経緯を語ってくれた。
元々はグリーンマンの生態と進化について研究する科学者であったこと、ある研究に差し掛かった時、突如グリーンマンの襲撃に遭い研究所は爆破され、仲間たちは先生を含む数名を除いて死亡したこと、そして復讐を誓い密かに研究を続けていたこと、俺達は滂沱の涙を流し傾聴した。
先生は過去を懐かしむように一度天井を見つめてから、立ち居振る舞いを正し、背筋を伸ばしてから俺達に問いかけた。
「君達は奴らと戦う力を望むか。それとも奴らに従属することを望むか」
俺達は跳ねるように立ち上がり声を揃えて答えた。
『俺達に共に戦う力を下さい』
「ああ、嬉しい。こんなに嬉しいことはない」
先生が泣いている。俺達は誇らしくて胸を張った。しかし先生は心配そうにこう問うた。
「私の研究所は遠い、この地を離れることになる。残してきた家族にこの事を伝えることも出来ない。本当にいいのかい」
俺達は言葉を失った。俺達はゴミだ。真っ昼間の当日告知、当日開催の説明会に参加している時点で察しはついていた。皆一様に親の脛に生息しているゴミだった。俺達は顔を見合わせ、照れくさくなって鼻を人差し指で擦りながら笑った。
次は先生が面倒見てくれるもんね。やったあ。
俺達は覚悟を決めたように無言で頷いた。
向かった先は数年前に上位種によって爆破されたという研究所跡地。今にも崩れそうなむき出しの鉄筋が錆びて変色している。地面はコンクリートで隙間なく固められており、バスは車体を揺らすことなく進んでゆく。加えて、白い防護服を着た人間が背中に背負ったタンクから除草剤を散布しているのが見える。
ここに来るまでも何度もマイクロバスを乗り継いだ。その度消毒、着替えを繰り返し奴らの目を掻い潜る。しかし道中を一瞬でも見られたら奴らが飛んでくるんじゃないかと言う恐怖は常にあった。
しかし奴らの特性上、常にこちらを監視しているわけではなく自分たちへの驚異を察知した瞬間にその場に存在する植物にパスが通り、こちらを覗いてくるらしい。
先生は、今はただ遠足に来たくらいの気持ちでいれば大丈夫だよと笑ってくれた。
だがこの場で研究が行われているという事は奴らにとって脅威だ。俺達が植物を持ち込めば一発で襲撃される。
俺達はその事実に気づき、先生が俺達を信頼しているのだと感じ、再び涙した。そうこうするうちにバスが停車した。また消毒だろうかと先生に視線をやる。先生は何も言わない。まさかこの廃墟が先生の研究所なのか。俺達が不安に駆られていると、突然浮遊感に襲われた。
これはなんですか先生。
「地下だよ」
先生は得意げに言った。俺達は先生の科学力に沸き立った。騒がしいマイクロバスは一片の隙間もない金属の塊の中に落ちていった。
研究所に来て数ヶ月の月日が経った。地下での暮らしはとても楽しいもので、午前中は一般的なトレーニングをして改造の基盤となる体を鍛え、午後は先生の講義を受け、その後重火器の扱いを学んだ。
バランスの良い食事と貸し切りのトレーニング施設、不調があれば先生がすぐに診察してくれる。ノルマはあるが、充実している事は確かだった。
特に先生の講義は為になる話ばかりで、とても興味深い。例えばグリーンマンには自然保護意識というものが備わっており、その襲撃パターンや攻撃対象には共通点があること。
グリーンマンが人間襲撃時に使用してくる重火器が自然を破壊しているのは、グリーンマンにとって人間の殺害が最も優先される行動であるから、など知れば知るほどグリーンマンは人間の敵だと学んだ。
もはや人間を殺す様にプログラムされた化物としか思えない。やはり奴らとは永遠に分かり会えないだろう。おっと、仲間たちが呼んでいる。
俺は先生特製の真緑色のプロテインを一気飲みして駆け出した。失われた青春を再び味わっているようだ。
ああ、俺は今、生きている。
