七話 帰還
拙い内容ですが楽しんで貰えたら幸いです。
漆黒の夜が徐々に濃紺へ変わり始める。
夜明けが近い・・・
俺は、雲の上を猛スピードで飛行しながらスキルを使う。
『世界記録全集』
自分の現在地と島の位置を確認する。
救助依頼と様々な物資の買い込みを終え島への帰路を急ぐ。
俺が手にしているのは何処にでも有るタブレット端末・・・、本来俺のチートスキル “世界記録全集“ このスキルは魔導書型のスキルで、使用すると周りを大量の本に埋め尽くされる事に成る。
しかし、俺が使える別のスキル『接続』と併用することでタブレット端末で世界記録全集を閲覧、使用する事が出来る様になった。
「眠い・・・」
昨日からずっと言ってる気がする。
島を出て五時間程飛びっぱなしだったし、買い物をして再び空の上・・・、往復トータル十時間位飛んでる。
後少し、後少しと自分に言い聞かせて飛んでいると前方に島が見えてきた。
すっかり夜が明けた空から見ると縦10㎞、横5
㎞の歪な楕円形なのが解る。
俺達が居た砂浜は、入り江になっており広さはサッカーグランド2つ分位有る。
スピードと高度を下げ砂浜に着地、無事に任務を完了した。
「お帰りー」
声を掛けて来たのはみこりん、どうやら火の番をしていたようだった。
「只今ー、いやーマジできつかった。もう今すぐに寝たい位」
本当に大変だった、こんなに飛んだのは前回の勇者召喚の時以来だ。
みこりん以外の全員も起きていて何人か訝しげに此方を見ている。
「あんたは誰だ、星夜が呼んだ救助の人か?」
そう言ってきたのは、黒田 晶俺のオタ友で良く一緒に漫画やアニメの話しをしている。
「いやいや、あっきー俺、俺」
詐欺ではない。
「星夜はそんなに背が高く無いし、中二みたいな格好もしない」
えぇぇっ、なに本人目の前にして中二なんて言ってんの? ヒドイ。
「星夜、リミッター切ったままだぞ」
みこりんが教えてくれた。
「あぁ、なるほど」
確かに今の俺と普段の俺の姿は違い過ぎる。
普段の俺は身長155㎝程しかない。
しかし、今は170㎝位有るし髪の毛の色や瞳の色も違う、普段は髪も瞳も黒だけど今は髪は白瞳は金・・・、確かに中二な見た目だ、しかも空の上が寒かったので裾の有るオーバーコートを着ている・・・、ヤバい魔法使いに憧れる中二な格好だった。
「いやっ、これは空の上が寒かったから着てるだけで・・・普段はもっと魔導師的なローブ着てるから」
「お前、バカだろ?逆効果だぞ」
みこりんが突っ込んでくる。
その間この島に居る全員が集まって来た。
正直説明がめんどくさい。
「ひじりんお帰りー、相変わらず素っぴんはイケメンだねー」
桜は今の俺の姿を素っぴんと呼ぶ。
まぁ、素っぴんと言えば素っぴんなんだが・・
「素っぴんってどう言うこと?」
あっきーの質問に対して
「私達勇者ってさ強すぎるから普段はリミッターを付けて力を制限してるんだー。みこりんも私もリミッターの副作用で今の姿に成ってるの、ひじりんの場合今の姿が本来のひじりんってこと」
「リミッター?」
「副作用?」
何人かは頭に疑問符を浮かべている。
「強いってどれくらい?」
みこりんや桜が何処まで説明したのか知らないが簡単にしか俺達の事を教えてないようだった。
「えっと、この世界にはゲームで良く有る “Lv“ が有っておおよその強さを表してるんだけど、
俺がLv3432 みこりんがLv2084 桜がLv1873位だっけ?」
「Lvの桁おかしくない?」
「いやいや、こんな物だって。ちなみに五歳の子供が大体Lv1の基準に成ってる」
簡単にLvの説明をする、後でみこりんに何処まで説明したのか、何故リリ姉がさっきから正座してるのか聞かないといけない。しかし、その前に軽く寝たい。
「俺、昨日から飛びっぱなしで疲れてるから少し仮眠を取りたいけどいいかな? その後にちゃんと説明するから」
ダメと言われても取るつもりだけど・・・
「分かった、でもバスは女子が使ってるから砂浜で寝るしかないぞ」
あっきーの言葉に
「大丈夫、大丈夫家買って来たから」
「「「「はぁっ????」」」」
周りに居たクラスメイト達が『何言ってんのこいつ』みたいな反応をする。
「はーい、どいてどいて広い場所が要るから俺の後ろにきてー」
全員が俺の後ろに居ることを確認して
「『整地』」
魔術を発動させる。
『整地』は土属性と闇属性の魔法を使った魔術で周囲を平にする事が出来る。
「『ストレージオープン』」
そしてストレージの中から家のミニチュアを2つ取り出し整地した地面に距離を開けて並べる。
その際、しっかり日当たりを考えて配置する。
「家を買ったってこれ?オモチャじゃん」
そう言ってきたのは白石さん、
「はいはい、文句が有るなら後で聞くから」
俺は構わず2つの家のミニチュアに向かい
「『解放』」
魔法を唱える。
するとどうでしょう、家のミニチュアが瞬く間に一軒家のサイズに・・・某リフォーム番組のナレーション風に。
「「「「はぁあああああっっっ」」」」
クラスメイト達が大きくなる家を見て驚いている。
「壁が薄いピンクが女子で、野郎は白壁の家な、2つ共部屋数が少し足りないから何人かは相部屋で悪いけどその辺りは話し合って決めて欲しい。俺は今から仮眠を取るから・・・食事はみこりんに預けて置くから適当に食ってくれ、じゃお休みー」
俺がその場を去ろうとすると
「まてまて、さっきまで只のミニチュアだっただろ、何ででかくなんだよ」
又、松本が絡んで来た
「あぁ、逆だよ。普通サイズの家を魔法で小さくしてんの、その方か店で売りやすいから」
話しながらみこりんに食事と必要な物を渡していく。
エクセレートでは上水、下水の設備は基本的に無くその代わり “水の魔石“ を使ったシステムで上水設備の代わりにしている、下水は特殊なスライムを使って下水の処理を行う、なので家を小さくすれば何処にでも持ち運びが出来る。
「俺、一階の角部屋に寝てるから」
そう言ってその場を後にした。
これからも頑張ります。