後編
(くっそー、いうことを聞かないどころか、この動きでは初心者にも負けちまうぞ)
裕は考えていた。こいつにどうすれば話を聞かせられるのかを。そして試してもみた。
(俺の言うとおりに動いてくれたら~)
てっきり悪魔との取引になど応じるものか!とかいって来るかと思ったが、緊張のせいで聞こえていないらしい。何を言っても馬耳東風であった。
(俺なら・・・こいつの体が俺だったら・・・!)
裕は幼少期、剣道を習っていた。近頃は剣道から離れていたのだが、昔取った杵柄、いまだにある程度は動ける。吸収の早かった裕は、あっという間に動きを覚え、小さいころは大会に出れば優勝するので、殿堂入りみたいに大会出禁を食らいかけたこともあるほどの優勝杯キラーであった。それも10年以上前の話であるが・・・
相手選手の剣が迫る。
(くっそ!これ死ぬやつだ!)
使用する剣は木造の摸造刀だったが、完全に殺る気で振り下ろされた剣に、イワンは反応できず・・・
ドゴッ!
裕がその一撃を受けとめていた。
「(は?)」
裕もイワンも、しばらく思考を停止した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「これは・・・動ける・・・」
(おい悪魔!お前いったい何をした!返答しだいでは!)
「俺もわかんねぇよ」
渾身の一撃を受け止められしばらく呆然としていた相手が、憤然と立ち向かってくる。
「試合途中にぶつぶつと・・・なめくさりやがって!ぶっ〇してやる!」
怒りのこもった一撃だったが、そのためか軌道は単純だった。
裕、もといイワンの体は剣筋を見極め、最低限の動きで回避した後に相手の背中を押し込み、バランスを崩させながら剣を弾き飛ばす。そして・・・。
「チェックだ」
そのまま馬乗りになり、剣を首元にそえた。
「どーゆーこった?」
(こっちの台詞だ!戻せ!さもなくばお前を祓ってやる!)
「俺もわかんねぇのに戻せるわきゃねぇだろ、いい加減にしろ」
(ほう、あくまで白を切るか)
「そもそもお前、どうやって祓おうってんだ」
(・・・・・)
「しっかし、なんだ。お前の体、使えない筋肉をつけてんのな。構えからしてお坊ちゃま剣だろ。一通り教わりはしたが、うまく身に付かなかったってとこか」
(なぜそれを!)
「勘?」
2回戦、3回戦になると裕はあの小さい部屋に押し込まれてしまい、どうにもできなくなった。
ただ・・・
(上だ!避けろ!)
「うるさいっ!わかってるよ!」
なんだかんだいいつつイワンは、裕のアドバイスを少し聞くようになり・・・。
優勝は逃したものの、34人の参加者の中で8位という輝かしい成績を残した。
型そのものはしっかり見につけていたイワンは、実践での使い方を裕の指導(ほぼ押し付け)で感じ取り、少しは動けるようになったのであった。
そして・・・
「行ってきます、お父様、お母様」
「気をつけるんだぞ」
「がんばってきなさい」
イワンは小隊を任されるようになった。
(まだまだ未熟だけどな)
「うるさい!僕はまだお前を祓うのを諦めてないぞ!」
(おー怖い怖い。まあがんばってくれたまえ。俺もそろそろ帰りたいところだ)
彼らの行く末は、誰にもわからない。
2話でまとまるか不安だったのですが、何とかなりました。
続きが見たいという声があれば、検討します。