しかし戻ってみるとそこには知らない顔ぶれが二十人ほど先生に連れられて施設の説明を受けていた。まさかこれは、二期生というやつだろうか。先生の懐が心配だ。これ以上食い扶持が増えると今の生活が脅かされる可能性がある。難癖をつけて追い返すか。
この数ヶ月で先生の助手のポジションを獲得した俺は強気に出た。
「先生。こいつらはなんです。まさか、拾ってきたのですか。俺達だけでは不十分ということですか」
先生は表情を変えることなく答えた。
「君達はもうすぐ卒業だ。そして、その後を彼らが続くんだよ」
先生の諭すような言葉に二の句が告げない。
しかし、俺達は二期生とか最早どうでもよかった。卒業? ここを出る? 嫌に決まっている。俺達は元々寄生虫だ。先生の懐が空になるまで居座るつもりなのだ。
「また後で話そう。今は彼らの案内が先だ」
俺達は呆然と先生の背中を見つめるだけだった。
数日後の夜。俺達は先生のラボに集められた。卒業の話だ。二期生が初めて来た日から何度も質問したが、回答の場を設けるからと躱され続けてきたのだ。
一人が我慢できず遂に言った。
「俺達まだ奴らと戦うなんて無理です。俺達先生に甘えてたんだ。復讐を忘れて、あまつさえ楽しいだなんて。許してください先生。今度は上手くやります。二期生の奴らなんかより上手くやります。約束する」
先生は首を静かに振って答えた。
「トレーニングは改造に耐えるため、講義は奴らを出し抜くため、火器の扱いは奴らの攻撃手段を封じるため。君達はもう十分に頑張った。後は約束通り僕が君達に力を与える番だ。許してくれと言ったね、こちらこそ遅くなってしまった。許してくれ」
俺達は目頭を押さえ、手で顔を覆い、空を仰ぎ涙した。
ダメだ。これは追い出される。
数日後、俺達は先生のラボの前で列を作っていた。悲しいかな卒業式であった。
卒業式は一人ずつ先生のラボに入り、力を与えてもらい終了だ。なんと試運転もなしでお外に直行するらしい。先生からの信頼が強すぎてまた涙がこみ上げてくる。
俺は助手という立場を最大限活用し最後に回してもらった。邪魔者が一人、また一人とラボに入り、絶叫が聞こえた後に、先生から名前を呼ばれ少しずつ減っていく。並んでいる後続の連中はこれから研究所を追い出される焦りからか汗をベッタリ掻いて震えている。
きっと親の脛に再び齧りつく算段でも立てているのだろう。そうこうしているうちに俺の番が来たようだ。
ラボに入ると先生はにっこり笑って俺を手術台に縛り付けた。
先生、これはどういう。
「君は気づいているんだろう?君達に飲ませてきたプロテイン、あれはグリーンマンの細胞だ」
でしょうね。とてつもない臭いでしたし。大半の奴が飲んだふりして捨ててましたし。俺は縛られながら誠実な雰囲気を全面に押し出しつつ答えた。
「先生。俺ここ来て世界が一変したんです。人との絆とか青春とか感じたことのなかった俺が、ここで変わることが出来たんです。だから俺、ここに来た二期生の奴らにもこの気持ちを教えてやりたい。俺、ここで先生の助手として生きていたいんです」
先生は俺の言葉に逐一頷いてくれた。先生は優しい笑顔で俺の目を見つめてきた。こちらも見つめ返す。いける。俺はここで永遠に先生の懐にしがみついて生きるんだ。
「だめ」
「なんで」
俺は敬語も忘れて先生の言葉に被せるように質問した。先生はさも当然といったようにキョトンとして答えた。
「さっき君も言ってたけどあのプロテイン飲んでたの君だけだったし。他の皆は制御が全然出来てなくて死んでしまった。これでは研究の成果が測れない」
分かるよね。先生はずいっと顔を寄せてきた。わかる。最初からその予定ではあった。だが俺はまだ準備を終えていなかった。俺の思案顔を見て先生は訝しんだ後、ああ、と思いついた様に極太の注射器片手に解説してくれた。
「奴らは人類の進化した姿ではない。グリーンマンの力の源は脳に侵入した小さな小さな寄生虫だ。
僕はこいつをグリーンと名付けた。グリーンは地中から一度だけ発生した寄生虫だ。奴らが感染することが出来るのは生まれてから二十四時間だけ。そこからは感染者との粘膜接触、細胞間の移植のみでしか感染しない。
僕はこれを知って奴らに襲われた。グリーンは種の意識を共有しているから僕らをどこからでも監視できる。そこら中の植物にも寄生しているから、外に出れば監視から逃れるのは困難を極める。でも僕はそのパスを切ることに成功した。そう鋼だ、分厚い鋼で囲い込めば奴らのパスは切れる。
そして、時間を掛けて新しく脳内で大量のグリーンを増殖させることで超人的な力と種の共通意識から外れた自分だけのグリーンが作れるんだ」
先生は興奮気味に捲し立てる。奴らが地球から発生したというのなら、星の代弁者を自称するのは間違いではないのかもしれない。俺は長年の謎が溶けたようなスッキリした気分になった。そんな俺を見て先生も嬉しそうにしている。
「君ならわかってくれると思ったよ。これから最後の仕上げをする。増えすぎたグリーンは親の命令を無視できる。つまり君はグリーンの力を自分の意志で扱えるんだ。ワクワクしてきただろう」
俺は想像した。逃げ惑う人々、数少ない人間の少女に襲いかかるグリーンマン。そして超人的な力でグリーンマンをバッタバッタとなぎす俺。
悪くない。だがそううまくいくとは思えない。グリーンマンの数は世界の人口の八割だ。単純計算で約五十六億のグリーンマンが敵に回る。人間は雑魚だ。数で負ければまず勝ち目はない。
つまり人間側に付けば十中八九汚い花火を咲かせることになるということだ。
「全身緑色は嫌だー! 」
俺は手術台の上で跳ねた。時間を稼ぐんだ。
俺の中にもグリーンがある。そしてこの分厚い鋼が開かれている今なら、できるはずなのだ。
「だめだよ、暴れちゃ。嘘ついたのは悪かったよ。実験を知ったら逃げ出してしまうかもと思ったんだ。でも君は知っていて逃げなかったんだろう」
先生が俺の腕の静脈をさすり始めた。まずい。
「グリーンもイエローも皆友達でいいじゃないか。僕はイエローでいたいんです。変色しない様になってからなら喜んで実験に付き合いますから」
色なんて本当はどうでも良かった。人種差別は良くない。それより世界中のグリーンマンが的に回るのは死活問題だ。俺は脳内で蠢くグリーンを通じて全力で助けを求めた。
今ならまだ間に合う筈だ。
爆発音が響き渡る。
来た!
先生が俺の静脈にグリーンを流し込もうとする寸前。施設が震えた。
俺の声が届いたらしい。
ここだ! 俺はここだぞ。助けてくれ。
俺はまだ見ぬ兄弟たちに助けを求めた。大きな爆発音が響き、こちらに近づいてくる気配が分かる。
ラボのドアを突き破って現れた全身緑色の兄弟たちに拘束を解くようにお願いする。だが俺が緑でないのが不思議らしく首を傾げている。
俺はグリーンを通じて共通意識に潜り込んだ。
へるぷみー
兄弟達は恐る恐る近づいてきてゆっくりと拘束を解いてくれた。やったぜ。
先生は四つん這いになって逃げようとしていたが、ものの数秒で花火になっていた。
グリーンマンは爆発物が大好きだ。誰彼構わず人間を攻撃するし、建物は取り敢えず爆破する。こんな奴らに勝てるわけない。
だが味方なら心強い。
俺は信頼を得るため、重火器を手に取り暴れまわった。二期生の皆も俺の点数の為に花火になってくれた。
「ありがとう。上位種のみなさん。本当に助けてくれてありがとう」
本心だ。彼らも俺が共通意識下にいることを感じ取っているからか友好的だ。
「俺、なり損ないだけど。皆仲良くしてくれるかな」
俺は転校初日の様な雰囲気で自然に手を差し出した。
彼らは一同顔を見合わせて、一人がおずおずとこちらの手を握り返してきた。俺はその手を強く強く握り。最後には感極まったように抱き合った。
ああ、ありがとう。これからはここが俺の家だ。俺達は分かり会える。俺は君達に出会うために生まれてきたんだ。
だから、君達が絶滅する瞬間までずっと一緒だ。
俺は誰よりも寄生虫らしく歯列を剥き出しにして笑った。
処女作です。
感想がほしくてしょうがない